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大正時代から愛される老舗のとん丼を喰らい尽くす【グルメハンター嵐005回】

前回。
深淵極まるセレブの世界に足を踏み入れ、その尖兵たる高級カニ缶の前に大敗北を喫した僕。

<前回はコチラ↓>

その心境はまさに、FF4で月世界に行ったときさながらの絶望感でありましたね。 

ザコでこの強さか、と。
完全にレベルが足りてないぞ、と。

こんな苦渋を嘗めさせられるくらいなら、僕はキミのカニミソが嘗めたかった。

皆さまこんにちは、高級カニ缶に負わされた心の傷がようやく癒えてきた男こと、グルメハンター(自称)嵐です。

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というワケで今回は、ただひたすらに庶民の味を求めています。
己の身の丈に合った、いまのレベルに合った食べものが、心の奥底から欲っすぃんです。

僕が今いるのは春の日差しが心地いい新宿の街角。何故、新宿にいるかといと、今の僕が心から求めるお店があるからです。

遡ること2日前、手元にある現代最高峰の文明の器機におわします大賢者(グーグル)様に問いかけました。

オッケーグーグル。イニシエより庶民の胃袋を満たしてきたありがたい食事処はないかい?

―――解。
今年で開業100年を迎える老舗の定食屋があります

か、開業100年っ⁉️

てことはアレだ、1921年創業!
えーと、1921年ってコトは……大正時代!? 100年前っていったら大正10年なワケで明治が終わって10年たっているワケです(当たり前)。令和の前の平成の前の昭和の前なワケです(当たり前)。

凄いっ! 開業から4つ目の御代にわたって庶民の胃袋を満たしてきたとは…
それほど長く庶民から愛されてきたとは…コレは今回の僕の飢えを…魂の渇きを補完してくれる存在に違いないっ!

その店の名は「王ろじ」さん。  老舗のとんかつ屋さんであります。

すぐに担当編集に対し、「次回のハントの獲物が決まったぜ」とカッコいい文章をラインで送りました。既読スルーされたので、2時間後くらいにちゃんと詳細を送りましたところ、冷たく一言だけ「了解です」と返事がきたので、愛嬌たっぷりの「よろしくおねがいしまっす!」的なスタンプを送り、2度の夜を枕を泣き濡らしつつ越えて、今、そのお店の前に僕は立っております。

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実はこの「王ろじ」さん、アジト編集部から歩いて10分もかからないところにありました。100年の歴史を刻んできた老舗がこんな近くにあったとは…。
灯台下暗し、とはまさにこのこと。僕自身、新宿という街をウロウロするようになって20年以上の時が経ちますが、このお店の存在を今日まで知らずに過ごしてきたとは…我が不明を恥じ入るばかりですな。

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お邪魔にならないように気をつけつつ、お店の外観の写真を撮影。めちゃくちゃポップかつアバンギャルドな店名のフォントが「昔ながらの新しさ」というコンセプトを過不足なく表現している様に舌を巻き、今からその味に舌鼓を打つのだな…と夢想していると、小さく舌打ちが聞こえたので驚きました。その舌打ちは店前でモタモタしている僕に対して担当編集がしたもので、よく見ると担当の目は餓狼のごとき獰猛さを宿しており、彼の空腹が限界に近いことがわかりました。お腹が空きすぎてるからって不機嫌になるのはヤメてください。

…さて、気を取り直して歴史ある暖簾をくぐり、あたたかみを感じる引き戸を静かにすべらせて、店内へ。

こじんまりした店内は清潔感に満たされていて、都会の喧騒からも隔絶されており、静かに悠久の時を紡いできた印象を受けます。

飾らずに言うなら「落ち着くなあ」というのが率直なるファーストインプレッション。

現在の時間は…お昼どきをいささか過ぎた頃。にも関わらず、店内ではたくさんの人が王ろじさんの料理を堪能しています。100年後のいまでもしっかりと庶民に愛されつづけていることが、味覚に頼らずとも視覚ですぐに分かろうというものです。

とはいえ、こちとら生粋のグルメハンター(自称)。
たしかにお店の雰囲気は120点満点。
この空間に足を踏み入れた瞬間からもうすでにちょっと好き感出ちゃってますけど、食うモノを食わずして評価などくだすことはできぬっ!
というワケで早速、大賢者に教えてもらった名物と言われているアレを注文してみました。

それがコチラ!

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ど~~~~~~~~~んっ!!!!!!!


齢40を過ぎてから、思ったことを脊髄反射で口にしてしまうオヤジギャグのアビリティがビシバシ高まってきているので、丼を見て「ど~~~ん」とか書いちゃいました。

しかし見てください、この堂々たる姿! 王者の貫禄を感じませんか。王様の登場シーンの擬音は「ど~~~~んっ!」を使うって僕は決めてるので「ど~~~~んっ!」って書いちゃうのも無理からぬことなのです。

さて、注文した料理の名、その名も「とん丼」

 平たく言うなら「カツカレー丼」なワケでありますが、最初に目を惹くのは丼の上に豪快に並べられたカツ×3でございましょう。
コレはメンチカツ…か?

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 幼子の拳くらいはあるようなゴロッと感。

これは見るからに食べ応えがありそうで口に運ぶのが楽しみであります。
そしてまた、興味をそそられるのが今回、とん丼のお供として一緒に注文したコチラ。

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とん汁であります。

豚ばらを使ったベーコンと玉ねぎを炒めたものを麹味噌で仕上げた一品…ということで、長らくとん汁を愛好してきたアタクシも初めて口にする組み合わせのオリジナリティー溢れる意欲作。

というワケで、まずはウォーミングアップがてら、舌と胃袋を温めるべくまずはこのとん汁を一口すすってみます。

ズズッ!
「⁉️⁉️⁉️」

こ、こ、コレは美味いっ!!!
想像以上ににんにくが効いているのですが、コレが麹味噌の風味と驚くほどに合う!
そして炒めたベーコンと玉ねぎの香りのかぐわしいことといったら!!
他の食べ物に例えるのは、グルメレポート界では邪道の極みと言われておりますが、僕はプロではないのであえて今回もその禁忌に触れさせていただきましょう。
あたかも全体の風味はまるで「味噌ラーメンのスープ」のよう!
でも、味付けが濃すぎないのでコレはどんぶりにも定食にも合うハズ…。
いきなりのスーパーバイプレイヤーの登場。
とん汁の最優秀助演俳優賞ノミネートに、主演俳優への期待が否応なしに高まります。

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緊張の面持ちで主演俳優受賞の瞬間を待つ主演俳優・とん丼氏

頂きましょう。とん丼を。ルゥから。

スプーンの先に一口ぶんを掬い、丁寧に口元へと運んで、舌先でゆっくりと転がしてみる。

…。
……。
………。

うまっ!
うんんんんまっっ!!!

ルゥは丹念に煮込まれたであろう王道の欧風ビーフカレーで、心地よい甘味と酸味が舌先と我が食欲を優しく刺激する。
そしてそのカレーを喉に送り込むと、口の奥からゆっくりと辛みがせり上がってくる。
辛さのタイプとしては、ベンジョンソン型ではなくカールルイス型ですね。
スタートダッシュをキメるタイプではなく、後からしっかりと伸びてくるタイプ。
舌先への刺激が控えめなので辛味が苦手な人でも食べられそうですが、口腔全体でしっかりと辛味を感じられるため、決して甘口ではない絶妙なスパイス調整ですね。
これなら子供から大人まで食べられる…。
そりゃ100年も愛されるワケですな。感服しきりでござる。

さあ、そしてカレーのお堀を攻め落としたあとは、一気に本丸まで攻め入りましょうぞ!

相対するは3つの天守閣。
スプーンで掬いあげると見た目通りのずっしりとした重量感

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すわ、一口にてっ!

サクッ!
もぐもぐもぐもぐ。
…。
……。
………。

うううう、うんまぁっ!
うんまあああああああああっ!!!!!


コレは本当にメンチカツ…なのか?

これはもう、コレ自体が「カツサンド」と言っても語弊がないくらいの、怒涛の食べ応えではないか!!
とにかく衣になっている粗挽きのパン粉の食感が秀逸すぎて、このカツをほおばるだけでもう十分すぎるほどに満足なランチが成立してしまうほど。
ただ、そんなしっかりとした衣ではあるのですが、カラッとサクッと揚げられているので、水分や油っこさを微塵も感じず、重さを全く覚えない!
誇張じゃなく、本当にいくらでも食べられそうな感じです。
そして何より特筆すべきはこのメンチカツのタネ!

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いわゆるミンチ…ではなく、こちらも肉の食感が極限まで際立つように荒々しく挽かれた肉なのですが…。
その肉肉しい食感が、我々動物の遺伝子に刻まれた「肉にかぶりつく歓び」を否応なしに呼び覚ますっ!!

「俺は肉食系男子だ! うぉぉぉぉぉん!!!!」

…と、思わず叫びたくなる美味さ。

ここ最近は草食系男子が好みそうなVTR…そうですね、言うなれば「隣のお姉さんが奥手な僕を見かねて」シリーズなどを専ら鑑賞しているアタクシではございますが、やっぱり根は肉食系男子なんだ…と己を奮い立たせてくれる美味さとでも言いましょうか。
ちなみに「隣のお姉さんが…」シリーズは今考えた架空のシリーズです。ご了承ください。

「隣のお姉さん」は置いておきまして、何より感動したのが、メンチカツの調理技術。
この肉塊に均一に火を通すという所業は、素人ながらにもその難しさが理解できてしまうようなレベル。
「肉が硬くなりすぎないように。でも決して生焼けにはならないように」
この難解すぎる二律背反をあっさりと成立させてみせる絶妙な火加減の調整には、大正時代より連綿と受け継がれてきた匠の技を感じずにはいられませんでした。

もう…全てに…感動だわ…。

いや~、今回のとん汁、そしてとん丼…と、どちらも長年に渡って我々庶民に愛されてきた理由が、しっかりと分かる逸品でございました。

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御馳走様でした。(注:托鉢をしている修行僧ではありません)


ちなみにこちらの王ろじさんは100年の歴史を持つとんかつ屋さんでございますが、とん丼自体は40~50年前にスタートしたものだそうです。

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まさに看板に偽りなし!

王の名を冠しつつも(ちなみに店名は「路地の王様」からきているとのこと)庶民の味方的な老舗が紡ぐ懐かしさと新しさのハーモニー…それが見事に表現された一品がとん丼ということでしょう。

次は定番のとんかつセットを食べにこよう。
いや、エビフライセットも捨てがたいな。
いやいや、あえて絶品のルゥだけを楽しむインディアンカレーも贅沢だよなぁ。

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お腹いっぱいなのにメニューを眺めているだけで次回への妄想が止まらない。
これから足繁く通うであろう名店との出会いに、ただただ感謝であります。

なお、これだけの驚きと歓喜に満ちた今回のグルメハントでしたが、なかでも特に驚いたのはコチラでございました。

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丼と受け皿が一体化してるとな⁉️

………洗うの、大変だよね。

<本日のお料理と評価>
とん丼……★★★★★(満点)
<総評>
大正かつ屋に浪漫の嵐。てゆーか本気でおススメ


文:嵐(ツイッター→@anotherarashi


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