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第78回 007/ダイヤモンドは永遠に(1971 英)

 ショーン・コネリー追善企画もついに最終回を迎えました。今回は1作飛ばしてシリーズ7作目の『007/ダイヤモンドは永遠に』でお送りします。

 タイトルに偽りなしで、密輸ダイヤを巡ってボンドとブロフェルドが激突すると書けば分かりやすいですが、その内実は非常に入り組んでいます。いや、取っ散らかっています。

 つまり、かなり粗い作りになっているのです。アクション方面でもパワーダウンした感があり、シリーズの中でも評価の高いとは言えない一本とされます。

 そこで申し上げたいのが、そういう映画ほどBL的に見ると新しい発見があるという事です。この観点だとシリーズトップクラスの一本に化けます。

 本作のスペクターはホモカップルの殺し屋が暗躍し、ブロフェルドが女装し、もはや隠す気ゼロの大安売りです。

 ボンドの方もそんなブロフェルドを今度こそ始末しようとやる気満々であり、濃厚なバイオレンスポルノが味わえます。

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真面目に解説

仇を狙え!
 さて、前回紹介した『007は二度死ぬ』を最後にショーン・コネリーはシリーズを降板し、ジョージ・レーゼンビーが二代目ボンドに抜擢されました。

 そうして作られた『女王陛下の007』は興行的に失敗し、他の映画の製作費を出すという条件でコネリーに復帰してもらって作ったのが本作です。

 ところが『女王陛下の007』は今となっては本作よりも高く評価されているくらいで、本作にも設定が踏襲されています。その最たるものが、ボンドがブロフェルドに殺意むき出しである点です。

 レーゼンビーボンドは本気で結婚しようとしたのに、その嫁さんをブロフェルドに殺されるというアメリカンニューシネマ風の後味の悪い幕引きでシリーズを去りました。

 なのでボンドはコネリーに戻ったにも関わらず私怨丸出しでブロフェルドを追い回し、のっけから石原軍団並みの荒っぽい捜索をして見事に仕留めるのです。


ブロフェルド姐さん

 しかし、いきなりブロフェルドが死んでは映画が成立しません。『二度死ぬ』ではボンドの協力者役だったチャールズ・グレイに役者の変わったブロフェルドは、整形手術で影武者を大量生産してボンドに挑みます。

 また、使い捨ての手下に任せる体制に不安を覚えたらしく、本作では誰にも頼らずに自分が指揮官として陰謀を張り巡らせるのも注目したい点です。

 そして、大した意味もなく女装するのがある意味では本作最大の見せ場なのですが、この辺りはBL的解説の方に譲ります。


ダイヤモンドは金より高価
 本作の監督は『ゴールドフィンガー』以来シリーズ2本目となるガイ・ハミルトンです。それだけにこの両作は少しリンクしています。

 第一に、主題歌にシャーリー・バッシーが再起用された点です。ハミルトンが個人的にファンだから選んだと後に語っていますが、バッシーは『ムーンレイカー』にも起用されて最多記録を樹立します。

 だとしても相変わらず男前なボーカルは見事であり、裸宝石のお姉ちゃんとダイヤの首輪をつけたブロフェルドのシャムネコがフィーチャーされたOPはお色気より芸術を感じます。

 ボスも当初はブロフェルドではなくゴールドフィンガーの弟という設定で、もう一度ゲルト・フレーベに頼む予定だったそうです。

 ところが、夢でお告げがあったというプロデューサーの指示でブロフェルドに急遽変更になり、このせいで権利面で揉めた為にブロフェルドは『007 スペクター』まで長く居なかった扱いされることになってしまうのです。


ダイヤモンドという炭素

 さて、前半のキーは密輸ダイヤの奪い合いになります。ダイヤモンドの流通というのは実に難しいものです。

 何も考えずに掘っただけ売りに出すとたちまち値崩れを起こすので流通の管理が必要なわけですが、ダイヤモンドというのは小さいので鉱山職員による盗難が起こる事がままあります。

 そういうダイヤが闇市場に流れて問題が起きるわけですが、どうも大量のダイヤが消えたっきりで市場に出てこないというのでボンドが調べる事になります。


敵か味方かボンドガール

 ボンドは密輸業者とすり替わって密輸ルートに割り込みます。そこで密輸に噛んでいたのが今回のメインヒロインのティファニー(ジル・セント・ジョン)です。

 密輸に加担するくらいなので過去のボンドガールに類を見ないアバズレで、会ってすぐにヤっちゃいますがそれでもボンドの言いなりにならず、あまつさえダイヤを持ち逃げしようとします。

 慰安婦、同志、嫁ときてトリックスターのボンドガールという新境地を開拓したわけですが、何しろ脚本が適当なのでこのキャラクターがフルに生きたかというと疑問が残ります。

 むしろ本作の女方面で注目すべきは露出度の高さです。ティファニーに限らず出てくる女という女がおっぱいを惜しげもなく披露して時代の進歩を物語っていきます。


カジノ・ロワイヤル?
 舞台は中盤からラスベガスになります。というわけで、カジノの描写にかなりの尺が割かれます。

 もとよりジェームズ・ボンドは博打にかけては負け知らずなのですが、出張してきたQ(デスモンド・リュウェリン)が持ち前の技術を悪用してスロットのゴト(不正)で荒稼ぎするシーンがあるのが笑いどころです。

 カジノ解禁を巡っての議論でカジノは博打に限らず各種のアトラクションを提供するものだという事がある程度周知されましたが、本作のカジノはこの辺りに力を入れています。

 カジノの上空は空中ブランコが舞い、地上には子供向けの縁日風のアトラクションも併設され、象がフロアを歩き回っています。

 極めつけは黒人のエロいお姉ちゃんがゴリラに変身するという居間ならコンプライアンスに引っ掛かる見世物です。というより、当時としても時代遅れだったと思うのですが、007シリーズはこういう方向には案外遠慮しないのです。


またも老けたな
 さて、アメリカが舞台なので久々にフェリックスが出てきます。今回はノーマン・バートンに代わり、普通のおっさん風にイメチェンしています。

 アメリカはホームなので沢山の手下を抱えてボンドをサポートしますが、どうにも頼りない側面が強調されています。むしろボンドの足を引っ張ってしまうのです。

 だからではないでしょうが、何人もの賑やかしを抱え、敵の弾が避けて通る今回のボンドはアメリカンヒーローみたいです。

 カーチェイスが何回かありますが、いずれも逃げているうちに敵の方が自滅してしまうというのが実にアメリカンです。と言っても、カーアクションその物が手抜きなわけではないのを忘れないでください。


大富豪は飛行機大好き
 密輸ルートを捜査しているうちに、どうやら航空産業を牛耳るの大富豪が噛んでいるらしいという事実が明らかになります。

 ところがこのホワイト(ジミー・ディーン)は変わり者で、別荘に引きこもって誰とも会いたがりません。それに乗じてブロフェルドがホワイトの会社を乗っ取って悪さをしようとします。

 この人のモデルはハワード・ヒューズという航空の分野ではよく知られた人物で、映画会社を買って『地獄の天使』や『暗黒街の顔役』といった名作を世に送り出した事でも知られています。

 晩年は精神を病んで引きこもって誰にも会おうとしなかったので、当時からこの種のフィクションのモデルとして人気がありました。

 ホワイトは別荘にバンビとザンパーという明らかにレズカップルのボディガードを抱えていて、彼女達が踊りながらボンドに金的を食らわせて本作の健全に過ぎるお色気要素を一気にアブノーマルに彩っていきます。

 このホワイトが意外に良いキャラで、持ち前の航空の知識と気前の良さでボンドと協力して事態の収束に当たります。最初からいたのかというレベルの馴れ馴れしさで、この映画のいい加減さをある意味象徴するキャラクターです。


ダイヤモンドは永遠の輝き
 ダイヤモンドというと女性の憧れではありますが、工業の分野でも非常に重要な物質です。消えたダイヤは案の定ブロフェルドが押さえるわけです。

 MI6としては一気に市場に放出してダイヤの値崩れを狙うのではないかと踏んでいましたが、何しろブロフェルドは科学に明るい男なので、工業用にダイヤを転用します。

 盗んだダイヤをレーザーに転用して人工衛星から各国の核兵器を破壊するわけですが、爆発の合成が恐ろしく雑で笑わせてくれます。明らかにこの点では退化しているのです。

 人工衛星を制御するコンピューターの記憶メディアが音楽用のカセットテープなのがポイントになります。今やフロッピーディスクさえ過去の遺物ですが、80年代前半まではテープがむしろ主流でした。

 衛星をストップさせるためのテープを巡る攻防が終盤の肝なのですが、結局テープではなく力業でカタが付くのがこの映画の残念な所です。

BL的に解説

ボンド×ブロフェルド
 本作におけるこの二人はまさに宿敵です。ボンドは新妻を殺されて敵討ちの為に世界中で暴力の限りを尽くし、綺麗なお姉ちゃんをビキニで首絞めて拷問する有様です。

 かつてのボンドなら下の口に聞くはずなのにこんな変態プレイに走るあたり、ボンドも女を心から愛する事があるというわけです。

 そして影武者製造工場に殴り込んでブロフェルドを別府温泉みたいな泥沼に放り込んで始末しますが、これで死んじゃうブロフェルドではありません。

 ボンドはラスベガスのホテルのペントハウスで影武者を釣れたブロフェルドと対面しますが、やたらに楽しそうなブロフェルドと違ってボンドは殺る気満々です。

 さて、ブロフェルドはホテルの最上階からわざわざ女装してチェックアウトし、ついでにティファニーを誘拐していきます。女装する意味は全くありません。

 ブロフェルドもまたボンドの事ばかり考えすぎて頭がおかしくなったのでしょう。女狂いのボンドだったらこっちも女になればいいという単純な発想かも知れません。ホモのジェラシーでボンドガールを何人も始末してきたブロフェルドなら考えそうな事です。

 油田に偽装した秘密基地に逃げ込んだブロフェルドですが、ボンドがパラシュートで降下してくると、国家元首が来ると思ったのにと言いつつ明らかに喜びが隠せません。

 そしてブロフェルドはやはりボンドに魅せられた男なので、作戦の全容をべらべら喋ってボンドの目の前でワシントンを破壊するレーザー攻撃をかまそうとします。

 しかもティファニーが寝返ったふりをして我がもの顔で基地を歩いています。さっさと殺せばよかったのにというのは素人考えで、ホモの癖にNTRを狙って、ホモだけに墓穴を掘ったという事です。

 ボンドの後から軍が殴り込んで来たのでブロフェルドは潜水艇を仕立てて自分だけ逃げようとしますが、潜水艇を釣り下げているクレーンをボンドが乗っ取り、銃撃戦の中あっちこっちぶつけて攻撃します。

 これも非合理的です。目一杯高く釣り上げて落とせば一発ですから。潜水艇でコンピュータールームを破壊してケリは付きましたが、ブロフェルドは生死不明です。

 このボンドの合理性を欠いたやり方は、ボンドもまたブロフェルドに魅せられた男であったことを暗示しています。劇的に殺したいという欲望が先に来たのです。

 嫌いな奴の事ばかり考えているうちにそいつの事しか考えられなくなるというのは喧嘩ップルの王道ですが、この勝負は実に半世紀近い月日をかけて完成する大作バイオレンスゲイポルノなのです。


ボンド×M
 M(バーナード・リー)はブロフェルドの始末に表向き成功したボンドにダイヤの密輸の調査を命じた張本人です。

 今後は堅実な任務にという考えにボンドへのが覗きます。つまり、Mはボンドの命を惜しんでいるのです。

 そして英国の宝石流通をつかさどる立場にあるドナルド卿(ローレンス・ネイスミス)にボンドを紹介するのですが、ここで卿にシェリーを勧められた時の反応が意味深です。

 禁酒中だとこの誘いを拒絶し、毎度のことながら年代当てゲームを楽しむボンドに突っかかるM。自分でこの仕事に紹介しておきながら妙に不機嫌です。

 ここで酒がシェリーである事に注目です。シェリーは精力増強の効果があるとされ、男に勧めるのは「やらないか?」と言うのと同じです。

 つまり、Mはドナルド卿に妬いているのです。イギリス上流階級は狭いので、誰がホモか(むしろ誰がノンケか)は筒抜けでしょう。

 ホモのドナルド卿がボンドとお近付きになる為にこの仕事を頼み、あまつさえシェリーを勧めたとなればMが怒るのは当然です。


ボンド×Q
 今回はボンドカーなしですが、Qはかなり良い仕事をしました。ボンドの指紋を変えてしまうのです。普段は説明を聞かないボンドもこれには思わずず電話でお礼をしてしまう有様で、ほとんどリバです。

 ボイスチェンジャーでホワイトに化けているブロフェルドに対抗するために、Qもボイスチェンジャーを作るというのはかなり尊いシーンと言えましょう。

 Qはクリスマスに子供のプレゼントの為に作ったと謙遜しますが、ボンドに褒められて明らかにメスの表情をしています。

 Qに戦闘能力はないのでホワイト救出には不参加でカジノでズルして遊んでいましたが、そこへ現れたのがティファニーです。

 何しろティファニーは刑務所行きの危機に瀕しているのでQに口利きを頼んで保身を図りますが、Qにそんな権限はないので冷たい態度です。

 それに、Qとしてはボンドを盗るティファニーなど刑務所にぶち込まれた方が好都合なのです。まったく男心の分からぬオメコ芸者が居たものです。


ボンド×フェリックス
 さて、ややもすると役立たずな今回のフェリックスですが、ボンドガールなど大半が役立たずです。アメリカ妻がドジっ子でもなんら問題はないのです。

 再会早々顔が変わっても変わらぬ愛をお客さんに見せつける二人ですが、暴れ馬のティファニーに振り回されるボンドに更に振り回される為、フェリックスはご機嫌斜めです。

 このフェリックスのメンタルの乱れはボンドの女性遍歴から合理的に説明することが出来ます。ボンドはすぐに思い通りにならない女を屈服させるのが好きなのです。

 何しろフェリックスはプッシー・ガロアという典型例を間近に見ているため、ティファニーを恐れています。

 あまつさえティファニーはCIAの監視をかいくぐって密輸を成功させてしまうのです。フェリックスとしてはこれは許せない事です。

 ボンドは一応取りなすようフェリックスに頼んだのですが、フェリックスときたら二人がいちゃいちゃしているホテルに怒鳴り込み、「ティファニー夫人には死ぬまで宿泊料がタダのホテルを」と脅しをかけ、二人がヤれないように三人も部屋に見張りを残す有様です。

 諜報員として、アメリカ妻としてのプライドを後ろから前から掘られてフェリックスは暴走しているのです。しかし、ボンドはそんなちょっと頼りないフェリックスがたまらなく可愛いのです。

 ホワイトの屋敷に部下を引き連れてボンドと一緒に殴り込んでいく時の気合の入り様を見るに、きっとタイガー田中がボンドと大立ち回りをしたという情報もCIAに入ってきているのでしょう。一緒に銃撃戦すればもうこっちのものというわけです。

 その試みが成功したのは互いに代替わりしてもボンドとフェリックスという取り合わせがなくならないのが物語っています。ドジっ子なりに頑張るフェリックスがボンドは好きなのです。


ホワイトホモのスパイフェチ説
 ホワイトのモデルのハワード・ヒューズはエピソードの豊富な人物ですが、特に外す事の出来ないエピソードがあります。巨乳好きです。

 数多の巨乳の新人女優を食いまくったという伝説の持ち主ですが、ここで更に注目したいのは、隠れゲイが巨乳好きを自称することが多いという事実です。

 なにしろ巨乳好きというのは最も分かりやすい女好きアピールです。もし女性に迫られても巨乳じゃないからと断る事も出来ます。その女性がどんなに巨乳でももっと大きいのが好きと言えばいいので無敵です。

 巨乳好きで名高く、精神を病んで引きこもっていた男が実はゲイ。大いにありそうな話です。

 ホワイトは突然銃を手に殴り込んで来たボンドとフェリックスを妙に歓迎し、ブロフェルドが自分の会社を乗っ取って何をしようとしているのかスパイに混じって解き明かそうとします。

 それどころか、ブロフェルドの基地へ殴り込む米軍にフェリックスを乗せたヘリコプターを自ら操縦してついて行くのです。

 この行動はホワイトがホモで下心を持っていたからだとすれば合理的に説明が付きます。殴り込んできた二人に「FBIか?CIAか?」と訊ねるのも願望の顕れです。

 フェリックスをヘリで運んで行ったのも、合衆国市民として云々と理屈を垂れたのでしょうが、MI6の腕利きを助けたいCIAの腕利きに協力するというシチュエーションに酔っていたわけです。

 あまつさえホワイトはボンドとティファニーにクルーズ旅行をプレゼントします。しかも、ゆっくり行きたいときは船長に言えば計らうと権力のある所をアピールして送り出すのです。

 会社を乗っ取られて少なからず損をした上にクルーズ旅行。これは明らかにボンドに恩を売る行為です。

 世界的企業の経営者となればMI6に直接頼み事をする機会もあるでしょう。この恩はその時の為の布石です。どうしようもない難題を吹っかけて失敗させて掘るもよし、成功した時にお礼と言ってケツを差し出してもよしです。

 一緒に見送るフェリックスはもっと簡単です。大統領とも知った仲だろうホワイトにしてみれば、この一件でCIAの上層部にフェリックスを男妾として差し出せと強要するなど朝飯前です。


ウィント×キッド
 この二人が本作のBL的大トロなのは考えるまでもありません。そして、この二人に浮気はなしです。

 密輸に加担する歯医者を始末するシーンからして歯医者は明らかに二人の関係を察して気味悪がっています

 そうして歯医者を始末するのを皮切りに、二人の他人には不可能なコンビネーションと、小汚いビジュアルに反して大人な雰囲気のいちゃいちゃが事実上映画を支配します。

 二人はまるでデートの余興のように世界各地でいちゃつきながら人を殺していきます。そして、一連の行動からキッドが妻である事が明白です。

 こんなにも生々しくゲイカップルを描いた映画は現代においても稀です。1971年にここまで踏み込んだのは歴史的快挙と言わねばなりません。スタッフゲイばかり説はこの観点からもリアリティがあるのです。

 アムステルダムからアメリカへ飛ぶボンドとティファニーと同じ飛行機に乗り込んだ二人のやり取りが最高です。

 カーテン越しに二人が居るのを確認して、ティファニーをチャーミングだと褒めるキッド。ところが、一呼吸おいて「女にしてはね」と付け加えるのです。

 この一言はキッドによるウィントへの愛の証明に他なりません。それなのに無言でキッドを睨みつけるウィント。ビジュアルにさえ目をつぶれば100点満点の当て馬女付きBLです。

 二人はアメリカで二度に渡ってボンドを気絶させる大チャンスを得ながら、例にもよって回りくどい方法でとどめを刺そうとして失敗します。

 この二人もまたボンドに魅せられた男だったというのは短慮です。二人の愛に第三者の立ち入る余地などありません。

 二人は常にこのゲイ風なのです。それを証拠に、最初の歯医者の始末の仕方からして相当に回りくどい方法です。殺すたびにいちいち気の利いたコメントを残すのも、二人のコンビネーションの良さを物語っています。

 つまり、ウィントとキッドはボンドではなくお互いに魅せられた男なのです。一方的にボンドに惚れた挙句やらかした過去の連中と決定的に違います。二人にとってボンドはコンドームに過ぎないのです。

 雇い主のブロフェルドを失いながら、ボンドとティファニーに爆弾入りのディナーを届けに行ったのからもこれは明白です。金でもなく、そこらの男でもなく、互いの信じる美学の為だけに二人は人を殺すのです。

 ところが、ソムリエのふりをしたウィントがワインに暗いのでバレてしまいます。

 力業に訴えてウィントが後ろからボンドの首を絞め、燃える串焼き肉を持ったキッドが迫りますが、キッドはワインをかけられて炎上し、海へ転落してしまいます。

 ここでウィントのボンドの首を絞める力が明らかにパワーアップしているのにご注目下さい。これが愛でなくて何でしょうか?

 しかし、二人で一人のウィントとキッドだけに一人になると案外弱く、爆弾入りケーキと一緒に海に投げ込まれて二人仲良く海の藻屑と消えます。

 ボンドの「尻に火がつくとはこの事だね」というコメントが意味深です。ボンド隠れバイ説がここで生きてきます。

 ウィントを倒す方法などいくらでもあったはずです。なのにキッドの後を追って海に投げ込んだのはボンドの恩情ではないでしょうか?

 この期に及んで人工衛星に使ったダイヤを取り戻せないかと峰不二子並みの強欲さを見せるティファニーと、そんなティファニーとヤりまくって飽きたら捨てるボンドに対して、ウィントとキッドの愛は何と崇高で美しいことか。ボンドにもそれが分かるのです。

 だからこそ二人の仲を引き裂くようなことはボンドには出来なかったわけです。

 ダイヤモンドなど見てくれは美しくても化学的には石炭の親戚に過ぎず、永遠の輝きと言いつつ金槌でぶっ叩けば壊れます。真の美は目には見えず、決して壊れないのです。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します

ショーン・コネリー追悼企画
『レッド・オクトーバーを追え!』
『007 ドクターノオ』
『アンタッチャブル』
『薔薇の名前』
『007 ロシアより愛をこめて』
『007 ゴールドフィンガー』
『007 サンダーボール作戦』
『007は二度死ぬ』

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