ベンチャー留学で期待できる効果#1/新しい経験とネットワークではじまる、事業シナジー(農協観光×Agnaviのストーリー)
こんにちは。ベンチャー留学「Next Stage」事務局です。
今回は「Next Stageを導入することでどのような効果が期待できるのか」について具体的にお話させていただきたいと思います。昨年留学した卒業生の経験や成果を交えてお話させていただきますので、ぜひご覧ください。
期待できる効果、事業シナジー
「Next Stage」の事業内容については以前こちらのnoteでご紹介させていただきました。
人材育成や組織開発を進めるうえで、これまでの研修やセミナーとは違う、新しいアプローチでイノベーション人材を育成するのがNext Stageです。Next Stageを導入することで、主にこちらの効果が期待できると私たちは考えています。
新規事業のプロセスと、それに挑戦するスタートアップ企業の熱量を体感することで変革する【人材育成】
ホームとアウェイを行き来する越境学習によって、異なる文化や多様な働き方の体験が、所属元企業の中の変革の種火となる【組織開発】
留学先スタートアップ企業と所属元企業との連携や、サービス開発、対外ネットワークの構築に繋がる【事業シナジー】
今回は上記3つのうち、「留学先スタートアップ企業と所属元企業との連携や、サービス開発、対外ネットワークの構築に繋がる【事業シナジー】」についてご紹介します。
少し長い話になるので今回の記事の結果からお伝えすると、「JAグループ全国組織の1つである農協観光から、全国の日本酒を1合サイズの缶で販売するICHI-GO-CAN(※)を展開するスタートアップAgnaviへ留学して、長野県上田市の日本酒を商品化し東京駅で販売されるストーリー」です。また、この留学ストーリーで重要なのは日本酒が商品化した成果もそうですが、留学生が所属元企業に戻った後、今回の留学によって構築されたネットワークや経験を活かし、新規サービスの創出や拡大に取り組みはじめているということです。
さて今回、どのように商品化され、事業シナジーの芽が生まれ始めているのか、関係者が上田市に集まると聞きつけ、7月某日に事務局メンバーも現地へ同行し、Next Stageの効果について話しをお伺いしてきました。
(※)ICHI-GO-CAN
スタートアップ企業「Agnavi」が展開する1合180mLの日本酒を缶に詰めたブランド。
長野県上田市の地酒「福無量」をICHI-GO-CANへ
2024年7月。今年は暑い夏になるとニュースで連日放送しているのを聞きながら「上田市は軽井沢も近いし、少しは涼しいかな」と浮かれて到着した、期待を裏切る酷暑の上田市。
駅に到着すると、真田家全開の六文銭の甲冑がお出迎えしてくれました。
早速、今回のお酒を醸造している酒蔵さんへ向かい、皆さんで報告会を行いました。
今回の報告会に参加したのは写真右から、
商品化された日本酒「福無量」を醸造する酒蔵、「沓掛酒造の沓掛さん」。
長野県上田市の「酒米農家の柿嶌さん」。
Next Stageの留学卒業生「農協観光の梅澤さん」。
留学生の受け入れ先スタートアップ「Agnaviの玄さん」。
そして事務局メンバーの船木です。
(皆さん、良い笑顔ですね。私は撮影者としてこっち側にいます。)
まず、今回の企画が始まったキッカケですが、2023年11月に上田市で開催された「食と農のメガアライアンス」へ留学生の梅澤さんと、受け入れ先スタートアップAgnaviの玄さんが参加したことが始まりでした。「食と農のメガアライアンス」の実行委員長で酒米農家の柿嶌さんは、JA全青協(全国農協青年組織協議会)の元会長ということもあり、梅澤さんと以前から知り合いだったことから企画が動き出しました。
柿嶌さんの仲介で、上田市にある6つの酒蔵の中から、今回ご縁があり沓掛酒造さんとの企画が進みました。沓掛さんは「最初、抵抗があった」と話していましたが、そのような中でも「販路を広げ、上田市をPRしたい」という気持ちは提案者のお二人と同じでした。さらには日本酒を缶にすることは輸送面のメリットはあるが、自社で商品化するのは難しく、広告を企画したり販売経路を獲得したりすることも大変なため「その部分を一緒に出来るなら」と企画に参加してくださいました。
地元の酒米農家でもある柿嶌さんは今回の取り組みについて「上田市にあるコンテンツをもっと全国に広げたい」という想いからご協力いただきました。「上田市は頑張っている酒蔵が多いし、地元の酒米を使うことで生産者の顔が見える商品を作り、信用を作っていきたい」と熱くお話していたのが印象的です。
留学生を通じて間接的に関わって下さった、沓掛さん、柿嶌さん、お二人の想いや熱意が聞けたことは、とても貴重なことでした。
※「福無量」ICHI-GO-CAN商品化のニュース/信濃毎日新聞
卒業してからも活かされること、次のステージへ
さて、梅澤さん(留学生)がスタートアップのAgnaviへ留学するにあたり、当初計画されていた活動の目標は「日本酒ICHI-GO-CANの販路およびその認知拡大」でした。この活動計画を軸に留学中は業務されており、「福無量」のICHI-GO-CANも完成し目標は達成できたと感じています。新規商品の開発でトライ&エラーを経験することで、スピード感やノウハウも習得し、意欲的に取り組まれていました。
Agnaviの玄さんは「梅澤さんの取り組みで、生産者(酒米農家)にもスポットが当たる商品を作れたことはとても大きい」と感じているそうで、別の都道府県での展開や新しい販売経路など、次のステップへ繋げていきたいと話しています。
梅澤さんは、この経験を通じてICHI-GO-CANの商品化が最終的なゴールと考えておらず、「作り手(生産者)と造り手(酒蔵)が創る、地域でのストーリーを商品化する」という点にこだわっていました。
突然ですが、皆さんは上田市の魅力をどれくらいご存知でしょうか?秘境の温泉や山の上の絶景などたくさん魅力があります。
今回はその魅力の1つである日本酒を、Agnaviの技術によって形(ICHI-GO-CAN)にし、持ち運べる”地域の魅力“として都心で販売することに繋げ、「地域と都心の接点」を生み出すことができました。その重要性に梅澤さんは気づき、ICHI-GO-CANだけでなく魅力ある資源をコンテンツに変え、それをキッカケに上田市へのツアーや、日本酒や観光を軸にしたインバウンドへのアプローチなど、農協観光での新規企画に活かせないかと意欲的に取り組んでいます。地域や農業に寄り添う農協観光としての存在意義や、ビジネスチャンスがそこにはあると、梅澤さんは今回の留学経験から学ばれました。
このように留学経験で得た、ノウハウや思考が、次のステップへ活かせていることが、側で話を聞いていた私たちも十分に感じられました。梅澤さんだけでなく沓掛さんや柿嶌さん、上田市を地元とするお二人は「今回商品化された福無量を知ってもらって、上田市に観光や旅行に来てもらうモデルが作れるといい」と話しており、ICHI-GO-CANの商品を作って終わりじゃない、ということを話されていました。また、Agnaviの玄さんは「これをキッカケに上田市の姉妹都市であるダボスとの懸け橋になれないか」と海外展開へ目を向け関係者全員が今後のステップを視野に入れており、今回の商品化がキッカケで次のステージが見えてきたと、実感しています。
最後に
私たちが提供するNext Stageは人材育成、組織開発などの効果はもちろんですが、所属元企業の事業成長や事業連携なども見込める効果として期待できます。今回のケースのように、関係先やバックグラウンドの異なる人とのネットワークが構築され、さらにはスタートアップに直接入ることで双方の理解が進み、所属元企業との事業連携が促進されることはベンチャー留学で期待できる効果として重要な1つです。今回のケースはまだこれからですが、上田市やその他の関係先と連携し、次のステージへストーリーが繋がっていくことを期待しています。
次回は、Next Stageのプログラム効果の2つ目についてご紹介します。留学した卒業生のインタビューを交えてお届けしますので、ご覧ください。
(ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。)
沓掛酒造 Agnavi