『テイルズオブアライズ』が予想以上に良かったって話(ネタバレあり)

一般人のお気持ち表明。

ネタバレ全開で愚痴も一部あるので読みたくない人は引き返して下さい。

履修済みはシンフォニア、ラタトスク、ヴェスペリア、グレイセス、エクシリア、エクシリア2。

アライズ前のテイルズシリーズについて最近のゲーマーが真っ先に連想するのはやはりゼスティリアの炎上騒動だろう。自分も例外ではない。

ゼスを直接プレイした事はないのだがいわゆる『アンチがなんか騒いでる』程度の炎上とは別格の騒動で、当時多くのファンが幻滅していく光景を見た。プロデューサーは例の『んほぉ〜このゲームたまんねぇ〜』コピペで24時間擦られ、その光景は前作エクシリア2の完成度の高さから最新作に期待していた自分に『買わない』という選択をさせるに十分なものであった。

さらにイラストレーターの藤島氏とコスプレイヤーのねこむ氏の不倫騒動やら声優コネ採用やらソシャゲ化やらなんやらとゲーム外での場外乱闘が大きくなっていく内に自分はテイルズシリーズへの興味を次第に失っていった。テイルズというシリーズはもう死んで2度と蘇る事はないコンテンツなのだろうと。この流れで当時見放したのはおそらく自分一人ではないだろう。

「ベルセリア」の評価が悪くないのは知っていたが邪道な設定とゼスと同じ世界観らしいという事から認識が覆る事はなかった。今後はコンテンツの供給が完全に途絶えることはなくともニッチなファンだけで切り盛りしていくのだろうなと想像していた。

2021年9月、そんなテイルズから何か新作が出るらしいという噂を聞いたが正直全く関心がなかった。マキマさんじゃないけど「死体が喋っている」くらいな感じ。

しかし2ヶ月後、なんだか様子がおかしい。アライズの好評がちょくちょく耳に入ってくる。TwitterのTLにもアライズを楽しく遊んでる人達がいた。疑問に思いつつ探るもレビューサイトやAmazonなどの評価も非常に高い。これはおかしい何かが起きているぞ。自分はアライズを購入し40時間かけてクリアした。その時感じた内容はこうだった。

「これ……"テイルズ"じゃん……」

動く屍かと思っていたら生者だった。結論から言うとかなり良く、なおかつ自分の知っているテイルズ像に近かった。という訳で前置きがクソ長になってしまったが項目別に良かった点と微妙だった点を書き殴っていく

【グラフィック】

まずは見た目からだが…マジですごかった。「自分は令和のテイルズをプレイしているんだな」って実感できた。見た目が美しい事を文字で説明するのは難しく実際に見てもらった方が早いだろう。マジでヤバい。

グラフィックの進化がヤバすぎる反面、逆にアニメーション側には限界が見えてきた。

テイルズシリーズの特徴の1つにゲーム内にアニメが仕込まれてる事が挙げられる。まるでTVアニメかのようにOP曲と共に映像が流れプレイヤーの没入感を上昇させる。またOPのみでなく作中のストーリーの抑えどころでもアニメが流れ、それはアライズにおいても同様なのだがアライズにおいては1つ気になる所があった。

終盤の作画がちょっとヘタっているのである、しかもかなり重要な局面で。さらに言うとそのヘタってるアニメパートが結構長い。

テイルズのアニメーション制作は元々は今のufotableとは違いプロダクションIGという会社が担当していた。当初は良かったのだが作品が増えるにつれ手抜きというか低品質化が目立ってきた。個人的にはグレイセスがその極致であったように思える(グレイセスOPを見てもらえれば察すると思う)

グレイセスの次回作のエクシリアから大人の事情なのか現在のufotableに交代したが、ufotableがFataシリーズや鬼滅の刃で業界随一の作画スキルを持つ会社である事は説明不要だろう。

だからこれはufoが手抜きしてるという話ではなくアニメ媒体の限界だと解釈したのだが(そもそも毎秒神作画を維持してるアニメも見たことないし)アニメというのは全て人間が描いている以上どうしても品質にムラが出て常に同じレベルになる事はない。しかし3Dは最初に作り込むものなのでそうではない。

アライズのアニメが終盤ヘタれる中であっても3Dの贅沢感は衰える事なく健在だった。最後のヴォルラーン戦では3Dとアニメの立場が逆転する光景を見せつけられたように思える。

OPは2つとも神作画でとても良かった。

【戦闘システム】

アライズの戦闘ではいわゆるMPに該当する概念がなく、スキルはAGという時間経過で回復するポイント次第で撃ち放題といった形になっている。通常攻撃やスキル攻撃は威力が低くこれのみで敵を倒すのは困難だが、コンボを繋げていく事で仲間との強力な連携技が発動でき、カッコよく〆る事ができる。テイルズはキャラゲーでもあるのでこれは非常にアリだと思った。

また戦闘中に強敵相手に必死にプレイしていると味方が何をしているかというのがどうしても見えづらくなるのだが、ブーストストライクという味方を一時的に召喚するシステムがあり、これが割と高頻度で発動できるおかげで味方との連携を感じやすい。

また回復だけはCPというポイントを使用し、これをパーティ全体で共有する。CPを使用して回復技が撃てるのはシオンと最後に加入するテュオハリムのみなのでヒロインであるシオンの優位性が輝く。

アライズにおいては回復が非常に重要視され攻略の要となっている。グミ1つの物価が装備アイテム並みに高くボスへの回復ゴリ押しは困難である。主人公も『自分を傷つけながら炎の剣を振るう』という設定なので回復の難しさはアライズの世界観とも噛み合っているように思えた。賛否両論だが個人的にはアリ。

【ストーリー】

だいたい良かった。あえて強引に過去作で表現するとシンフォニアを現代寄りに仕上げた様な印象を受けた。

ストーリーはクリフハンガー的で序盤の『掴み』と『ヒキ』を重要視している印象を受けた。

まず火山地帯の様なフィールドで記憶喪失の奴隷という最底辺の状態から物語がスタートする。これまでのテイルズにない始まり方でありオリジナリティで人を掴む。

その後ヒロインや抵抗勢力と出会い、各地を旅して強大な力を持つ支配者(スルド)を打倒していくというのが第一部の主なストーリーだ、王道で悪くない。

また飽きさせない様に工夫しているのもよく伝わってきた。

例えば1人目のスルドはシンプルに恐怖と力で奴隷を支配しているけど2人目以降のスルドは単なる暴力ではなく奴隷同士の密告制度で支配していたり、奴隷の怒りを利用して操っていたり、宗教じみた支配や、そもそも支配していない者もいるなど多種多様だ。それでも展開上どうしても4人目くらいからは若干マンネリ感が出始めていたように見えるので良いバランスだったと思う。

こういう反体制もののストーリーって実は長期作品と相性が悪いのかもしれない。

全てのスルドを倒すとOPが変わり第二部に突入する。ゲーム起動後に放置しているとテイルズシリーズではOPが流れるのだが第二部以降はここもOPが第二部のものになっていたのが芸が細かくて好感が持てた。

第二部はそれまで焦点が当たらなかったレネギスや、レナ本国の種明かしが行われる。

要約すると実はレナは最初から滅んでおり中継都市に過ぎなかったレネギスがレナ人の拠点の全てであり、さらに言うとレナ人自体が改造されたただのダナ人であり、本当のレナ人はヘルガムキル(宇宙人)であるというオチはSF的には面白かった。

ただ「強大なレナ本国とどうやって戦うんだろう」とかレナ本国の未知のフィールドを冒険する事を想定していたプレイヤーには世界観が小さく見えてしまって残念だったかもしれない。

また後半はどんどん世界観の種明かしが行われ先が気になるストーリーになっているものの、パーティ内でレナの常識が崩されて困惑するのが生粋のレナ人であるデュオハリムだけというのが気になった。

リンウェル、ロウ、キサラはダナ人なので種明かしされると驚きはするものの所詮は敵方の事情だし、アルフェンとシオンは経歴が特殊なのでやはり驚きはするものの当事者の一般のレナ人ではないので驚愕以上の感情は伴わない。プレイヤー視点でもダナから始まりほとんどの期間はダナでの旅なので感情移入しやすいのはやはりダナ人だろう。

となると重大な種明かしの場面で当事者としてのリアクションが取れるのはサブキャラのテュオハリムのみな訳で、ここは設定上当然とはいえ没入感の面ではややもったいなかった様に思える。アビスくらい主人公本人を絶望させろという訳ではないけど、アルフェンの過去や苦悩に感情移入できるかというと正直うーん…な感じだったのでここで何か欲しかった感はある。

人さらいや人種差別を平気でやるレネギスのモブを大量虐殺してしまったんだ、とか実は全て茨のせいだったんだよ、とか言われても個人的にはあまり刺さらなかった。

またラスボスがやたらスケール小さく見えるのとエピローグの余韻がなさすぎるように思う。

ラスボスはいわばレナという惑星自身な訳だけど(衰退してるとはいえ)それを実体化したにしては外見がショボくないだろうか。第一部のビエゾ戦のイフリートとかヴォルラーンの前座の融合するズーグルとかの方が正直遥かに強そうに見えた。しかもデザインのみならず実際なんか弱かったので正直あまり印象に残らなかった。

実質的なラスボスはヴォルラーンだったけど一度撃破してるせいなのか第二部では第一部のようなカリスマ性は感じられなかった。

最後はレナを滅ぼさずに双世界が融合して終わってエンディング直行。まさかの2人は幸せなキスをして結婚エンド

エモさ重視なのかもしれないけどアライズは道中でも丁寧に事象を説明したりキャラが感想言ったりする作品だったので個人的には双世界融合後にも何か言ってほしかった感。

なんだか愚痴多めになってしまったが第1部は非常によく出来ているという感じで、第2部は謎解きの爽快感はあったもののやや疑問が残る箇所もあった。

【キャラクター総評】

アルフェン、実直で誠実な王道系主人公。もしゼスみたく失敗してたら「シオンとスケベしたくて頑張ってる主人公」とか揶揄されてた気がする。そうならなかったのはアルフェンのキャラ付けとアライズという作品が成功した証拠だろう。

シオン、固定ヒロイン。唐突にカワイイ面を見せたりするもののストーリー上、カリカリしてる期間の方が長くて個人的にはあまり好きになりにくいと思ったキャラ。強く自立する女性像で最近のテイルズ的だなと。

ロウ、パーティに1人はいるおちゃらけ系。最初はストーリー展開もあって頭良い真面目系に見えたが打ち解けていく内にペルソナ5の竜司みたいになっていった印象。

リンウェル、顔芸。

キサラ、パーティのお母さん役。戦闘では高頻度でオーバーリミッツを発動してダメージを稼ぐので使いやすかった。反面ブーストストライクの扱いは汎用性が低くて難しかった。女騎士だから泣き声が汚い。  

テュオハリム、推しキャラ。多分人気投票したら1位になると思う。褐色で東南アジア風(?)な衣装という奇抜な外見もさることながら敵将のはずのスルドが仲間になるというインパクトが絶大。空気は読めないが他者への配慮に長けており、王者としての素質と気品に溢れている。職場の上司に1人は欲しい。それでいてプライベートでは音楽オタク、歴史オタクで金銭感覚も無いというお茶目さも兼ね備えている。あまりに人気キャラクターとして完成されすぎている。

【総評】 

不満はゼロでないもののテイルズシリーズ再始動にふさわしい1品でした。次回作にも期待が持てたんで買うと思います!

以上、お気持ち表明でした。

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