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とある会社員、非日常への入口 ⑤

Episode 5 理想郷

すぅーっと風を切るように自らの視点が宙を舞った。

見下ろせばどこまでも続く草原、見上げれば晴れ渡る空。
涼しげで、それでいて優しさもある空気を感じながら、どこにいくという目的もなく飛び続けた。
飛んでいるといっても身体は見当たらない。

自らのイメージだけで成立している世界。

深層心理に眠っていた願望が表出した結果、なんとものどかな風景が広がったのである。

なんて心地いいんだろう。

まるですべての悩みから解放されたようだ。
しばらく思考を止め、ただただこの流れに身を任せた。
※しつこいようだが「身」は実際には見当たらない

ずっとこのまま…


そうしていられないのが人間の愚かで悲しい性である。
ふと、魔が差して余計な思考がまた再稼動してしまう。

そう思った次の瞬間には目の前の世界は、歪みはじめ辺りは暗くなって
空を飛んでいた視点もある地点で止まってしまった。

どんよりとした雲が四方八方から湧き出てきてどうにも動くことができない。
これが思い通りの世界=イメージした世界であったなら、なんて不安定で脆いんだ。
自らの弱さを再認識したが、これまでとは違う何か手ごたえを感じていた。


この世界をもっとコントロールしたい。
自由にやりたいことをやってみたい。


不思議な体験の中で私の心は再び生気を取り戻したようだった。

まずは…これだ!! 全力で念じるとまた目の前が歪み、あっという間に新たな世界を作り出した。

続く

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