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夢十夜(第五夜)

夏目漱石
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青空文庫より、
夏目漱石「夢十夜」の
第五夜を読みました。

《ふわっとあらすじ》

こんな夢を見た。

今は神話の時代のようである。
自分は戦で負けて、捕虜として
敵の大将の前に連れてこられた。

大将は、かがり火を自分に近づけて
死ぬか生きるかと問うた。
生きるとは降参したということで
死ぬとは屈服しないということだ。
自分は死ぬと答えた。

死ぬ前に
一目会いたい女がいることを願い出た。
大将は夜明けの鶏が鳴くまで待つといった。

誰かがかがりにたくさん枝を投げ込むと
ぱちぱち勇ましい音が鳴り、
激しく燃えて空が明るく見えた。

その頃、女は白い馬に飛び乗ると
かがり火を頼りに勢いよく向かってくる。

自分は一晩中女を待ち続けた。

すると夜明けの鶏の声がした。
女は仰向いて手綱を引いた。
馬の前足の蹄が矢のように岩に刺さった。

もう一声鳴いた。
女はあっと言い、今度は手綱を緩めた。
その拍子に馬は両膝が折れて前へのめった。
女と馬は岩の下の淵へ落ちた。


《語句解説》

神代(かみよ):神が治めていたという時代。
       日本神話では、神武天皇の前までの時代。
生擒(いけどり):人や動物を生かしたままでつかまえること。
藤蔓(ふじづる):藤のつる。
酒甕:酒を蓄えておくかめ。
虜、捕虜(とりこ):生け捕りにした敵。捕虜。
藁沓:藁で編んで作った草履。
   主に積雪地で使われる深沓。
篝火(かがりび):鉄製の籠の中で薪をくべて火をたく照明。
   またその鉄製の籠を篝という。
   主として屋外用のもので手に持って移動するときは
   松明 (たいまつ) を使い、固定するときは篝火を使う。

裸馬:鞍をつけていない馬。
(鐙は鞍の両脇につるして乗り手が足を踏みかけるもの)
空様に:空の方に。仰向きになって。
手綱を控える:馬に乗る時に手に持つ綱を引き締めることで
       馬が勝手に走らない様に操ること。
発矢(はっし):矢や槍などが勢いよく飛んで、
       物に突き立つさまや、刀剣など堅い物が
激しく打ち当たるさまを表わす語。
諸膝を折る:両膝を折り曲げて、かがんだり正座したりする。
天探女(あまのじゃく):あまのさぐめ。
          天照大神 (あまてらすおおみかみ) の命で
          天稚彦 (あめのわかひこ) の問責に来た
雉 (きじ) を、天稚彦に射殺させた邪心の女神。
          後世のあまのじゃくはこの女神のことともいう。


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音声配信アプリstand.fmにて、
「しんいち情報局(仮)」の
「朗読しんいち」を
担当させていただいています。

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