松山城の緊急車両用道路 当初の工法自体に問題が? 土砂災害現場上端
7月12日早朝、松山城の北東側斜面が崩壊した土砂災害。愛媛県が8月8日、詳細な資料を公表した。7月29日開催の「第1回松山市緑町土砂災害対策技術検討委員会」の資料。ここには、被災概要や、土砂災害の最上部にある松山城緊急車両用道路での松山市の対応に加え、これまで松山市が公表していなかった、道路工事の図面なども入っている
緊急車両用道路の経緯
資料などを基に松山城緊急車両用道路のこれまでの経緯をまとめた。
2014年 松山城本丸防災設備等整備工事(緊急車両用道路) A社が3521万3450円で落札
2014年9月29日~2015年6月30日 道路工事
2014年12月26日~2018年2月23日 電気配管、送水管の埋設工事
2017年 松山城本丸防災設備等整備工事(緊急車両用道路) B社が1334万5084円で落札
2017年11月6日~2018年3月2日 舗装工事
2018年7月 西日本豪雨で路面にひび割れ
2018年7月19日~30日 ひび割れに充填剤を注入する補修工事
2018年11月28日~12月13日 城山公園(丸之内)道路補修工事
2019年10月29日~11月25日 城山公園(丸之内)本丸東部緊急車両道路舗装修繕工事
2020年8月17日 松山城の指定管理者が道路に凹みが生じていると松山市に報告
2023年7月9日 松山城の指定管理者が路肩法面の崩壊、ひび割れを報告
2023年7月12日 松山市が路肩法面の崩壊、ひび割れをブルーシートで応急対応
2023年10月2日~11月27日 城山公園(丸之内)災害復旧工事に伴う関係機関説明資料作成業務委託で地質調査を実施
2024年4月25日 城山公園(丸之内)緊急車両用道路災害復旧工事 2023万8000円でC社が落札
2024年7月2日~9日 不安定化した擁壁や埋め戻し土を撤去し、ブルーシートで応急対策
2024年7月12日 土砂災害発生
地質調査結果に重要な指摘が
このうち、地質調査結果で重要な指摘がされている。調査時点で道路と、隣接斜面で起きていた現象は
など。調査結果では、これらの原因について
重力式擁壁基礎地盤の支持力不足
終点側の崩壊地の影響(地すべり)
擁壁基礎底面の傾斜による縦断方向の微小なすべり
と指摘している。
脆弱な斜面に「重力式擁壁」
基礎地盤の支持力不足を裏付けるため、「簡易貫入試験」を実施している。今回の土砂災害で崩落した付近は、
「不安定土塊、急斜面上では崩壊予備物質となる。きわめてルーズで圧縮性が強く強度が低い。構造物の基礎地盤として不適」
とされる層が、深さ1~2メートルにわたって分布していると指摘している。
つまり、この道路を建設する際、不安定で崩壊する恐れがある土の上に、重いコンクリートの塊である「重力式擁壁」を乗せて、その内側に土を入れて、道路を建設したのだ。車両だけでなく、重機もこの道を通り、作業をしていた。「重機の重みで(路面に)凹みを生じた」との報告もある。
工学的には全くの素人だが、傾斜地の軟弱な地盤の上に重いものを置けば、地盤は傷み、崩れやすくなるのは当たり前だと思う。
最初の工法そのものが問題?
最初の道路建設の工法そのものに問題があったのではないか。それは、松山市が予定していた災害復旧工事で、側壁の工法を大幅に変更していることからも裏付けられる。完成直後から、補修工事や災害復旧工事が相次いでいる。最初から適切な工法で建設していれば必要なかった税金の投入ではないか。
災害直前と直後に撮影された二つの写真を見比べる。災害後、「不安定土塊」と指摘された、道路直下の斜面の土が、植生とともに流れ落ちている状況は明らかだ。道路と土砂災害の因果関係は、検討委員会で明らかにされることを期待する。
この詳細な資料を見ていると、3つの疑問が浮んでくる。本来ならば松山市が公表すべきものなのに、愛媛県が公表するという不可解。7月29日の委員会で出された資料にも拘わらず、これまで、なぜマスコミは報じなかったのか。愛媛大学の研究者グループの調査は、緊急車両用道路を対象にしていないように思える。
今回の土砂災害をめぐる、行政、マスコミ、研究者の動き。何か、ひっかかる。
(あぐりげんき)
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