「モテたい」って無責任ですよね
モテない奴こそ、モテたがる。
この仮説に、いまのところ間違いはない。どの口がそんなことを言うんだとお思いかも知れないが、これはずっと密かに心の中で思っていたことなので書いてみる。普段あまり恋愛系の記事は書かない(書けない)のだけれど、今日はちょっとだけつらつらさせてください。
ちなみに大前提として、わたしは「モテてる」ことがヒエラルキーの上になるとはこれっぽっちも思っていない。モテ=勝者、という考えは一切ないです。
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異性にモテたいと言ってる奴こそ、残念ながらモテない。わたしにそう見えているだけかも知れないけれど、わざわざ口に出してモテたがる人間にはこれっぽっちも魅力は感じられない。
「彼氏(彼女)欲しい」ならまだわかる。恋人という特定の相手が欲しいという気持ちにも同意する。毎日休まず仕事を続けていて、だれかにふとあいたくなったり、話したくなったりする瞬間はどうしてもある。その相手が好きな人であればいいな、なんて思うのはちょっとわかる。
だけど、「モテたい」ってなんだ?
自分を好いてくれている相手の気持ちに本気で向き合う気はさほどないけれど、とりあえず異性にただ好かれたいですって、なんだかそんなニュアンスに聞こえる。そりゃあ、誰かに好かれたら嫌な気持ちにはならないし、むしろ嬉しい。自分を好いてくれて必要としてくれる人がいる、それは確かに幸せなこと。
だけど、ただ「モテたい」っていうのは、ちょっと無責任だと思ってしまうんです、わたしは。アイドルとかアーティストがいう「モテたい」は別の話だと思っているけれど、大体の人が言う「モテたい」は、あまりいいイメージがない。だってモテたいって、自分への好意の矢印が多い状況を望むこと。「好きです」という異性の好意を感じて、自己承認欲求を埋めようとすること。全く違う人生を歩んできた赤の他人に好かれるなんて、ある意味奇跡に近いのに。好かれる事がゴールになっている。
不特定多数の異性にモテることで自分に価値を感じるなら、それはきっと永遠に埋まらない欲だ。たとえ今満足していても、いつか必ず「もっと」って思うはず。好かれていることが当たり前だと思ってしまうから。好かれることに慣れてしまうから。
例えミスコン一位といわれるくらいの美女と付き合えても、誰しもが羨むような素敵な人間と付き合えても、いつか必ず飽きがくる。一位と一生一緒にいるよりも、二位を数人周りに置いておいたほうが満足度はきっと高い。誰にどれだけ愛されるのかは、彼らには問題ではない。
モテたいのは、誰かに必要とされたいから。愛されたいから。その数は大きい方が安心するから。自分イケてるって思いたいから。1人に100パーセント愛されるよりも、10人に10%のほうが気持ちがいいから。最悪、事が悪化して持分の1人を切ったとしても、9人はまだ水槽の中。1人いなくなったところで痛さはなかろう。魚が一匹減ったところで、餌代がうくだけだ。
そうやってまた今日も、自分に恋い焦がれる異性に餌を撒きつづける。釣った魚に餌をやらない。水の手入れもしない。溺れても放置。
好かれました、モテました、自分いけてます。こんなイケメンに、こんな美女に告白されました。
…で?それから?そこからどうしたいんですか?好かれて終わりですか?あなたを好きになってくれた人に対しては?何をしてあげられるの?何を与えられるの?
与えてもらうだけなんて、そんな話ありですか。「相手が勝手に自分を好きになった」なんて言い訳、見苦しいことこの上ない。まんざらでもなさそうな顔でモテのマウンティングをしてくる男女の、あのつまらない話。
モテってそういうことなのでしょうか。女を食いらかしている男のことを、男を手のひらで転がす女のことを、口が曲がっても「モテてる」とは言えない。
「モテ」とは、人間力だと私は思う。人として好かれることが、モテだと思うのだ。
『モテ』の王女ゆうこすさんがまさにそう。もちろん彼女はとても綺麗な見た目をしているけれど、それ以上に人としての魅力がすごい。「好きな人の好きなものを好きになる(異性問わず)」「自分をセルフプロデュースする」、自分を客観視できているから、モテに満足することはない。誰かにモテることで自分の価値をはかろうとしない。自分を高めた結果に「モテ」があっただけ、ただそれだけなのだ。
どんなにかっこよくても、どんなに美人でも、人としてのレベルが低いやつは一生モテない。たとえ黄色い声援が飛ぶほどのイケメンだとしても、スッカスカの中身だったら本当にしょうもない。外面で評価されて満足するならば、そのままでいい。その代わり、戦える場所は年々劣っていく。人は最後はみんなシワくちゃ。イケメンも美女も、老いてしまえばなんのその。実の枯れた味のない果実には、誰も何の用もありません。
そもそも、振られるより振る方がしんどいはずだ。まったく知らない人生を歩んできた相手に好かれるって、結構すごいこと。相手のその先の人生に、失恋という傷を負わせる側になるということを自覚していない人が多すぎる。世の中にこれほどの恋愛ソングが溢れているのに、泣いている人たちが山ほどいるのに、気付いてない人がたくさんいる。
クソ男にハエ女。類は友を呼ぶように、いい人の周りには自然といい人が集まるもの。
誰か1人、本当に大切な人に愛されてこそ「モテてる」って言えるんじゃないでしょうか。いい顔振りまいていても、いい人間には全く見えません。
本当にモテる人は、モテたいなんて言わない。
むしろ自分から人を愛しに行くんです。
なんちゃって。
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