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地元に地元の食材を愛してやまない地元の料理人。この意義って。

今日は、昨日の仕込みから手伝わせてもらったイベントの本番(筆者はパイ生地伸ばしたのみ!)。

おさらいすると、本イベントは、
◯地元山形県鶴岡市の『アルケッチャーノ』を中心に幅広い食の活動を通して地産地消の魅力を発信し続ける日本を代表する料理人・奥田政行氏
◯地元北海道鶴居村にて丘の上のオーベルジュ『ハートンツリー』にてシェフを担う傍ら、全国各地を飛び回って地域を支える食材・生産者などを掘り出しその魅力を伝え直す料理人=ノマドシェフ・服部大地氏

のお二方が、地元の食材対決といった感じで、料理を交互に出し合うコラボイベント。
そう。コンセプトと登場人物からして行っとかなきゃまずいっていう直感がはたらいて今日までこぎつけたのだ。

ワクワクが高まる



ってことで、18時半、お食事スタート。

左から張氏、服部chef、奥田chef


おや?…何か凄そうな女性が出てきたぞ…
シェフ?いや?2人だけだよな?
・・・ワイン片手に登場したのは、OTU JAPAN株式会社代表取締役 張 俊霞氏(http://www.otujapan.com/wap/index.html)
なんか聞いたことあるなぁこのワイン。

「成城石井でも取り扱ってますよ。」

あぁーだからか!ニュージーランド産のワインだったんだ。

それから、まずみなで、乾杯🥂。

1杯目に口にしたワインは、ソーヴィニヨン・ブラン100%の白。添えられたパンフレットとPR映像にいくらか目を配りながらtaste。
なんと果実味が色濃く残った、しかしながら透き通ったワインなのだろうか❗️

→ちょっと気になって張氏に隙狙ってサッと、質問。
どうやら、このニュージーランド産ワインの生産者は単一葡萄品種100%のワイン製法にこだわっているらしいのだ。
もちろん原価は高くなるが、澄んだブドウ本来の味わいが入り込んでくるのはこのおかげみたい。
それと、そこの地域は①寒暖差がはっきりしていて、②ミネラル質に富んだ土に恵まれていることが最大の要因だそう。

なるほど。これを聞いて地元秋田県小坂町のことが頭に何となく浮かび上がった。
ほぉーっ。確かに小坂にもワイナリーがあるものだ。
土に着目すると、農作物もよく育つ地域。
ってことは、向いている地域なんだな小坂は。
でも、寒暖差と土の条件満たしているところなんて全国各地あるよな?
ということは、他の要素があって…?


まずまず、おいといてー。

1品目:『野付産ホタテのタルト』by 服部chef

→上に添えられているのは、ニシンの卵。
細やかなプチプチの食感とホタテの芳醇な爽やかな風味がたのしい。
豪快な貝殻に包まれての登場で、潔くコースの世界に引き込まれる。

2品目:『秋味の43℃調理 アボカドのサルサソース』by 奥田chef


→コンフィのような柔らかさ。濃厚なアボカドソースの中にシャキシャキした何かが入っていて、食感を上手に刺激される。
ところで、奥田氏はイタリアンがメインなために、普段はあまり"ソース"を作らないそう。
それでもってこの油脂多めのソースを作った理由について、
「油を多く使う国はワイン、油をあまり使わない国、最たる日本は日本酒なんですよ。」
だから、「ニュージーランドワインに合わせるため」のアボカドベースにしたそう。
ちなみにこのサーモン(ニジマス)はなんと八幡平育ちのようだ。あるんだ八幡平に。
と、こんな調子で奥田シェフが重要な知識をこまめにぶっ込んでくれるのでありがたく、大変おもしろい。

3品目:『ホタテのパイ被せ焼き 黒トリュフ』
    by 奥田chef


北日本の凖アベンジャーズ


→こちらも特大帆立貝に包まれてのご登場。
その見た目と細工にどう食べればいいか会場に困惑の雰囲気が。
「かぶりついて貝のまわりのパイを外してみてください。これって、アイスの蓋にちょっとついているあのアイスが美味しいっいう幼少期の原体験から着想得てるんですよ?」
奥田氏による、誰もがうなづく+αコメントに会場が安堵の笑顔に包まれる☺️
中には噴火湾(北海道)産のホタテと、山形県産の松茸、そして岩手県産の黒トリュフが。
やぁーすごいな北日本。


4品目:『標津産"寝かせ秋味"のパイ包み焼き』
    by 服部chef

こちらは服部シェフ自ら切り分けての演出付き

→シェフ手作りの味噌とチーズ入りじゃがいものペーストを鮭の腹側の身で包んであげ、さらにホンレンソウで被せてパイ生地で焼き上げた一品。
そう、これは"鮭のちゃんちゃん焼き"から着想を得たそうだ。道民の味。シェフにとっては故郷を思い出させてくれる一品のよう。
あまり使われないお腹側の身を使っているのも、アイヌの志が映し出されている。
アイヌ民族は鮭を"カムイチェプ"すなわち"神"として、身だけでなく骨や皮なども余さずに全部使っていた。
だから、パイ生地の模様も鮭の皮を彷彿とさせるものに、そして甘さない象徴として腹の身を使った。
ブルーベリーソースも美味い。

すばらしい、本当に。
服部シェフの生ける使命感と魂が詰め込まれた逸品がそれを口にする一人一人の心に振動を与えた気がしてならない。

個人的には手作り味噌に感じるものがあった。
たぶん、味噌が入っていないと、これはひとつの「フレンチ」料理。
でもそこに、味噌をあたえてあげただけで一気に、懐かしい風景が味覚によって思い出される。一気に「日本人の料理」になった。
やっぱり味噌はすごい。
発酵はすごいんだ。

p.s.余談ではあるが、筆者はこの料理を口にした瞬間、祖母が作る「鮭の粕煮」が頭の中でヒットした。おそらく、麹、発酵ものを使っている点において近しいのだろう。
祖母は、こちらも鮭漁が豊富な新潟出身だから鮭料理がまあ何食べても美味しい。

5品目:『庄内豚と藤沢カブの焼畑見立て 土の香り』by 奥田chef

→土の香り……。「一緒に食べると良いですよ」と言われたのでそうしてみたら、どこか故郷を思わせる味に。
食でその土地の風景を思い出させるって正直わからない感覚だったけど、この時、わかった。
料理の力。恐るべし。

気になって庄内豚だけ食べてみる。
噛む回数を増やすほどに、肉の旨みと質が高い油が口の中に滲み出る。
かんでも、かんでも、かんでも…パサつかない。むしろ濃縮されいく旨さ。(すげぇな…


6品目:『鶴居産鹿肉のロースト ひしおごぼう添え』by 服部chef

→服部氏の十八番と言ってもいいのではないだろうか。雄大な、熊も踏み入れることのできない釧路湿原でのびやかに育った鶴居の鹿肉は本当に美味しいの一言に尽きる。
臭み?そんなものは一切ない。
あるのは旨みと野生味だけ。
獣臭さとワイルドさのギリギリライン。
そこを攻め倒した、62℃で丁寧に火入れがされたお肉を試しにフォークで軽く押してみた。
びっくり。肉汁がジュワッと顔を出したと思ったら、すぐに肉の元へ帰っていった。
おもしろい!肉汁がギリギリのところで逃げ場を失っている。そりゃ旨いわけね。

そして、サルナシのソースと、同じく釧路湿原で育った牛蒡。どうやら釧路湿原のあたりは何万年前の地層がすぐそこ、つまり地表近くにあるらしい。その土で育った牛蒡だ。

7品目:『秋刀魚とししとう カイワレのフェデリーニ』by 奥田chef

→"さんまの塩焼き"パスタだ、これは。
アンチョビにされたのは秋刀魚の内蔵。大根おろしの代わりに貝割れ大根。そして、カボスの皮が混ぜ込まれている。
秋刀魚の塩焼きがパスタに化けたのだと思われる。
そして、奥田氏、パスタといえば"ゆで論"(YouTubeで検索すればたくさん出てくる)。
こんな食べれる日が近かったなんて。
秋のパスタは美味しかった。


8品目:山形県産洋梨のグラタン仕立て

→これでもかと大ぶりの洋梨。
山形?ラ・フランスかな?とか想像しつつも、焼き色で香ばしい表面と冷たいアイスのコントラストの融合が抜群。
至高のドルチェであった。


と、楽しい時間はすぐ終わるよね。
気付けば食後のお話タイム。 

今回で知り合った方(お客様)は本当にすばらしい方たちばかりだったし、「日本で最も美しい村連合」の関係者の方々も多くいらっしゃっていた。
このことって本当すごく大きいんじゃないかな。
"料理"から加盟町村内の人とまちをつなげ合わせれれば、時間をかけてでも結果的な日本をつなげ合わせることができる。
そんな可能性って、とても魅力的じゃない?
ワクワクさせてくれる。
この希望は、服部シェフとの活動や対話から信じることができている。
今現在、服部シェフが行動で、言動で、思いを再現しているのだから。
自分は彼に協力したい。いけるところまで、ついていきたい。
同じ可能性を信じる身として、ともに歩ませていただけたらなと思う。

チーム「日本で最も美しい村連合」と奥田シェフ(中央)
服部シェフと筆者

奥田シェフと服部シェフ。
2人の料理人からは、地元そして日本という国を愛してやまない姿がたくさんの人と運を惹きつけつなぎ合わせる事実性を目の当たりにすることができた。

ご一読いただき、感謝致します。

2024.10.24.


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