one park festival 2020
プロローグ
7月4日土曜の夜
「あ、そうや！本当やったら今日ワンパークフェスティバルやったんや！」
カウンターでラフロイグ を飲んでいた恐竜博士が突然声を上げる。
「うん、そやで」
「僕チケット払い戻しにしないで持ってます」
「俺もや！中止やのうて延期やからな…博士、後ろ気付いてる？」
カウンターの中でグラスを磨きながらカウンター後ろにあるテーブル席を顎で示す。
「あ、やっぱり⁈もしかしたらそうじゃないかと思ってたんですよ！」
そうか博士は気付いてたのか。
それを聞いていた小浜でゲストハウスやってる青年
「俺は一旦払い戻ししてもらって来年また買います！んでまたここに来て飲みますわ！」
「はははは、頼むよ…サクちゃん後ろ」
「え？なんですか？」
後ろのテーブル席を振り返る。
「え？後ろがどうしたんすか？」
「気付かんのか？」
「え、なにが？なにが？」
「後の席の4人組ワンパークの仕掛け人、ソイルの社長もいるで」
「え！まじっすか！」
そう…
本当なら7月４日の今頃はフェス1日目が終わり興奮冷めやらぬ人達でこの店が溢れかえっていた事だろう。
憎きコロナさえなければ…
7月5日日曜日
日曜の夜、気心の知れた常連さんを相手に雑談していると一本の電話の電話が入る。
昨日も来ていたワンパークの面々が今日も来てくれるらしい。
そういえば今日はワンパークフェスティバルでライブ配信があった日。
打ち上げにどこかでゴハン食べた後に来てくれるんだろう。
しばらくして昔からの知り合いで元伝説のDJ…今は駅前で洋服屋やってるヒデちゃんが来た。
「あ、ワンパーク？」
「ええ、とりあえず一杯飲ませてください！僕、運転手してたんでまだ飲んでないんですよ…えっと竹鶴をハイボールで」
「運転手？どこ行ってたの？」
「トックリ軒です」
東郷にあるトックリ軒は知る人ぞ知る鶏足で有名な店。
でもトックリ軒は町の人を相手にした庶民的な食堂…名店ではあるが普通は大事なお客さん迎えるのに使うような店ではない。
流石わかってるなぁwww
「あ、そやから運転手。熱々の鶏足前にしてノンアルはきついなぁ…ご苦労さん」
竹鶴のハイボールを出して喋っていると後続がドヤドヤと店に入ってきた。
総勢6名。
「クマさんどうも。またお世話んなります」
「いらっしゃい」
ファーストオーダーをとってくる。
ブルックラディ ジ オーガニック2010、ラフロイグ 1815などなどをハイボールで。
（ハ、ハイボール⁈…）
どれも入手困難な限定品…僕なら勿体なくてとてもハイボールでなんて贅沢な飲み方は出来ない。
「かんぱーい」
そこから今後のワンパークについての熱いトークが繰り広げられる。
2019…福井で一大センセーションを巻き起こしたone park festival 2019…
今年はよりスケールアップしたイベントとなりそうだと期待を集めながらコロナの影響で開催出来なかった2020。
だが熱く語る彼らの顔には一片の曇りもない。
そんな時期はとうに通り越してしまったのだろう。
いや、（あーあ、残念…無くなっちゃったな）などと思っているのは僕らお客さん側だけ…ひょっとしたら彼らにはしょげていた時期などないのかもしれない。
彼らの目は常に前へ前へ向いていて肩を落としてる暇など無いのかも…
熱く語り、グビグビ飲む。
また語ってはグビグビ。
全てハイボール。
流石にペースも落ちてきて僕にも話を聞く余裕が出てきた。
（えええーーーっ！そんな事考えてるのか⁈スゲー！凄すぎる！）
もしそんな事が実現出来たら日本初！
いや、世界にも類を見ないフェスになるじゃないか‼️
夏、フェスといえばonepark！
となり
日本中から福井に人が集まってくるぜ‼️
聞いてるだけで鳥肌が立ってきた。
終盤、社長が言う。
「さぁ、これでクマさんがまたどんな投稿をしてくれるか」
「ダメーッ、絶対投稿しちゃダメッ！この企画他に取られちゃう！」
…という訳で彼ら首脳陣がどんなことを考えているか、その内容についてここに書くことは出来ない。
だが…
僕たちの想像のはるか斜め上をいくとんでもないことを考えているとだけ言っておこう。
仕掛け人の1人…というか全ては彼の思いつきから始まった仕掛け人の中の仕掛け人、トールくんが言ったので印象に残った言葉がある。
「2021のone park festival…ただ1年延期になったのではなく2年がかりで準備したからこそ出来たと言えるものにしなくちゃいけない」
かーっ、熱いねぇ！
カッコイイ事言うね！
one park festival 2021
が楽しみでしかない！
2021 夏…福井に伝説が生まれる❗️
彼らが帰った後、冷蔵庫のTANSANは残り一本だけだった。