【編集後記】古内しんごさん
初めて試されたライターの語彙力
古内さんとのオンラインインタビューは順調に終わった。
録画から文字起こし、要点をまとめ、構成していくのはある程度、頭の中でできていた。
特にリード文は子どものご飯を用意しながら亀の餌も同時にという離れ業をやっている時に浮かんだ。亀も子どももそっちのけでメモする。
私はたいてい、こうである。深く考えてる時には浮かばない。
よし!このリード文から一気に行こう。構成と小見出しと概要をパソコンに残し、翌朝、子どもが起きてくるまでが勝負で一気に書く。
時間制限がある朝の方が書けるのだ。
出来た!しんごさんに早速送った。一安心。
しかし、戻ってきたファイルには「栗秋さま ご添削」の文字。
「え、私が添削されてしまうの?」ファイルを開けるとびっしりと赤文字。
あ~、これがライター界で言う「終わりなき赤入れとの闘い」か。
よし、挑むぞ!燃えてきた。しんごさんの熱い赤文字を注視する。
「主催」→「運営」に。はい、その通りです、すみません、修正。
「つみきの活動2年半→「3年半です」はい、すみません。
このように小さい修正はありがたかった。なぜなら私はフリーランスで編集や校閲があるわけではないからだ。
読み進めていくうちに見えてきたもの
おや?一か所、かなり赤入れがある。読んでから録画を見直す。
この言葉はインタビューの時に出ていない。
きっと初稿を見ているうちに思いがあふれ出てきたのだろう。
そういうことは人間だれしもあることだ。
さて、困った。これは記名記事だ。つまり、私に編集責任がある。
私の言葉に書き換えないといけない。
文章と録画で見る古内さんの表情を見比べているうちにわかったことが出てきた。
①古内さんは講演などでしゃべりなれている。その為、古内さんの赤い文字は講演などで身振り手振りを付けて話すからこそ、オーディエンスを巻き込むのだ。
②古内さんが考え込むような表情で紡ぎ出す言葉の、もっと奥にある思いを引き出したかった。
ここが勝負だ!
この古内さんの、根底から湧き出るたくさんの思い、それは「子ども達への愛」なのだが、それを短く言い換えるのが私の仕事だ。
初見の人に分かりやすい言葉で、古内さんの熱い思いが文面からそこはかとなく出る言葉を悶々と辞書を片手に考えた。
熱い思いが文面から出ると、読者は付いてこない。ひとりよがりな文章は敬遠される。
そして古内さんが実際、ガツガツと人に踏み込む人ではないから、人となりも伝わるように書きたい(とても謙虚で繊細な方)
彼の中にある、教育への思いを、彼さえも気付かぬ言葉で書く。
今までの「つみき」活動を通して、彼の心の軸となった様々な言葉を思い浮かべ、どれが一番ふさわしいのだろうと「なぜ?なぜ?」問い続けた。
難しかった。正直、今までで一番難しかった。
お互い妥協しないように、日数をかけて何回も訂正のラリーをした。
とにかく細部までこだわった渾身のインタビューとなった。
古内さんも私も、持っている光を放ち尽くした言葉のやりとりは刺激的でした。楽しかったです。ライターでもないのに、ここまで言葉を大切になさる方は珍しい。だから、きっと「繋がるつみき」なのだろうと思った。
大変、勉強になりました。古内さん、この場を借りて感謝いたします。
そして、偶然にも私に賞をくださった東京新聞社様、初めての他社記名記事が御社の公式noteであったことも嬉しかったです。
これからもよろしくお願い申し上げます。
ライター 栗秋美穂