見出し画像

【編集後記】たいら栗園 廣田祐子さん

私と廣田さん(愛称ボス、息子が命名)と出会ったのは2023年の秋のことです。その年の夏、なぜか息子が栗にハマっておりました。
(常に何かに没頭している子です)

栗が食べたいのかと思いきや、栗の王様と言われる「利平栗」の本物が見たいと言うのです。

今更、言っても仕方ないのですが、いつも他の子とは視点がずれています。食べたいのではなく、見たい。見てどーすんの?と私は思いましたが
一度、夢中になると解決するまで私を開放してくれないのです。

そして私に関東近辺で利平栗を扱ってるところを探してくれ、と。
まだiPadも与えてなかったので、不承不承、私がスマホで探しました。
「見つけた」と言うや否や、なんと息子は「たいら栗園」に電話したのです。

「僕は利平栗のファンなんですけど、社長さんはいますか」
そして電話に出てきたのがボスでした。

利平栗は扱っているけど、収穫はおそらく9月中旬であること。
来る前に収穫が可能かどうか、もう一度確認の電話をすることを約束して、その日の電話は終わりました。

9月中旬、忘れているかと思っていたのですが、息子はまたボスに電話をかけ、栗収穫が開幕した最初の週末に初めて飯能を訪れました。

存分に利平栗を取り、その木の前で記念写真も撮りました。
あっという間にアルバイトの子とも仲良くなり、栗のサイズ分けのお手伝いもしました。

次はボスへのインタビューです。
ボイスレコーダーを使って、いろいろと質問します。
栗栽培で一番の苦労はなんですか。
利平栗の上に付いているモフモフはなんですか。

そして大満足で帰京すると、オリジナルの「栗図鑑」を作成開始です。
そこには、栗の種類、出荷の工程などが詳細に書かれており、その時期に食べた栗スイーツの原産地も記していました。

国産栗はとても高価であることや、「栗」を謳っていても、多くのスイーツに含まれているのは「栗ペースト」であることも分かりました。

その後、何度か息子と一緒にたいら栗園を訪れました。
ワークショップで栗きんとんを作ったり、ある日は生き物好きの息子のために、川の生態に詳しい大学の先生まで呼んで待っていてくれました。

またある時は、サイエンス分野に詳しいご婦人と園内の植物観察をして、椿の種で笛を作る方法も教えてもらいました。(今年も作ってますよー)

その後、息子はこの栗園で月に1度、一人で電車に乗ってアルバイトに行くようになりました。

収穫期の終わった栗園の整備や雑務をこなし、最後には「給料袋」と書いた封筒に1000円をもらって帰ってくるのでした。

ボスは他にも「会わせたい人がいる」と飯能在住の芸術家の元へ息子を連れて行ってくれたり、これを読ませてくださいと本を下さったりしました。
「生き物の死にざま」というその本は大人向けで、ルビがないため、夫が毎晩、読み聞かせていました。今でも愛読書のひとつです。

今思うと、2年前の飯能でのボスとの出会いが、息子の「生き物植物への飽くなき探究心」の原点だったと思います。

今回、改めてインタビューをさせていただき、聞きたかったことに答えて頂きました。

栗秋「なんでうちの子をバイトに雇って、あんなに良くしてくれたんですか」

ボス「ただ遊びにおいでよって言ったら来ると思う。だけど一緒に遊ぶとかじゃなくて、なんか目的を持たせてモチベーションを上げたら、本人やる気も出るだろう。私もなにかを任せるっていうことは前の仕事でやってきて、不得意ではないし。人は任せられたものを完遂するのはいいこと。だったら当然小学生といえども対価を払った方がいいなと思いまして。じゃあバイトじゃんと思いまして」

栗秋「どうしてそういうふうに誘ってくださったんですか、あの子を」

ボス「いや、クリ坊がなかなかその、『行き場がない、理解されない』という言い方美穂さんがなさっていて。彼のその有り余る能力とか好奇心とか行動力ゆえに学校からはじかれて。本来、はじかれるべきじゃない子がはじかれてるっていうのが、なんかそれってどうなのって思いましたし、子供の時にそういうことで思ったことって、ずっといろんなことに影響するじゃないですか。
君はすごく素晴らしい、面白いし、豊かな子なんだよっていうのを分かってもらえる場を一つでも増やした方がいいと思った。美穂さんもすごく頑張ってらしたから、他にも当然(居場所は)あるでしょう。でもその中の一つに、うちでもそういう感じは持ってもらえたらいいなと思ってですね」

栗秋「ボスはフリー・スクールも開けそうですね。ありがとうございます。そういう思いがあって、息子にいろんな出会いや刺激をくれたんですね」

ボス「はい、別に子供だからっていうのは何も関係ないと思ってまして、その、彼の感性とか彼の好奇心を誰が満たしてくれたり、誰が火をつけてくれたりするだろうなと思ったときに、普通の人ではダメというか、専門家や芸術家になるわけです。たまたまそういう人が飯能にいて、私も知っていたという。そしてその方達もすごくクリ坊に興味を持ってくれましたよね」

栗秋「そうなんです。教科書とか学校の先生じゃ満たしてくれないんです」

ボス「子供だからっていうのは多分彼の中にもないですし、私の中にもないです」

栗秋「そういう、自分を認めてくれる大人が増えていったことで、あの子の人間不信も減り、今では学校も順調にっていうか、なんかいろいろありながらも、ちゃんと行っちゃってるんで、なかなかアルバイトに行けないんですけども」

ボス「そのうち時給を上げてとか言ってくるかもしれないですけど(笑)」

栗秋「夏休みとか忙しい時、結構戦力になると思いますので」

ボス「はいお願いします」

栗秋「あの子が生き物、植物、今でもすごい家で飼ってるんですけど、原点はボスとの出会いだったなと」

ボス「思います。あとM先生やHコーチ、K島先生との出会いね、大きかったね」

栗秋「私、一度M先生に怒られましたもん。息子の着眼点がすごいとこを付いてたんで、これをコンクールに出せば、絶対に入賞する、と思って、実験方法の具体的なことを聞いたんです。そうしたら『あなたがやりたいの?あの子がやりたいの』と聞かれ、言葉に詰まっていたら『絶対にダメ、教えない。才能ゆえに親がやらせた子の多くが伸びていない。あの子の科学の芽を摘むなら教えない』とケンモホロロに(笑)
なんか、別に私は学校休んでもいいよと思うんで、Hコーチと一緒にまた息子と植物や生き物を探してほしいなぁなんて思いますので、よろしくお伝えください」

ボス「はい、かしこまりました」

栗秋「あと、M先生にも、『もう一切、息子の好奇心に手を出さず、助けはするけど、コンクールとか諦めました』とお伝えください」

この冬、息子はボスからもらった栗で、栗の木を育てることに挑戦します。
うまく育って、ある程度大きくなったら、ボスの栗園に植樹するそうです。
私の知らないところで、ボスとそういう約束をしていたらしいです。

公開記事の最後にも書いたのですが、ボスは「戻りたくなる場所」を提供してくれる人。飯能に何の縁もなかったのに、今では「この子、いつか、栗園を継ぐかも」なんて想像することがあります。

最後にもう一度、ボス、今回はインタビューご協力ありがとうございました。近いうちにまた飯能に行きます!

そしてインタビュー記事を読んでない方はもう。もう一度、お読みください。

追記:タイトルの「定年間近」がヒットしたようで、資産運用とか老後関係のお仕事している方の「スキ」ばかりで(笑)
いつものメンバーがなかなか読んで下さってないのが残念です~。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?