東京通勤圏の感覚 2023年11月【4】
なぜ都心ではなく郊外に住むのか
【前回記事】
ほし氏さんと入った喫茶店で、私は自分が住む街・所沢(埼玉県)の話をした。電車で池袋まで約20分、新宿まで約30分でアクセスできる。浅草にだって1時間程度で来られる。私は交通至便の恵まれた街に住んでいると。
しかしほし氏さんは、1時間というのは結構遠いんじゃないかという反応。私はここで、東京通勤圏に住む人特有の感覚について考えた。
彼らは長時間電車に揺られて東京に行くことに慣れている。早い人は子供の頃から、毎日東京に通い出す。地元の学校に通う若者も、休日には東京に遊びに行く。そして東京の大学に進学し、東京の企業に就職する。
こういうわけで、このエリアでは東京までのアクセスの良さがステータスになる。たとえば所沢は、冒頭にも書いたように、池袋まで20分、新宿まで30分というのが自慢になる。
しかし池袋に行きたいなら池袋に住めばいいじゃないか。新宿に行きたいなら新宿に住めばいいじゃないか。なぜ彼らは東京に近いということを自慢して、東京そのものに住まないのか。
いくつかの理由が頭に浮かぶ。まずは単純に、その郊外の街が出身地だから。パートナーの出身地という場合もある。親戚が住んでいる、友人知人が住んでいる、ということもあるだろう。まとめると、元々その土地とつながりを持っているから住んでいる。
あとはお金の問題。都心の家は高い。それでいて狭くて騒がしい環境になりがちだ。都心の広くて静かな家というのは、高級住宅だ。庶民の経済力で、良い住環境を求めると、自然に郊外に住むことになる。
では私はどこに住みたいか
まず気候のいいところに住みたい。世界には年間通して日本の春や秋のような気候の地域がある。でも外国で暮らすということは並大抵のことではない。
国内においては、夏涼しいところは冬寒い。沖縄は年中暖かいが、東京街歩きを趣味にしている人間が沖縄で満足できる気がしない。私は東京周辺に住み続けたい。
上野に住んで、足繁く博物館や美術館に通う生活を送りたい。でも上野の街は好きではない。上野公園周辺は好きだが、そこ以外は肌に合わない。
下町は自分の性格とマッチしない。風景としては惹かれるものの、立ち止まらずに通り過ぎたい。物を買う時に会話したくない。「人情商店街」などいらないのだ。
好きな繁華街を挙げるなら池袋だ。把握できるサイズの都会で、あまり気負わずにいられる感じがある。ジュンク堂の裏辺りはもう住宅街だから、すぐに人混みから逃げられるという安心感がある。
そこへいくと新宿は大きすぎる。自分の脳のキャパシティを超えている。池袋では疲れたら雑司が谷に逃げ込めるが、新宿にはそれがない。
23区は道が狭い。どこを歩いても窮屈だ。やはり住環境は郊外がいい。
立川はいい街だ。でも所沢から立川に引っ越すというのは、どうもおかずを1品加えただけみたいな感じがする。郊外から郊外に引っ越すのは面白くない。
そうすると、やはり池袋か。しかし所沢から急行でたった23分だ。電車賃も356円(IC)で住む。行きたければいつでも行ける。引っ越したいとまで思えない。
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