猫と暮らす築100年越えの古民家。②
家移りをして、初めて過ごす夜、しん、とした室内には猫の気配が感じられない。3年間無人だった家に、突然知らない人が来た初日、一匹で静かに暮らしていた猫としては、驚いて身を隠してしまうよなぁと思いつつ、なるだけ音を立てないよう荷物を整理する。
開封したダンボールから、最初に取り出したのはチュール。丸いお盆に、丸い小皿を並べて、カリカリ、パウチ、猫缶、無塩煮干し、チュールをそれぞれに配分してゆく。
その猫は、たまこという名女の子だそう、女子ならば小分けにしたご飯が気に入ってくれるのではないだろうか。そんな淡い期待を抱きながら。
荷解きに少し疲れて、常温のレモンサワーに手が伸びた。カラカラと乾いた音を立てる引き戸を開け、外に出ると、月明かりに浮かぶ木々たちのシルエット。そうして、冬の第一夜は過ぎました。
まだ、猫のたまこには会えていない。
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