ウクライナでのオフショア開発、ウクライナ人とのプロジェクトを成功させるには?
今回は趣向を多少変え、日本企業がいかにしてウクライナ、または東欧でのITオフショア開発、およびウクライナ人とのプロジェクトを成功させるかというテーマを考えてみたいと思います。かなり辛口の論評だということ閲覧前にご留意ください。
筆者の体験談:
筆者は海外の大学でITを学び卒業したのですがその際永住権を取って現地にとどまり、IT企業で働くか、それとも日本に帰って就職するかの2つの選択肢に揺れていました。筆者がいたオーストラリアではその当時IT系の学位を持っていれば自動的に永住権が取れる移民法が存在していました。(もうとっくに無くなっていますが)最終的に筆者は日本へ帰国し、東京で就職することを選択しました。その理由を説明します。
筆者は日本でIT業界の待遇が悪いこと、社会的ステータスもあまり高くないことは十分耳にしていました。しかし東京の外資系で英語を駆使して就職することで欧米並みの待遇(給与、休暇)を得られることを友人の何人かから聞いていたのです。この選択は未だに筆者の人生で最高の決断であったと思っています。就職氷河期と言われる時期ながら結果的に大手ITコンサルと外資系金融ITの2社から内定を頂くことができました。外資系金融のITを選んだのは単純に破格の給与を提示されたのと休暇が長くとれた(欧州系だったので)からです(笑)。その後3社外資系金融ITを渡り歩きましたがヘッドハントされるたび給与が上がっていき、30代を前に優に年収は1本を超えていました。休暇もきっちり取っており旅行に行きまくっていました。
筆者が何より楽だったのは日本にもかかわらず外資系の金融ITは外国人社員がほとんどであり、業務をすべて英語でできたことでした。筆者は外国生活が長かったため、日本企業の上下関係、ビジネスマナー、その他すべてに嫌気がさしていたからです。Eメールから上司とのやり取り、ミーティング、海外とのコンフェレンスコールまでほぼすべて英語で業務をこなす生活を10年送った後、起業で成功し、欧州に移住したのが3年前です。
とある日系IT企業の社長との会話
先日ウクライナ人の理数系大学新卒を日本に送り込み、日本語を教えてエンジニアとして客先に送り込む事業をしている某日系IT中小企業の社長と話す機会がありました。その際あまりの意識の乖離、ギャップに椅子から転げ落ちそうになりました。日本のIT業界の問題点および暗部を垣間見た気がしました。
某社長の論点をまとめます:
‐日本のIT技術者は世界最高レベルで優秀なんだ!→ ではなぜ日本のIT企業は世界でボロ負けなんでしょうか?
‐日本に来たらウクライナ人でもベトナム人でも日本語で仕事するんだ!→御社のウクライナ人社員は2年いて未だに日本語検定3級程度ですよね・・?それで複雑な技術仕様書日本語で書けるんですか?
‐日本のIT業界でAIやマシンラーニングなんて高尚な技術は全然必要ないんだ!→ いや今私が外部顧問としてお仕事させていただいているお客様企業はばりばりAI使ったプロジェクト進めてるんですがこれは夢かまぼろしなんでしょうか?
‐ウクライナはオフショア開発には向いてないんだ!→うーん。はいはいそうですか。もういいです・・。
お話の途中であまりに認識のギャップのためギブアップ、提携のお話は丁重にお断りさせていただきました。
最初に言っておきたい点は、ウクライナ人は西欧人や北米人よりはアジア人的なメンタリティを理解しますが、それでもやはり欧米人です。日本語を学ばせて日本のブラック企業で使えるように社畜化するのは経営者にとって都合が良すぎます。日本語は欧米人には非常に難解な言語であり、日本はビジネス文化から何から何まで欧米とは全く違います。アジア諸国でさえ、グローバルスタンダードの経営をしており、日本企業とはこの点が根源的に違うわけです。ウクライナではIT技術者はステータスの非常に高い職業であり、皆高い職業意識とプライドを持って仕事をしています。それを無視して経営者がこき使うとすぐに辞めてしまうのは火を見るよりも明らかです。そもそもそんないばらの道を選ぶIT技術者なんていないでしょう。優秀な技術者なら西欧か北米、オーストラリアなどで引く手あまたなんですから。
私はもしウクライナ人IT技術者が日本に行って仕事をしたいならまず技術を徹底的に磨き、その上で日本の外資系もしくは大手IT企業で社内公用語を英語にしているところ(楽天、Softbankなど)だけに絞ってに就職しろと勧めます。その理由は私がもし欧米人だったら絶対そうするからです(笑)。
日本のIT業界の問題点:
日本IT業界が世界の趨勢から取り残され、競争力を失っている理由を筆者なりに以下にまとめてみました。(辛口注意)
‐英語話さない。外国人エンジニアに日本語を強要する。オフショアするなら自分たちが英語覚えろ。
‐日本流の仕事カルチャーを押し付ける。
‐給料が低い。日本はもはやほかの欧米先進国に比べ給与が高い国ではなくなっている。(次回データをもとに詳述します)冗談のようですが下手するとオフショア開発発注元でなく発注先になった方がいいレベルの会社まであります。
‐日本ではIT技術者は社会的ステータスが低いため、性格的にねじ曲がった人間が多い。(完全に偏見。例外もちろんたくさんいます!!)
‐会社がブラック(中小)労働環境悪すぎ。裁量労働。サービス残業。労働時間長い。給料低い。パワハラ。いじめ。いびり。(小学生かっ!)
‐多重下請け構造(エンドクライアントが直接採用+発注すべき。それかいわゆる大手IT企業が下請けに丸投げしないで自分たちで開発すべき。行っても1次下請けアウトソーシングまでにすべき)
‐オフショア人材を安い労働力としてしか見ていない。ウクライナはもはや安いだけの労働力を提供する国ではなく、グローバルにAIなどの最先端技術を有した人材獲得競争に巻き込まれています。
‐ITに金をかけない企業が多すぎる。モノづくり重視、金融とITは虚業と言っている間に世界から取り残されていく衰退国家日本。
‐最初からグローバルに勝負していない。縮小している日本のマーケットしか見ていない。
‐シリコンバレーなどの最先端技術を見ていない。小手先の技術しかつかっていない。それなら日本か東南アジアで結構です。ウクライナまでわざわざ来るな!
結論:
客の意識が変わらなければ無理。オフショアを成功させるなら日本企業側の努力が必要。日本の企業倫理、ガラパゴスのカルチャーを教え込むのではなく、日本のIT産業がボロボロなのを反省し、グローバル化を進めもっと努力しろ。
Ago-ra IT Consultingへのご連絡は下記まで:
hiroshi.shibata@ago-ra.com
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