コロンビア大院生TA組合の乱
いまアメリカで熱いといえば労働運動。つい先日もNY西部のバッファローのスターバックスで組合結成。組合に厳しいので知られるAmazonでも、組合化の動きが話題。小売業、飲食業を中心に大量離職(quitters、こんな仕事辞めてやるぜマン)の時代とか言われたりもします。少々の賃上げをしても、人を集められない状態です。
コロンビア大でもTA(ティーチングアシスタント)組合のストライキがありました。昨年末に10週間におよぶストライキを敢行して、ほぼ要求を通しました。賃金引き上げ、健康保険に歯科治療も入れる、交渉には第三者を介在させるあたりが主要項目。けっこうエグいコロンビア弁護士団の切り崩しをしのいで、あっぱれな戦いぶりでした。
たぶんピンと来ないと思うので数点補足。
労働環境は黙っていても良くならない、勝ち取るべきものという理解がまだまだベースに生きているのがアメリカです。というより、労働運動をすっかり忘れた珍しい社会が日本と言う方が正確か。わたしもほぼ経験がないので、おもしろく見物しました。まずは交渉、だめならストライキ。Student Workers of ColumbiaはUAW(全米自動車労働組合)と組んで、ノウハウも学んでいたようです。学生は入れ替わりますが10年越しの経験もものを言ったか。
こういうストライキができたり、離職ブームが起きたりするところに、アメリカ経済の活気・活力もみておくべきです。ひたすらに賃下げ、スリム化で景気回復を図った日本とは様子がちがって、最低賃金を上げ、仕入れ値があがれば価格転嫁もでき、こんな値上がり耐えられんという声にはまた賃上げをしよう・させようとする。所得格差はべらぼうで、この間の価格上昇で低所得層は厳しく痛んでいますが、文句を言うだけの余力があり、文句を許容する雰囲気があります。(日本と比べるとこういう印象に。実態で言うと、このところ認知度はおおきく持ち直したものの、アメリカの労組の組織率は10%程度と最低水準のままです。)
そしてなにより、院生の待遇は大学の競争力を左右する一大事という理解があります。院生は学生ですが、研究者の卵でもあり、かれらの生活をどこまで支えられるかは大きな関心事。院生の質はその大学の研究力の源であり、良い学生を送り出せるかは大学間競争においても無視できない点です。そんなに冷遇するならよそに行っちゃうぞという圧力がかかります。TAは学部教育の質も左右していて、TA組合は保護者宛にこの点をアピールしていました。裕福なコロンビアがずいぶんと渋い対応に徹したのには驚きましたが、最後に折れざるを得なかったのはこのあたりだろうと推察。
彼我の違いに苦いものを感じつつ、勉強になりました。