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蝶々のお舟

父が乳業会社の専属獣医だったため
農村地帯で生まれて育ちました。

近所は皆、農家だったため
近くに八百屋がなかったので
東京育ちの母でしたが、庭で野菜や
果物や花を育てていました。

幸いなことに、母は園芸が大好きで
苦にせず楽しんでいたようです。

庭には、イチゴ畑もあって
町のケーキ屋さんが売ってほしいと
交渉に来るほど、大きくて見事な
イチゴがたくさんとれました。

実のなる季節には、保育園から帰ると
お友だちと一緒に、小さなかごを手に
毎日、イチゴ狩りをして
お腹いっぱい食べました。
とても楽しい思い出です。

野菜畑にも、季節の野菜を
沢山育てていました。
オクラの花がとても綺麗だったのを
覚えています。

背の高いひまわりや矢車草
コスモスなど、いつも季節の花が
たくさん咲いていました。

私はとうに忘れていた
母に聞いた思い出話です。

母は牡丹の花を植えていて
花が咲くのを心待ちにしていたそうです。

ある朝、花が咲いたので喜んでいたところ
牡丹の花のある草陰で、私のスカートが
ちらりと見えたので、様子を見に行くと
咲いたばかりの牡丹の花が
首からぽっきり折られていたそう。

それから、私が牡丹の花を家の前の
小川に捨てたのを目撃したので
てっきり証拠隠滅を図ったと思い
問い詰めたところ、悪びれもせずに
言うことには

「綺麗なお花を川に流したら
蝶々さんがお舟だと思って
乗りに来てくれるかもしれない」

母は、一瞬言葉に詰まるも
牡丹は綺麗なお花だから
取って遊んじゃだめと言ったそう。

すると
「レンゲやタンポポは
首飾りや腕輪にして遊ぶのに?
みんな綺麗なお花だよ」と
答えたので、返答に困ったそう。

母は、確かにレンゲやタンポポだって
何の先入観もなく初めて見たら
綺麗な花だと思うだろうなと
納得したそう。

でもとにかく、牡丹の花は
母の大事な花なので
取って遊ぶのは禁止になった
ということでした。

豊かな自然に囲まれて育った
子供の頃の思い出は
とても幸せな日々として
今も心に残っています。

写真は、母と弟と一緒に
私が2歳の頃に父が撮ったもの。
手にしているお菓子は
セロファンの感じから
みすず飴かな?





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