第100回 メジャーリーグ(1989 米)
さて、プロ野球のキャンプインの季節、球春到来であります。今年も多くの選手が大リーグへ旅立ってしまいましたが、半分くらいは1年くらいで逃げ帰ってくるのでしょう。
というわけで、BL的映画レビューも野球回でお送りします。ここぞというタイミングの為に取って置いた『メジャーリーグ』でお送りします。
ストーリーはいたって簡単。駄目チームに集まったダメ選手が都合よく覚醒して優勝する、予想も期待も裏切らない極めて手堅い一本です。それを『スティング』でオスカーを獲得したデヴィッド・S・ウォードがやるのですから、過不足なく面白いコメディに仕上がっています。
トム・ベレンジャーとチャーリー・シーンの『プラトーン』コンビに、ブレイク前のウェズリー・スナイプスも加わり、黄金時代を謳歌していた90年代のメジャーリーグの光景も懐かしくも美しく、馬鹿馬鹿しい映画ですが隙が無い完成度でもあります。
そして、モデルになったクリーブランド・インディアンスがこの映画の公開された頃から本当に強くなって優勝してしまった点も、この映画のミラクルな所です。
そして、この映画はよくよく観ると完全にBLです。何しろチャーリー・シーンが二刀流である事は今や広く知られる事実です。そして、インディアンスは多田野数人を拾ったチームであります。男と男のけつなあな確定です。
メジャーリーグを観よう!
意外にもU-NEXTでしか配信していません。
真面目に解説
インディアン嘘つかない
さて、一つ残念な事から話さないといけません。この映画はクリーブランド・インディアンスが舞台なのですが、インディアンスは無くなってしまいました。
いや、厳密にはインディアンスはガーディアンズと改名してしまったのです。かねてから先住民がこの名前にクレームをつけていたので、ポリコレに負けてしまったという事です。
はっきり言って、この措置は私は非常に不満であります。先住民への悪意がこのネーミングが籠っているはずもなく、むしろクリーブランドの人々にしてみれば大切にしてきた財産なのです。
白人が先住民の土地を奪ったのは良くないですが、だったら先住民も他の誰かから何かを奪っはいけないのが道理ではないでしょうか?
そして、インディアンという呼称が必ずしも悪いのかと言うとそういうわけでもなく、ネイティブアメリカンなんて取ってつけた名前じゃなくて堂々とインディアンと呼べと言う先住民も居たりします。他にも部族名で呼べとか、色々流派があって難しいのです。
いずれにしてもこれは難しい問題ですし、これ以上は別のもっと相応しい機会にしましょう。
プロ野球は公器なり
クリーブランド・インディアンスは1901年にその歴史が始まったチームで、何度か名前は変わっていますが、現在まで一貫して五大湖のほとりのクリーブランドに本拠地を置く珍しいチームです。
アメリカのスポーツチームはオーナーが変わるとついでに移転してしまう事が多く、名前は変わっても本拠地が変わらずにずっと続いているチームは驚くほど少ないのです。
とは言えインディアンスは50年代を最後に長い暗黒時代に突入し、流石に地元住民からも見放されてしまいます。阪神みたいな例は特別で、やはりアメリカ人も地元のチームが弱いとヤンキースを応援し始めるのです。
映画はそんなインディアンスを夫から相続したオーナー、レイチェル(マーガレット・ホイットン)がマイアミに移転させようとする事から始まります。
元ショーガールであるこのレイチェルが救いようのないオメコ芸者で、マイアミにチームを持って来ればマンションとゴルフ会員権を貰えるという理由でチームにあらゆる嫌がらせをします。
ここで北米プロスポーツのビジネスの仕組みが垣間見えるのは興味深い点です。
つまり、この種のスポーツチームは誘致したい都市が多く、リーグは意図的に常に需要が不足するようなチーム数を設定します。
そうすれば誘致合戦が起き、誘致先が新球場を建ててくれたりと良い条件を出してくれるのです。一方で、チームを持っている都市もどうにかチームを引き留めようとします。
レイチェルはクリーブランドとの契約に観客動員数が一定数を下回ったら移転できるという条項を発見し、夫から相続したインディアンスを意図的にダメ選手で固めて観客動員数を減らし、マイアミへ売ろうとするのです。
アメリカ人にとって野球は相撲のような古臭くとも神聖な国技なので、本当にこんな事をすれば末代まで非難されると思いますが、レイチェルは常に絶対悪として振舞い続けます。
あれ、タカは?
これは『ゴッドファーザー』でもやったパターンですが、メジャーリーグと言えばタカ田中と思う人も多いかと思います。
しかし、本作には石橋貴明は出て来ません。実はタカ田中は2からの登場なのです。
そもそも現代とは事情が違います。今はどいつもこいつもアメリカに行きたがりますが、本作が作られたのはまだ野茂英雄さえ社会人野球に居た時代です。野茂がアメリカに行くのには実力とは別の制度上の大変な苦労がありました。
一方で、興味深い事にグラウンドキーパーは日系人が演じていて、何かとインディアンスを下手糞な日本語で非難します。
これはこの映画が日本で売れると思ったのと無関係ではないのでしょうが、実際にアメリカ野球では日系人の裏方さんが数多く活躍していました。この種の仕事は給料が良いというわけでもなく、一方で細かさが求められるので、差別されがちながらも器用な日系人が重宝されたようです。
とにかく、当時の日本とアメリカの野球の架け橋は、ドラフトの司会とあからさまなカツラで有名なパンチョ伊東氏しかありませんでした。そして、あの人がゲイだったのは公然の秘密ですが、それは今回はいいでしょう。
ダメ男達の宴
さて、レイチェルの密命を受けた前監督でGM(選手を集める係)のドノヴァン(チャールズ・サイファース)は渋々ながらダメ選手集めを始めます。
まずは監督人事が決定し、マイナーリーグのダメ監督でタイヤ屋の大将でもあるルー・ブラウン(ジェームズ・ギャモン)が渋々ながら監督就任を承知します。
マイナーリーグからメジャーリーグに昇格すれば言うまでもなく大変な名誉ですが、無様な成績を残すとその後の仕事がなくなるので、インディアンスの監督という地位はルーさえも嫌がるババなのです。
とは言えルーは信じられないほど有能で、無名選手やロートルばかりのチームを上手くまとめ上げてしまいます。ダメ同士で波長が合ったのでしょうか?
ダメ男の要
かくしてかき集められたダメ選手達のリーダーが、元オールスター選手ながら自堕落な生活とひざの故障でメキシカンリーグに都落ちしたジェイク・テイラー(トム・ベレンジャー)です。
やはり野球は一にピッチャーで二にキャッチャーなので、満身創痍とは言え実績のあるキャッチャーを雇ったのはドノヴァンのせめてもの抵抗だったのでしょう。
ジェイクは飲む打つ買うの三拍子で女に逃げられた議論の余地なきダメ男ですが、やはり選手としての実績がずば抜けているので人望があり、なんやかんやとチームリーダーに収まって頑張ります。
とは言えあまり試合で活躍する場面が無いのが笑いどころです。やはりキャッチャーが目立つ野球物は作るのが難しいのでしょう。
リアルダメ男
並行してマイナーリーガーが集められますが、その中に混じっていたのが事実上の主人公であるリッキー・ボーン(チャーリー・シーン)です。リッキーの野球シーンが多いのは、単純にチャーリー・シーンが野球が上手いからそうなったようです。
誘いがかかったものの、なんと自動車泥棒で収監されている有様です。そして袖なし革ジャンでハーレー乗りに乗せてもらってスプリングトレーニング(キャンプ)にやって来て、左耳のピアスをオカマ呼ばわりされたりしちゃいます。
意味深にすぎます。チャーリー・シーンがセックス中毒でドラッグ中毒で少年愛者でHIV陽性である事が判明し、海賊のタニマチをしている親父がホモ弁護士の役で当てている今、非情に意味深です。
さて、リッキーは剛速球が武器ながら救いようがないノーコンという分かりやすい主人公で、勿論ノーコンは治ります。しかも凄くしょうもない方法で。
後のダメ男
ロールスロイス風のボンネットのビートルというアホ丸出しのカスタムカーで球場に乗りつけたウィリー・メイズ・ヘイズ(ウェズリー・スナイプス)です。
まだスナイプスは『ブレイド』で当てる前で、勿論脱税でムショに入る前です。というより、本作が出世作なのです。
ウィリーは走る担当で、驚くべき事に呼ばれても居ないのにキャンプにやって来て潜り込むという盗塁をやって無理矢理チームに収まります。
何しろ貴重な面白黒人枠なので現場で気に入られたらしく、賑やかし役としてかなり美味しい所を持って行きます。
基本的にはジェイクとリックとウィリーは3人セットで、常にホモのようにいちゃいちゃしながら一緒に居ます。だからウェズリーはドラッグクイーンになって旅に出るケツ意をしたのでしょうか?
悪い意味でダメ男
仲が良いばかりではストーリーが盛り上がらないので、チームの輪を乱す枠もちゃんと居ます。
三塁手で高給取りのロジャー・ドーン(コービン・バーンセン)です。打つけど守備は怠慢。趣味はゴルフとルーキーいじめという、野球物でこれ以上なく分かりやすい嫌な奴です。
しかし、この映画は基本的に誰も不幸にならないタイプの作品なので、案の定ジェイクと仲間達のホモシーシャルに飲み込まれてその気になってしまいます。
そして、彼の場合本領を発揮するのは2です。3は単なる同窓会なので観なくて良いですが、2はそれなりに観る価値があります。
ルール的にダメ男
さて、野球と言うのは表向きのルールの他に不文律やバレない程度の反則が内包されていて、だからこそ奥深くて面白いスポーツになっています。
消去法エースのエディー・ハリス(チェルシー・ロス)は身体やユニフォームのあちこちに油やローションを塗りたくっています。
これはスピットボールとかエメリーボールと呼ばれる反則で、こういう物をボールに着けると変化球がよく曲がるのです。ダルビッシュがやったのではないかと物議をかもしたあれです。
アメリカにはこれが得意技というピッチャーが驚くほど多く、審判にバレない限りは高等テクニックと見做される傾向がつい最近までありました。
とは言え、ハリスは特に居ても居なくてもいい役なのは言ってはいけないお約束です。インディアンスのダメっぷりを表現する為に居る男なのです。
国公認のダメ男
チームの主砲がキューバから亡命してきたペドロ・セラノ(デニス・ヘイスバート)です。キューバから野球選手が亡命して来るのは年中行事ですが、セラノの場合ブードゥー教を信仰する自由が欲しくて亡命したというのが何気にブラックジョークです。
セラノはアメフトの方が似合いそうなムキムキ黒人ですが片言の癒し系キャラで、ロッカーに祭壇を作って葉巻やラム酒を捧げ、恐ろしいスラッガーながら変化球が全く打てないというこれまた分かりやすいキャラクターです。
とにかく、この映画のキャラクターは分かりやすいのです。奇をてらった事はしなくても、型が出来ているキャラクターを集めればちゃんと良い物が出来るという教訓を教えてくれる映画です。
ガチすぎる男
ルーの側に居るコーチのデューク(スティーブ・イェーガー)にご注目下さい。この人は作中では全く目立ちませんが、作中ナンバーワンの傑物です。
というのも、スティーブ・イェーガーは長年にわたってロサンゼルス・ドジャースでプレーし、ワールドシリーズMVPにも輝いた筋金入りのメジャーリーガーなのです。
そして、人類史上最初に音速に達した伝説のパイロット、チャック・イェーガーのいとこでもあり、プレイガールでヌードに挑戦した男でもあります。だから私は彼のバットがどんななのか知っています。ユダヤ人は割礼をするので包茎ではないとだけ言っておきましょう。
恐怖の赤紙
日本とアメリカの野球選手の契約形態の違いが大きくクローズアップされ、重要なファクターになっているのは注目すべき点です。
つまり、日本の野球選手は契約を結んでからキャンプに行き、そのシーズンの間は少なくともクビにはなりません。不祥事でも起こせば別ですが。
しかし、アメリカの場合はキャンプにマイナーリーガーや契約先の無い選手を多めに呼び、ふるいにかけていきます。勿論、ふるいから落ちれば解雇です。
解雇される選手のロッカーには練習中に赤い紙がぶら下げられ、ロッカーを開けたらクビになった事が分かるという仕組みになっています。
これはこの映画で非常に有名になった方法ですが、本当に行われたという証言を聞いた事がないのはちょっと不思議です。
とにかく選手達はロッカーを開けるのを怖がり、セラノなどは何処からか蛇を連れて来てカルメン・ミランダみたいな帽子をかぶってまじないをしてから開ける有様です。
切実です。何しろ解雇されれば良くてマイナーリーグ、悪ければ引退です。メジャーリーガーで居られるかどうかの瀬戸際ですから、これは人生を変えてしまう地獄からの赤紙なのです。
女に球とバットなし
とにかく生き残ったジェイクは、リッキーとヘイズを連れてレストランで祝杯を挙げます。
しかし、同じ店に浮気して別れた婚約者のリン(レネ・ルッソ)が弁護士の彼氏と一緒に居るのを見てジェイクは強引に電話番号を聞きに行き、復縁を試みます。
ジェイクの現金さには呆れますが、放蕩三昧の野球選手と別れて弁護士を選ぶというリンの選択肢にアメリカならではの嫌なリアリティがあります。
リンの仕事は図書館司書で、ジェイクが白鯨さえ読んでいないとなじります。それでジェイクは白鯨を読んでリンを白鯨ネタで口説いて復縁しちゃいます。
ただし、ジェイクが読んだのは薄っぺらい漫画版なのが笑いどころです。
白鯨の漫画版があるのも、あんな薄い本にあの長いストーリー収まるのも、ジェイクがこういう場面で平気でズルしちゃうのも、それでリンが納得しちゃうのも驚きです。やはりリンはダメ男について行っちゃうタイプのなのでしょう。
リアル居酒屋実況
ついに開幕戦が始まり、実況アナウンサーが登場します。ハリー・ドイル(ボブ・ユッカー)です。
ボブ・ユッカーは元メジャーリーガーかつミルウォーキー・ブルワーズの名物アナウンサーで、アメリカのスポーツアナウンサーの大統領のような人物です。アメリカは解説者を雇うより選手をアナウンサーにする傾向があるのです。
ハリーはインディアンスをこよなく愛していますが、それ故にインディアンスの悲惨な現状を誰より憂いていて、酒を飲みながらかなり投げやりな実況をします。
日テレ版では徳光和夫が吹替をやっていましたが、これは良くない選択です。傲慢な巨人ファン代表の徳光を、弱いチームを誰より情熱を持って応援している男の役に使うのは間違っています。
くたばるヤンキース
開幕戦の相手はヤンキースです。こういう時はヤンキースが敵でないとやはりおさまりが悪いのです。王者の義務という物でしょう。
4番ファーストのクルー・ヘイウッド(ピート・ブコビッチ)という男にご注目下さい。このブコビッチもやはり本物の野球選手で、サイヤング賞まで獲得したピッチャーでした。何故ピッチャーを呼んだのでしょうか?
日テレ版ではなんと中畑清が素人吹替をしていました。当時はこれは徳光同様の間違いと判断されたのでしょうが、状況が変わりました。
だって、中畑はインディアンス同様の悲惨な状況だったベイスターズの監督になって、黄金時代の基礎を作った男なのです。もっとも、ベイスターズは女性オーナーの尽力があってそうなったのですが。
そして、多田野数人は本来横浜に入るはずだったのに、あのビデオの一件ではしごを外されてインディアンスに辿り着いたのです。
やはりこの映画は野球の神様の御加護を受けているとしか思えません。
メガネはピッチャー
インディアンスは開幕以来駄目なりに頑張り、レイチェルは業を煮やしてチームの待遇をどんどん悪くしていきます。
一方でルーは素質を見込んだリッキーが1イニング4暴投の新記録を樹立したのを機に再考し始め、マイナー調整を提案しますが、ふとした時にリッキーが極度の近眼である事に気付きます。
ダサいセルフレームの眼鏡を与えられて嫌がるリッキーですが、この結果見違えるようなピッチングを見せるようになります。実に単純で分かりやすい解決策です。
これは案外馬鹿にならない話で、目の悪いピッチャーはキャッチャーとのサイン交換に困難をきたしたりします。
しかし、眼鏡はキャッチャーというパブリックイメージが定着している日本で、ピッチャーの方を眼鏡にするというのは難しい発想です。これはまさにファインプレーなのです。
アメリカン野球拳
一方でレイチェルはチームを更に追い込もうと謀り、あらゆる方法でチームに嫌がらせを開始します。
まずは移動に使うチャーター機がぼろいプロペラ機になり、更にはバス移動になってしまいます。メジャーリーガーが広いアメリカをバス移動とは、気が遠くなりそうです。
そしてシャワールームはお湯が出なくなったまま放置という有様です。そしてレイチェルはロッカールームに入って来てルーの股間のバットをなじり、リッキーの股間のワイルドシングをつつき、ジョックストラップ(我々の業界で言うケツワレ)一丁のセラノの尻を触り、選手達を「pansy(オカマ)の集団」呼ばわりし、セクハラパワハラ三昧です。
レイチェルの横暴に耐えかねたドノヴァンはルーにマイアミ移転の陰謀をばらし、ついに一転攻勢が始まります。
ルーは最下位になればマイアミ移転で全員がクビ、最下位脱出したら更にダメなメンバーと入れ替えになってクビで、ジェイクが優勝以外生き残る道はないと説きます。
ルーはレイチェルの等身大パネルを用意します。服の部分はシールになっていて、優勝ラインである32個に分割されており、勝つたびに剥がしていけばレイチェルが丸裸になった時点で優勝というシステムです。
これで火がついてインディアンスは快進撃を始めます。いくらなんでも雑な方法だと思いますが、まああり得ない話ではありません。プロ同士なら3回に1回は負けるのが野球であり、究極にはメンタルが勝負を決めるというはよくある話です。
嗚呼憧れのアメックスカード
インディアンスは連勝に注ぐ連勝で一気に優勝戦線に躍り出て、チーム一同はアメックスカードのCMに出る事になります。
この映画最大の笑いどころの一つです。これは字幕や吹替を担当した各位の尽力によるところが大です。
タキシードに野球帽で居並び、棒読みで俺達はホームタウンでも振り向かれないと自虐ネタをかますのも大概笑っちゃいますが、袖を千切ってノースリーブのリッキーがアメックスカードを持っていればレストランやホテルで締め出されないと言うのが嫌なリアリティがあります。
何と言ってもアメックスカードは小金持ちの御用達であり、一番審査が厳しいカードなので信用があります。
翻訳陣の良い仕事はここからで、セラノが「アメックスはカードのホームラン王です」とぶちかまします。ナボナのCMは関東ローカルネタです。福岡の人だってちょっと困るネタです。
そして何故か画面に姿の見えなかったウィリーがスライディングで現れて「出かける時は忘れずに」と締めます。というより、このCMそれ自体がジャック・ニクラウスの有名なバージョンのパロディなのです。
完璧な仕事です。ただ、今のメジャーリーグはマスターズカードがオフィシャルカードで、選手は全員持たされるそうです。
Wild Thing!
さて、優勝の行方は最終戦となったヤンキース戦の9回までもつれ込み、リッキーがついにブルペンから出てくるシーンが描かれます。
大音響の『ワイルドシング』を出囃子にブルペンから出て来るリッキー。この曲はこの映画をきっかけに流行し、特に野球のクローザーはこぞってこの曲を出囃子にする事態になりました。
彼らは多分後悔しているでしょう。だって、今やチャーリー・シーンはあの有様ですから。
とは言え、あの瞬間がこの映画で最もアドレナリンが分泌されるシーンなのは間違いありません。あるいは、チャーリーはあの興奮が忘れられずにショタホモキメセクに走ったと言われても驚きません。
オメコ芸者、わりゃあ黙っちょれ
この映画には実は未公開シーンがあります。実はレイチェルが夫の遺産であるインディアンスを大切に思っていて、チームを奮い立たすためにわざと意地悪したとカミングアウトするのです。
このバージョンは試写会での評判が非常に悪く、結局カットされてしまいました。
このやり方が許されるのは大石内蔵助くらいの物です。それに、レイチェルが悪に徹したからこそ2も盛り上がったのです。
やはり悪役は悪役に徹してもらう方が良いという事なのでしょう。それに、もし改心していたらレイチェルはあまりファンの印象に残らず、マーガレット・ホイットンの代表作は『ナインハーフ』あたりになってしまうところでした。
全ての歯車がかみ合ったからこそ、この映画は良きファミリームービーとして未だに愛されているのです。
BL的に解説
インディアンと同性愛
さて、箸休めも兼ねてこの辺をはっきりさせておきましょう。インディアン、つまりアメリカ先住民にとって同性愛は全く恥じる事はないごく普通の営みでした。
だからヴィレッジ・ピープルにはインディアンが居るのです。先住民の同性愛にピューリタンどもは恐れおののき、ある者は憧れと嫉妬を抱いた。別に驚くべき事ではありません。何なら仲間に入れてもらった白人だって居たでしょう。
そして、インディアンスはスポーツと同性愛の歴史において決して避けて通れない位置に居ます。というのも、ホモビデオに出たために日本を追われた多田野数人を受け容れ、メジャーに昇格させたからです。
勿論ゲイのメジャーリーガーは多田野だけなどという都合の良い話はありませんが、証拠映像があるゲイは史上初です。
多田野はゲイではないと嘘をついてチームに留まり、艱難辛苦の末にあのスローボールでアレックス・ロドリゲスを打ち取るに至ったのですから、やはりアメリカ先住民の寛容の精神をもインディアンスは内包しているのでしょう。
リッキーガチホモ説
チャーリー・シーンがあんな事になった今、彼のフィルモグラフィは全部疑ってかかるべきという事です。私は作品と作り手の人格は不可分であると信じます。
いずれにしても、リッキーのホモ要素は群を抜いています。病的なマッチョイズムの巣窟であるスポーツの世界でピアスを着けているだけでもかなりの物ですが、常にノースリーブ主義なのに至っては所謂ハードゲイの世界の中でもかなり異端です。
思うに、リッキーはムショで掘られまくったのでしょう。何しろ若いチャーリー・シーンが自動車泥棒などというセコイ罪で入ったのですから、入所から24時間以内に掘られるのは間違いありません。
しかもキャンプにはヒッチハイクしたらしきバイカーと2人乗りで現れます。これはもう何をいわんや、しゃぶるくらいはしないと乗せてはくれません。
アメックスのCMに出てもノースリーブタキシードなのに至っては意味不明です。あの格好ではアメックスのブラックカードを持っていても警察に通報されそうです。
ルー×リッキー
ルーの名将ぶりは驚くべき物です。マイナーでもダメ監督だった男が、メジャー昇格即地区優勝とは歴史に残る快挙と言わねばなりません。
このような快挙を可能にしたのは、やはり何と言ってもルーがリッキーを見出したからです。
ルーのケツの穴の大きさは群を抜いていました。リッキーの剛速球に限りない可能性を見たルーは、リッキーのノーコンを必死に矯正しようとします。
ロジャーがロッカーに赤紙を仕込んだためにリッキーが怒鳴り込んできた時も、球場で会ったらボールをぶつけて殺すと宣言するリッキーを気合を気に入ったと褒めちゃいます。
マイナー落ちも要らないから他を使うという性質の落し方ではなく、下のレベルで一旦勉強して来いという物で、あくまでリッキーに期待しているのです。
ノーラン・ライアンもそうやって成功したと故事を説くのも相当です。つまり、リッキーがノーラン・ライアンになれる未来をルーは見ているのです。
そして、たまたま額に飾ってあったライアンのカードを指さしたのがリッキーの運命を変えました。これに至っては、明らかに野球の神様が計らった結果です。
インディアンスの快進撃はリッキーの開眼が寄与するところ大でした。いや、ハリスも頑張りましたが、やはり計算できるピッチャーが一人と二人では全然違います。
しかし、ルーはシーズン最終戦のヤンキース戦では、リッキーのローテーションを飛ばしてハリスを先発させると言います。
リッキーは前半戦でヤンキースにやられまくっていたのでこう考えたのでしょうが、こういう時にピッチャーは迂闊に扱うとへそを曲げます。
しかし、バスの中でそれを告げられたリッキーは、それがチームの為ならと文句ひとつ言わず、ルーに活躍をねぎらわれてメスの表情を浮かべます。
明らかにあの後ワイルドシングです。何しろチーム全体がハイになっているので、誰も気に留めないでしょう。何なら他にもヤってる奴が居ても驚きません。
とは言え、リッキーが悔しくないはずがありません。ウィリーがホームラン性の打球をフェンスに飛び乗ってキャッチしてしまった瞬間の不貞腐れた表情は、苦楽を共にした仲間に置いて行かれたたような気分を物語っています。
しかし、9回表二死満塁の修羅場でルーはリッキーをマウンドに送ります。ワイルドシングの大合唱に送られて現れたリッキーには王者の風格を感じます。
ブルペンから歩いて来るというのは、これは江夏豊がよくやっていた奴です。薬の前科があり、キャッチャーに救われた者同士、通じるものがあるのでしょう。
打席に立つのは宿敵ヘイウッド。勝った方が全てを手に入れ、負けた方が全てを失う。まさにバイオレンスポルノの境地です。
リッキーはこの勝負に速球勝負でで三球三振という完勝を収めます。これ以上ない勝ち方です。むしろこれからはヘイウッドの方がリッキーに苦手意識を持つでしょう。
見初めた男を成長させる。古代より続く美しき男色の伝統がここにはあります。だけどチャーリー、少年はいかんよ。
セラノ×ハリス
脇役同士でも美味しい部位があります。この異宗教カップリングは美味しい部位です。
ハリスは敬虔なクリスチャンであり、ブードゥーのセラノに何かといえば突っかかります。
ブードゥーはキリスト教の分派でもあるのでそんなに悪く言う事はないと思うのですが、こんなにケツの穴が小さい考えを持っているという事は、ハリスは多分カトリックなのでしょう。
敬虔なカトリック。これはBL的にはもはや神父に掘られていたとカミングアウトするのと同義です。
野球選手が聖職者に掘られたのは実例があります。横浜に居たパチョレックの兄で、ドジャースで長く活躍したジム・パチョレックは牧師に性的虐待を受けた事を告白しています。ハリスもそうだとしても驚くべき事ではありません。
開幕戦を前にしてハリスがお祈りをしようと提案します。「野蛮人でも神に祈ってる」とセラノにあてつけるのは現代ならヘイトスピーチです。
一方でセラノもハリスのお祈りの最中に祭壇の御香を爆発させて嫌がらせをします。どっちも十字架を首に下げているのですからもっと仲良くすればいい物を。やはりキリスト教徒はケツの穴が小さいのです。
おまけにセラノのお香で火災報知器が反応し、ロッカールームは水浸しになってしまいます。これが本当の濡れ場です。
この宗教問題はハリスがこっそりセラノの祭壇の供え物のラム酒を盗み飲みした事で最高潮に達します。異教徒にならどんな無礼も許されるという発想が実にキリスト教的です。
見事に天罰が下り、ハリスはフィールドで飛んで来たバットを頭にぶつけて怪我をしてしまいます。一歩間違うと死ぬレベルの事故です。
しかし、優勝をかけた最終戦を前にセラノが祭祀を行う時は、ハリスもちょっと神妙そうにします。
何しろセラノはチームの主砲なので、ハリスは何度も助けられているはずです。しかも、これからハリスは先発しようというのですから、これはまさに呉越同舟というわけです。
しかし、ハリスはホームランを打たれて2失点。その裏にロジャーを一塁に置いてセラノの打席が回ってきます。
セラノは変化球でいいようにされて連続三振という切れ痔状態でしたが、ツーストライクに追い込まれて神との決別を宣言し、特大のホームランで同点に追いつきます。
しかし、ハリスは続く9回に疲れを見せて満塁の修羅場を作り、リッキーにマウンドを明け渡します。
ジェイクのビーンボールに一緒に口汚く非難の言葉を浴びせるのは、既にキリストでもジョブーでもなく、野球の神様が2人を祝福している証拠だと思います。野球の神様は腐女子なのです。
優勝が決まってファンもグラウンドになだれ込んでくる中、セラノとハリスが抱き合って喜ぶのは、野球の神が融和を説いたからです。もはやこの神に祝福されたカップルは離れられません。
しかし、2には実はハリスは出て来ません。これもBL的に読み解けば容易に説明できます。
つまり、この夜2人はついに一つになったのです。しかし、セラノのバットがキングサイズなのは、ロッカールームでいつもケツワレなので判別可能です。
そう、ハリスはケツに病を得てユニフォームを脱いだのです。いや、ユニフォームを脱いだのでケツに病を得たのですが。
いずれにしても、ハリスの場合は常にケツに塗る物を常備しています。どれを塗るかで感触が変わるのです。
ジェイク×ロジャー
控え目に言って、ロジャーはチームの癌です。そもそもキャンプにゴルフセットを持って来るというのは典型的な悪徳野球選手ムーブであります。
一方、かつては同格のトッププレイヤーだったジェイクはインディアンス復活の原動力となります。
つまり、忘れかけていた栄光を追い求めて明日なき戦いに身を投じるジェイクと、金儲けに溺れて保身に走るロジャーの対比が強烈に描かれています。実にBLです。
それが顕著に出たのがリッキーが初めて眼鏡をかけて臨んだ試合です。ロジャーはそこそこ打つ選手である事が明示されますが、守備は下の下で、正面のボールしかとらないという怠慢ぶりです。
ジェイクは危うく負けそうになって怒るリッキーを諫め、自らロジャーの豪邸まで説得に行き、また迷惑な怠慢プレイをしたらタマを切り取って口に詰め込むと脅しをかけます。
これはかなりホモ臭い脅し文句です。去勢するぞって言ってるわけですからね。
ジェイクに脅されても一向に態度を改めないロジャーですが、レイチェルが自分もクビにする気だと知り、ジェイクが優勝すればそれを回避できるというと奮起します。怪我だらけになって守備練習を頑張っちゃいます。
インディアンスが快進撃を始めるとロジャーは完全にメジャーリーガーの風格を取り戻し、守備でも活躍するようになります。
これは思うに、口で言っても分からないロジャーにどこかのタイミングでジェイクが下の口で分からせたのではないでしょうか?
ロジャーを便所に連れ込み、股間のバットからファイティングスピリットを注入するジェイク。山ネコとは言え、こういう時はタチにならねばいけません。両方できるのがゲイリアルです。
ロジャー×リッキー
ロジャーはルーキーいじめが趣味のクソ野郎ですが、だとしてもリッキーばかりに狙いを定めるのは何故なのでしょうか?
これもBLと読めば合理的に説明できます。つまり、好きな女の子に意地悪しちゃう11歳児ムーブです。野球選手なんて死ぬまで心は11歳ですから。
最初にピアスを根拠にリッキーをホモと決めつけるのも相当に根性が悪い思想です。いかにもアメリカの体育会系が考えそうな事です。だとしてもこの短絡思考はホモのホモ嫌いの発想です。
もしロジャーがホモのホモ嫌いだとすれば、弱い立場のルーキーにしゃぶらせる位の事は常習的にやった可能性が否定できません。まあ、喜んでしゃぶりそうな奴が少なくとも一人インディアンスには居たわけですが。
つまり、ルーキーホモとベテランホモの衝突だと思えば、この2人の長々とした確執は説明が出来ます。
特にロッカーに偽物の赤紙を仕込むというのは意地悪というレベルを超えています。ここまで残酷さに徹する事が出来るのはある意味では才能です。
これを即座にロジャーの仕業と気付いて大げんかをおっぱじめるリッキーも、やはりロジャーに何かを感じ取っていた証拠です。このくらい勘が良くないとムショでは生き残れないのでしょう。
ロジャーが守備で手抜きをするのはピッチャーが誰でも同じなのでしょうが、リッキーはそれを意地悪と取るのは無理からぬ話です。実際に意地悪でそういう事をするプロは存在するのですから。
しかし、インディアンスの快進撃が始まり、ちょっとロジャーが改心した所で風向きが変わります。
町中がインディアンスを応援するようになり、ついにはレイチェルは最終戦を前にしてトップレスになり、ヤンキースをまくって首位に躍り出ます。
ところが、ホテルの祝勝会がテレビ中継され、ロジャーがコールガールを部屋に連れ込むのをロジャーの妻のスザンヌ(ステイシー・キャロル)が見てしまったせいで話がややこしくなります。
スザンヌはバーにやけ酒を飲みに行き、リッキーを逆ナンして寝るという暴挙に出ます。
スザンヌは自分はグルーピー(追っかけの馬鹿女)じゃないと言いますが、やってる事は同じであり、リッキーはグルーピーと寝る事に味を占めているのです。これがプロ野球のリアルです。
しかし、スザンヌはやる事をやった挙句、リッキーに自分はロジャーの妻であるとカミングアウトして帰って行きます。
そうと知らないロジャーは勝利への渇望に燃えていて、大ハッスルで球場へ向かおうとしますが、スザンヌは昨晩の出来事をバラシてしまいます。
とんでもないオメコ芸者です。いや、この映画の女はオメコ芸者しか居ません。女はコンドームという思想が徹底しています。
明らかにスザンヌは夫と仲間達の邪魔をしようと試みていますが、2点を奪われたインディアンスの反撃の糸口になるヒットを打ったのはロジャーでした。
ロジャーはあんなビッチの思い通りになるのが嫌だったのです。チーム一の高給取りとして、仲間達を裏切るわけにはいかない。チームワークとはこういう事です。崇高です。
ロジャーは最後の最後にマウンドに立ったリッキーの元へ行き、恨み言を言いつつも「あのクソッタレを打ち取れ」と発破をかけます。
重荷が取れたとばかり笑みを浮かべるリッキー。この崇高にして甘美な精神的ホモの境地は、コンドームに過ぎないトロフィーワイフごときに分かるものではありません。
全てが終わり、歓喜の渦の中でロジャーはリッキーを殴り倒し、抱き起して濃厚な抱擁を交わしました。こうなればNTRではなく間接ホモセックスです。こうなってしまっては、スザンヌなどコンドームについたエイズウイルスに過ぎません。
ヘイズ×リッキー×ジェイク
まさかの三すくみBLでお送りします。何しろキャッチャー、ピッチャー、センターと一直線に居るわけですから。
やはりピッチャー×キャッチャーは究極にして原点であります。狙っていなくてもピッチャーとキャッチャーは接触する機会が多いので、腐の視線を集めるのは避けられないのです。
ジェイクは明らかにリッキーとヘイズに目をかけていて、何かと助言を授けてくれます。それを案外素直に聞いちゃうヘイズとリッキー。良い感じです。
特に赤紙があってもなくても顔に出すなという教えは重たい意味を持ちます。赤紙を寄越された選手が気の毒だからというのがジェイクの弁ですが、明らかに彼らに未来を見ているからこその言葉です。
つまり、赤紙が出てすぐに野球から足を洗うような男にはこの教えは必要ありません。野球選手の盛者必衰のさだめを知っているジェイクが、この2人に未来があるからこそこの心得を授け、それを将来若者に教えるように期待しているのです。
そしてジェイクは3人とも生き残れたことを祝ってちょっと良いレストランで御馳走までしちゃいます。面倒見の良い兄貴です。そして、ネクタイ着用のレストランでも袖なし革ジャンにネクタイという変態そのもののファッションを崩さないリッキーは、明らかにハードゲイです。
レストランにたまたま男連れのリンを見つけたジェイクに対して、ヘイズは名刺を貰ってこようかとからかい、リッキーは殴ってやろうかとケツを掘られた鉄砲玉みたいな事を言うのもキャラクターが出ています。
よく考えて下さい。もしレストランでこんなしょうもない理由で人を殴ったら、リッキーはせっかくのメジャーリーガーの地位を追われます。それでもやるというのですから、既にこのバッテリーの関係は強固その物です。
リッキーが1イニング4暴投のワースト記録を打ち立てファンに小馬鹿にされても、ジェイクがそれも話題だと言って慰めるのもなかなかです。これは確かに道理ですが、即座に納得できる選手はそう多くありません。女房役のナイスリードです。
一方で女にはだらしない癖に不器用なジェイクは、リンとの復縁の方法が分からずに悩み、ウィリーに図書館から後を着けて家を着き止めろと入れ知恵されて即座に実行しちゃいます。
流石にウィリーは盗塁王です。やっている事はストーカーですが、これで上手く行ったのですから大したものです。
インディアンスの奮起もまた、この3人が中心に描かれます。リッキーは三振を取りまくり、ウィリーは盗塁しまくり、ジェイクはクロスプレーで根性見せちゃいます。ここがこの映画で一番爽快感のある部分です。もはやこれは乱交パーティーです。
最尊ポイントは、リッキーがロジャーの妻のスザンヌと寝た時に、ジェイクが何故かリッキーの部屋に居る事です。
つまり、ジェイクはリッキーの家に出入りして勝手に冷蔵庫を漁り、あまつさえリッキーがグルーピー(追っかけのバカ女)と寝ていても放っておくような仲なのです。これはかなりゲイです。女関係はノータッチがゲイリアルなのです。
むしろジェイクは女遊びを大いにすべしという考えなのでしょう。そしてロジャーにNTRをかましてしまったと気付いて落ち込むリッキー。ここは女房役の腕の見せどころです。女人禁制のワイルドシングです。
とはいえこれは大事なので、ジェイクはリッキーにロジャーに捕まらないようにと忠告しますが、それはできない相談です。結局揉め事になります。
しかし、ヘイウッドと相対したリッキーにオールストレートでの勝負を挑ませるジェイクは、やはりリッキーの庇護者です。
一番自信のある球で勝負するというのはピッチャーの本懐ですが、失敗すると回復不能のダメージを負います。それを承知で相性の悪い相手にやらせたというのはジェイクも半端ではないのです。
初球で97マイル、2球目で背番号と同じ99マイル、そして3球目で101マイルで三振というのは、やはり野球の神様がこのカップルを祝福していたという事です。
そして裏の攻撃では2アウトでウィリーが内野安打で出塁し、2番打者のジェイクを迎えます。
2番打者にキャッチャーと言うのはかなり珍しい取り合わせです。いや、アメリカでは2番打者に送りバントより強打を求めるので、そういう事なのかもしれません。
とにかく、ウィリーはジェイクの空振りにアシストされて盗塁を成功させ、2アウト2塁になります。この場面で盗塁するのはかなりの度胸です。ルーキー離れしています。ジェイクと一緒ならこんなの怖くないのです。
そしてなんとジェイクはホームラン予告をします。ベーブ・ルース以来の事だそうですが、ピッチャーの返事はビーンボールでした。
それでも懲りずに予告ホームランを決めるジェイク。しかし、これは罠でなんとジェイクは三塁線にバントします。
ツーアウトなので当然ジェイクは一塁でセーフにならねばならず、ウィリーは二塁からホームまで帰ってくる必要があります。セーフティーツーランスクイズです。こんな場面でこれをやれと言われたら、川相だって嫌がるでしょう。半端じゃありません。
ジェイクは痛い膝を厭わず一塁に生き、ウィリーは韋駄天ぶりを十二分に見せてホームベースをかすめてサヨナラ勝ちを収めます。この瞬間、世界の全てがインディアンスの為に動いていたという事です。
ドノヴァンはレイチェルのごついSPとハイタッチ、ドイルはアシスタントと抱き合って大喜び、もはや球場がハッテン場状態です。ただ一人、当て馬女のレイチェルだけが呆然としています。
こんな中で駆けつけたリンと一人だけノンケに耽るジェイクはちょっとKYですが、まあ相方の表向きの幸せを破壊しないのが良きホモカップルです。皆祝福してくれました。
そう、野球選手などと言うのは1年の大半を留守にするたび商売です。所詮リンは箸休めに過ぎず、ジェイクは男達との友情の中で生きていくのです。
お勧めの映画
独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介し
『KANO 1931海の向こうの甲子園』(2014 台)(★★★★)(台湾風味)
『フィールド・オブ・ドリームス』(1989 米)(★★★★)(去年の野球回)
『ダイナマイトどんどん』(1978 大映)(★★)(一応野球映画だ!)
今までのレビュー作品はこちら