近畿大学通信教育部図書館司書コース『図書館情報技術論』合格レポート
ここでは図書館情報技術論のレポートを公開します。
設題:図書館を最大限に活用するため、または利用を円滑にするためにはどういった情報技術に着目し、理解を深めるべきか。自身の意見を含めて論じてください。
下記講評です。
1はじめに
コンピュータの普及により情報化社会は進み、情報技術は目覚ましい発展を遂げている。その情報技術は図書館にも必要不可欠な存在となり、時代の変化に伴い図書館の利用方法も変化している。図書館を最大限に利用し、また利用を円滑にするということは、時間や空間に囚われず多くの人が簡単に図書館を利用でき、図書館の資料を必要最大限に利用できること、と考える。本稿では図書館の利用の促進や円滑化のために活用されている情報技術について着目して理解を深め、今後の図書館の在り方について考える。
2図書館における情報技術の活用
現代の図書館ではほとんどがコンピュータ目録となっていることを始め、ITなしでは機能しなくなっていると言える。図書館で主に活用されている情報技術について説明する。
■目録システム:OPAC
OPACとはオンライン蔵書目録のことで、簡易検索画面と詳細検索画面がある。近年ではウェブ上で利用できることからウェブOPACと呼ばれ、図書館に置かれている端末だけではなく、スマートフォンや自宅のパソコンなどからも蔵書検索ができる。また、貸出システムと連携されている図書館も多く、時間や場所を問わず本が探せ、貸出、予約ができる。複数の図書館の蔵書を横断的に検索できるOPACも増え、図書館利用の円滑化・効率化になくてはならない情報技術といえる。
■自動貸出機
簡単な操作だけで自動で本が借りられる機器のことで、利用者は有人のカウンターに並ぶことなく効率的に本が借りられ、プライバシー保護の観点からもメリットがある。
■ICタグ
ICタグは正式にはRFIDタグといい、図書などを識別するICチップを埋め込んだタグである。図書に貼付したバーコードに読み取り機器を接触させる方法に代わって、全国の図書館で導入が進んだ。これにより、先述の自動貸出機で利用者は複数の本を簡単に借りられるようになり、蔵書点検も効率化できることから、利用者のみならず図書館員の働き方にも大きく影響した技術といえる。また、このような、非接触・非対面で利用を可能とした技術は、近年の感染症の流行のような有事の際にも安心・安全に図書館を活用できる情報技術のひとつといえる。
■電子図書館
電子図書館とは、「電子化された資料を蓄積保存して、利用者が来館あるいは来館しなくても、コンピュータを通じて必要な情報や資料を検索し、利用できる図書館」と『最新図書館用語大辞典』で定義付けられている※1。2007年に公共図書館として初のweb図書館サービスを実施した千代田区立図書館を皮切りに年々増加している。電子出版制作・流通協議会によると、2022年10月時点で電子図書館(電子書籍貸出サービス)を実施しているのは、436自治体、電子図書館344館である※2。ウェブ上で借りられ、返却期限が来たら自動で閲覧できなくなるなど、貸出業務の簡素化のほか、返却忘れや紛失も防げるというメリットがある。また、来館不要で、音声読み上げや文字の拡大表示ができるといった機能は、高齢者や障がい者などへの利用支援も実現している。導入コストの問題や著作権など未だ課題は多いが、多くの利用者が時間や場所に囚われず図書館を利用できる電子図書館は今後も導入する図書館が増えると考えられる。
3まとめ
以上のように図書館は様々な情報技術を取り入れることで時間や場所の制約を受けずに利用・活用できるようになった。自館や場所の制約を受けないことは、障がい者、高齢者など、立場や属性を問わず、図書館を利用できる人の間口を広げたといえる。
しかし、貸出や蔵書管理など、情報技術に活用によって図書館員の業務が効率化されたことは、利用者と図書館員との接点を少なくしたともいえる。事実、私が利用している公共図書館、●●●●図書館もICT化が進み、非常に便利ではあるが、それゆえに図書館員と話す機会はほぼない。情報技術による便利な図書館は、その地域に好影響を与えるが、本と利用者を繋ぐのはあくまで人(司書)だ。“島まるごと図書館構想”を掲げ、離島の図書館改革として注目される島根県海士町図書館の主任である磯谷氏が言うように「最低限の本と、本を活かし、つなげる人がいれば図書館サービスは提供できる」※3。新技術の導入や話題性に胡坐をかかず、独自のアイデアで発展できる図書館が求められると考える。例えば、電子図書館の利用や、自宅でのOPACの利用に不安がある高齢者や障がい者を対象とした、機器の使い方の講習会を開いたり、情報リテラシー向上のためのイベントの開催しなども有効ではないだろうか。時代の変化や地域の課題に応じて新たな技術の導入や活用の仕方を考え、誰も取りこぼさすことなく、あらゆる人が情報技術を活用して図書館を利用できるよう図書館を発展させていくことが重要であり、その発展に貢献できる司書を目指したい。
※1図書館用語辞典編集委員会編『最新図書館用語大辞典』柏書房 2007
※2 公共図書館電子図書館(電子書籍サービス)導入館(2022/10/01版)
Electronic_Library_Service_Implementation_Library_20221001.pdf 2023/1/22閲覧
※3猪谷千香 『つながる図書館-コミュニティの核を目指す試み』ちくま新書 2014 P227
以上。