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夢十夜(第六夜)

夏目漱石
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青空文庫より、
夏目漱石「夢十夜」の
第六夜を読みました。

《ふわっとあらすじ》

こんな夢を見た。

鎌倉時代のはずの運慶が
今護国寺で仁王を彫っていると聞いて、
自分も山門まで行ってみると、
もう大勢人が集まっていた。

見物している者は、
みな自分と同じく明治の人間だ。

みながあれこれと言っている。
しかし運慶はそんな周りの批評には無関心で、
一心不乱に仁王を彫り進めている。
そんな運慶の態度がまた見物人を感心させた。

自分も
「よくああ無造作に思うように彫れるものだ」
と独り言を言った。
すると若い男が、
「あれは眉や鼻をノミで作るのではなく、
木の中にその形が埋まっているのを
ノミと槌で掘り出すまでだ。間違うはずはない。」
といった。
それを聞いて、本当にそういうものなら
自分でも簡単に仁王が彫れると思ったので、
さっそく家に帰った。
家には薪にするための木がたくさんあったので
それを片っ端から彫ってみた。
しかし、
仁王の形を隠している木は一つもなかった。

そうか、明治の木には仁王は埋まっていない。
だから今、運慶が生きているのだと思った。


《語句解説》

運慶:鎌倉初期の仏師で、日本彫刻史上にもっとも有名な作家。
護国寺:東京都文京区大塚にある真言宗豊山派の別格本山で、
    同派の関東における中心である。
    1681年(天和1)5代将軍徳川綱吉の生母桂昌院の
    発願で雑司ヶ谷大塚薬園の地に創建。
山門:禅宗の伽藍(がらん)の仏門,または寺院一般の楼門をいう。
仁王:仏法を守護する2体の金剛力士。
   1体は口を開き、他は閉じている(阿吽(あうん))。
下馬評: 責任のないところで種々の評をすること。またその評判。
五、六間:一間は1.81mなので、10mほど。
甍:屋根の一番高いところ。屋根の背。
車夫:人力車を引く人。
辻待ち:人力車などが道ばたで客を待つこと。
日本武尊(やまとだけのみこと):ヤマトタケルノミコト。
    『古事記』『日本書紀』の伝説で活躍する
     景行天皇の皇子で,わが国の古代伝説の代表的英雄。
尻を端折る:着物の裾をまくりあげて端を帯にはさむ。
委細:細かい事まで、万事。
素袍(すおう):素襖は日本の男性の伝統的衣服の一種。
       素袍とも書く。室町時代にできた単 (ひとえ)
仕立ての直垂(ひたたれ)。庶民が着用したが、
       江戸時代に平士・陪臣の礼服になった。
奇体:普通と違って珍しいこと。風変り。奇妙。
大自在:仏語。思いのままに自利他利の行を行えること。
妙境:芸術などの極めた境地。
まみえ:眉。
木挽:樹木を伐採すること。材木を大鋸(おが)で挽き割って、
   角材、板などに製材すること。また、その人。


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音声配信アプリstand.fmにて、
「しんいち情報局(仮)」の
「朗読しんいち」を
担当させていただいています。

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