これが私の生きる道
中学生のころ友達の祖父母宅へ行ったことがある。
その子は父子家庭で家と祖父母の家を行き来して生活していた。
孫が初めて友達を連れてきた様子におばあちゃんは私を喜んで迎え入れてくれた。
友達の少ない子だったのでおばあちゃんも心配していたらしい。なので私が来てくれて本当に嬉しいと言ってくれた。
しばらく友達とふたりでべしゃりを繰り広げていたらおばあちゃんが部屋に入ってきた。どデカいおにぎりを4つ持って。にこやかに沢山食べてねと残して出ていった。
1人ふたつづつなのだろう。ソフトボールよりでかい。
おばあちゃんの優しさに涙が出そうな一方なかなか口に運べない私がいた。
塩昆布がどうしても嫌いなのだ。口に入れるとえづいてしまう。給食に出た際は昼休みまで食べたくないと反抗した。
しかし私を喜ばせようと握ってくれたおにぎり。
成長期だとおもって大きく握ってくれたおにぎり。
食べないという選択肢は無い。
味を感じないようにすごい勢いで食べた。おいしい 、美味しい、と自分に言い聞かせながら。
帰り際におばあちゃんに喜んで欲しくて
本当に美味しかったです。ありがとうございました
と言って帰った。
それから7年の時が流れた。
何の因果か私のバイト先に中学の頃のその友達が入ってきた。
うれしくて暇な時間はよく喋ったり遊んだりしていた。
まだおばあちゃんと仲良く暮らしているらしい。
良かったおばあちゃん元気で。とか思っていた。
それから1ヶ月ほどたったある時、友達が次の日の弁当を持ってきてくれると言ってくれた。
いつもは賄いを食べるのだが、カレーが続く日々に辟易していたのでありがたく頂くことにした。
次の日の休憩時間、無駄に広い休憩室で友達はお昼ご飯を私に差し出した。
あの日のおにぎりだった。
おばあちゃんは私のこともわたしがおにぎりを美味しいと言ったことも覚えててくれた。
でも未だに塩昆布が食べられる人間にはなれていない。
あの日より1.5倍くらいでかい。
本当に塩昆布を口に入れたくなかった。見るだけでも胃酸が逆流してくるのである。
ここでも私は食べないと言う道を選べなかった。
涙目になりながら美味しいおいしいといって胃に押し込んだ。
1週間くらいお腹空かなかった気がする。
帰り際、私は友達に言った、
あんな美味いおにぎり食ったことないわってばあちゃんに言っといて
もう二度とあの友達とは会うことはないかもしれない