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2024/11/2-11/11 古代ローマの遺跡とプーリア州を巡る旅②


11月2日土曜日(一日目) 自分の存在理由

オーバーブッキングで一悶着ありつつも(前回の記事参照)、無事に飛行機に乗り込む。
離陸時、水平飛行にうつる直前まで台風の影響かかなり揺れた。

私は飛行機恐怖症である。
飛行機に乗る予定ができると、数ヶ月も前から墜落する夢を見てうなされることがしばしばある。
十数時間かかるフライトでも一睡もできないことがほとんどである。

しかし、私には強い味方がいた。
飛行機内の端末でプレイできる2048というゲーム。
いわゆるクソゲーである。
やはり離着陸時にはクソゲーに限る。

あらゆる不安が和らぎ、目の前の課題を解決することだけが自分の存在理由になる。
航空機事故に遭う確率などどうでもよくなる。
その点、2048とspooky defenceというゲームは、良クソゲーであった。

ボーイング機に乗るのは久しぶりな気がする。
やはり、エアバスとは明らかに異なる。旋回時の機械的なゆったりとした動きはエアバス特有のものなのだろう。ボーイング機は、今まさに飛行している、という感が強い気がする。
ボーイング機の方が揺れやすい傾向にあるという体感がある。

初めて食べるエディハド航空の機内食は和食を模したもの。
フィッシュを選ぶと、鮭と茹でられて強い塩味をつけられた野菜、白ごはんが出てくる。洋風に味付けした幕の内弁当といったところだろうか。
いつも利用することの多い安価であることに定評のある某中華系航空会社の機内食は、どこを目指しているのかわからない料理が出てくる。
エディハド航空の方が正直、比べものにならないほど美味しい。


眼下に眠る街

アブダビ空港は近未来のテーマパークのようだった。
柱、天井は全て有機的な造形。安定的でいて軽やかである。ザハ・ハディドの設計かと思ったが違うようだ。中東の設計会社のようで、モダニズムを無視するような装飾的な建築はもしかするとイスラム教のアラベスクと何か関係があるのかもしれないと思う。

夜のフライトはよく晴れて地上の夜景が鮮明に見えた。
紅海からスエズ運河の海峡を越えて、地中海へ。
きらびやかなカイロの街の海の向こう、夜光虫の群れのように帯状にぼんやりと光っているがテルアヴィブの街だろうか。
その南側にはガザがあるはずだ。
闇の中でひっそりと眠っているように見えるその街には今も苦しんでいる人たちがいる。
日本に住んでいると遠い外国の出来事のようだが、同じ地表で起きている出来事であると言うことを決して忘れてはいけない。


ローマ到着

夜が明ける前のローマに着陸する。
朝の六時がこれほど暗いとは思わなかった。
しかし、遠い空の彼方には既に青い薄明があるのを見つけることができた。
ローマテルミニ駅行きの電車に乗る頃には辺りはすっかり明るくなり、朝の新鮮な空気で満ちていた。
やはり少々値は張っても、空港、駅を直接繋いでいるレオナルドエクスプレスが便利である。
田園風景が続く。郊外の風景にもどこか鷹揚さがあってイタリアに来たのだという感じがある。

本日から二泊する予定の宿は駅から徒歩五分ほどのRoman Residence(ローマンレジデンス)。
映画に出てくるような味のあるエレベーターは、見た目の通り、故障中で動かない。古い建物だった。
3階の扉についた呼び鈴を三度ほど押すと、女性が顔を出す。荷物を置くのね、と聞かれたのでうなずいた。事前に連絡してある。
部屋を使えるのは十二時からであるという。
一通り説明を終えて、出発というときに不機嫌そうに見えた女性の顔が安堵で綻んだ。
英語でのコミュニケーションに不安があったのだと思う。
ドアがしまる直前、彼女が言う。
「ポケットに気をつけて、すりがいるからね」

さて、朝のローマへ繰り出すとしよう。

続く

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