男性の間質性膀胱炎、慢性前立腺炎に対する新たな鍼刺激部位の探索
こんにちは💡
11月に入り、ここ京都も気温が急激に下がって参りました!
寒暖差の大きくなるこの時期、毎年のことですが…
当院では、頻尿症状もさることながら、会陰部周辺の痛み・不快感の悪化を主訴に来院される患者さんが増えており、やはり寒さが下部尿路に与える影響は大きいのだろう、と感じるところであります。
家を出る前、寒さ対策バッチリ備えていきましょう!
さて今回は、男性の間質性膀胱炎、慢性前立腺炎に対する、鍼施術のターゲットとなる部位について、神経の走行を元に考えてみたいと思います💡
当院では、間質性膀胱炎や慢性前立腺炎に対しては、下図に示す通り、
基本的には、仙骨部(第3後仙骨孔部)や陰部神経刺鍼点に対する徒手刺激 / 鍼通電刺激を中心に施術にあたっています。
その効果は前回の記事、当院で行った観察研究の結果に示す通りで、
概ね海外の論文報告と同等の効果が得られています。
難治性の慢性前立腺炎に対する治療の選択肢の1つになると、個人的には考えています。
一方、当然のことながら、臨床上の課題はまだまだあり、新たな鍼治療方法の検討の余地もあります。更なる臨床効果の向上に向け、日々取り組んでいるところです。
課題のポイントとして…
男性の間質性膀胱炎や慢性前立腺炎においては、女性症例に比べ、睾丸痛、射精痛、会陰部痛は特異的であることが挙げられます。
(いわゆる陰部神経領域の症状が女性よりも広範囲にわたる)
このような男性特有の症状では、先に挙げたような仙骨部鍼刺激や陰部神経鍼通電のみでは、イマイチ満足度の高い効果が得られないケースもしばしばありました。
頻尿や膀胱痛は良くなったのに、睾丸痛、会陰部・尿道の不快感は残ったまま!
といったことがあるのです。
そこで最近では、近年の海外の論文報告を参考に、新たな鍼刺激ポイントを考察し、実際に追加して施術にあたっています。
よく海外の慢性前立腺炎に対する鍼の臨床研究では、
CV1(任脈上の会陰穴)というツボが用いられ、非常に高い臨床効果が報告されています。。
まさに経穴名の通り、「会陰部」にあるのです。
ただ、臨床上、脱衣して会陰部に直接刺鍼…
というのは我々術者としても、少々憚られるところです。
そこで、着衣のまま、これに近い刺激方法はできないだろうか?
と考えました。
刺鍼部位は以下に示す通りです。
◉で示すポイント、坐骨結節の内側から刺鍼し、矢印のように前方方向(睾丸の方向)に向かって、斜めに40mm程度刺入していきます。
(前立腺方向に垂直に施入している訳ではありません。)
坐骨結節の内側ですので、この手法は着衣のまま、伏臥位で従来の陰部神経鍼通電と併せて刺激を行うことが可能です。
従来の陰部神経刺鍼点では再現が困難なことが多いのですが、この手法では、睾丸、会陰部、肛門、尿道に通電刺激がダイレクトに感じられるということが最大のポイントです。
上図の神経分布で考えてみると…
陰部神経の分枝である、会陰神経、陰茎背神経(その先の後陰嚢神経)、下直腸神経を直接、鍼通電刺激できるため、このような刺激が再現できるのだろうと考えています。
新旧いずれの刺鍼ポイントも、陰部神経の支配領域ではあるのですが、従来の方法と明らかに刺激感が異なり、これまでの治療に抵抗する会陰部痛や睾丸痛、尿道痛が改善する症例を経験しています。(特に睾丸痛に良いと感じています。)
おそらく、痛み・不快感の原因となっている神経局所への通電刺激が、鎮痛効果や前立腺周囲静脈の循環改善へ繋がっているのだろうと推察されます。
烏丸いとう鍼灸院 院長:伊藤千展