ポッドキャスト#007収録しました
女友達エミリーとはじめたポッドキャスト。
「#007_人生を変えてくれた出会い(小泉八雲、藤ヶ谷太輔)」を収録しました。
今日は語り尽くせなかった小泉八雲との出会いについて書き足してみようかと思います。
熊本にて(2015年夏)
週末に行われるという会議に出る夫にくっついて行く形で、熱気のこもった熊本の地をまだ小さかった娘を抱っこしながら大きなスーツケースをひきずって歩いていた。午後一番の会議に出る夫とは空港から乗ってきたバスを降りてお昼ご飯を食べて別れた。「九州は暑い」のはわかっていたが日差しが熱気が関東のそれとは違う。熱帯・温帯とはこういうことかと溶けそうになりながら、歩くのが嫌いなもうすぐ3歳の娘を前に抱え互いの汗で腹がぐっしょりになって歩いた。明日の昼の会議が終わるまで娘と二人、熊本市内をぶらぶらして時間を持たせないとならない。
子供が生まれてから久しぶりの旅行は夫の出張ついでの九州旅行となったが、夫が昔住んでいたという博多に行くのが目的で熊本ではどこに行こうなどとあまり考えてなかったのが本当だった。まして、この暑さで娘を抱えひとり熊本城の天守に向かう気にもならなかった。とはいえ、動線の良いコンパクトな作りの空港に降り立った瞬間から歓迎されているようなあたたかい空気が漂っていて熊本が好きになりはじめていた。娘と二人で乗る市電も小さな娘を見るとすかさず声をかけ席を譲ってくれる地元の人たち。きれいに頭を丸めた凛々しい顔つきの男子高校生にも「どうぞ、お子さんだけでも(座らせてあげて)」と声をかけられてひとり感激した。なんて素晴らしい人たちが住む街なのか熊本は…!妊婦だろうがチビを連れていようがおいそれとは席を譲ってもらえない東京の過酷さを思うと熊本は天国のような場所だった。「本当の心」を持った人たちが住んでいる。シャワー通りの洋服店でもおしゃれな店員さんは気取らず話しかけてくれたし、現代美術館では小さな子供向けの素晴らしいプレイルームがあってそう混雑もしていないから数時間遊び続けた。なんていうか、安全で安心で優しくてきれいでおしゃれで…熊本最高じゃん!天国じゃん!と叫びたいくらい好きになっていた。
その夜、駅中の郷土料理屋で辛子蓮根や馬肉の煮込みを食べながら明日はどこに行こうかと観光案内を見てると、広告欄の『小泉八雲 熊本旧居』が、わっ!と目に飛び込んできた。他にも広告はあったのに不思議。「耳なし芳一の人だよね・・・?」なんだかわからないけどここに行った方がいいような気がした。ちょうど今日行った美術館の近くだし、行ってみようかな。
ホテルの部屋に戻ってぼんやりと見ていたテレビ番組「ファミリーヒストリー」では中山エミリさんの曽祖父は地中海マルタ島からやってきた、と言っている。続けて『同じ時代に同じような足跡を辿る人物として小泉八雲もいる』と。あまりこういうことは大きな声では言いたくないが「呼ばれている」としか思えなかった。
次の日、お座敷に上がるのにサンダル履きでは失礼だから夫の靴下を借りて行った。ちょうど鶴屋百貨店の裏手に小泉八雲の旧居はあった。現代ではそうお目にかかれない日本家屋って普段なら作法に自信がないので気後れしてしまうところなのに、とてもオープンな雰囲気で娘も喜んで入りたがった。娘と二人靴下を履いてから上がらせてもらうことにした。
きれいに手入れされた室内は心地よい風が通り抜けて、涼を感じる作りになっていた。心地良い、気持ちのスッキリとする…熊本に来て感じていた土地や人々からの素晴らしいエネルギーと完全に一致する空間がそこにはあって、懐かしいというか「お帰りなさい」と言われているような遠い美しい記憶が少しだけ蘇ったような気持ちになったりした。
小泉八雲の物語を絵本にしたものが置いてあって、娘に雪女やいなむらの火を読んでやった。そしておばあちゃんの家に遊びに行ったようにして娘が鬼ごっこをしたがった。「きれいなおうちだね」娘が言ったので本当にそうだと思った。本当に手入れの行き届いた、気持ちの良い、きれいなお家だった。
それからそれから…
「100de名著」の録画を見つつ、そこからは怒涛のように小泉八雲の世界にハマっていった。どうしたらこんなに美しい視点で物事を感じ取り、美しい言葉を生み出すことができるのだろうか?どうしたらそんなにも端を生きるものに光を当てることができるのだろうか?この人は何を見抜いているのだろうか?手に入るだけの書き残された本を読み、その後すぐ秋には島根県松江にも行った。小泉八雲の玄孫・小泉凡さんと「日本の面影」の訳者・池田雅之さんの公開講座があると聞けばウキウキして聴きにいったし、雑司ヶ谷霊園のお墓や大久保の小泉八雲記念公園にも行った。日帰りでひとり新幹線に飛び乗り焼津の小泉八雲記念館まで行ったのはなかなかハードだったな。
簡単に言うとオタクと化しているけれども、何がわたしをそうさせるのかはわからない。わからないからわかりたくて勉強なんて全然得意じゃなかったのに古事記を読んで少しでも小泉八雲の見ていた世界を知りたくなった。日本とは何か?神々の国とは何か?わたしはなぜこの時代に、日本に生まれたのか?
日本人であることの有り難さを教えてくれた小泉八雲に恥じないように日々を生きる。いまわたしにできることをしっかりやろう。
では、また来週で〜す♪