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『おいで』と呼ばれた気がするもその距離縮まることはなし
日に日に丸々と肥るお月様を追いかけて思いのほか沢山歩いてしまった日曜日の夜
『おいで』なんて、言われてなどいないのに
もしかしたら、ずっと追いかけられていたのかしら
違う、私が見つめていただけだ
建物の後ろから明るい光が漏れ出ているほどに存在感がある、間もなく満月という夜
私がお月様から逃げも隠れも出来ないのか、それともお月様が私から逃げも隠れもしないのか
わからん
わからんけど、いるとわかっていながらこちらはその姿を見ずにはいられないし、あちらは見ろとも言わずただただ光を浴びせて来るばかり
こういうもってまわった、誰にも理解不能な稚拙な表現に頭を支配されるとき思い出すのが
『自由にやれ自由にやれと言いながらスカートの裾を踏んづけている』
とか言う、あれ
好きとか嫌いとか支持とか思想は置いておいて、やはり人前に出ていっちょやったりましょうなんて人はやはり口が立つというか弁が立つというか
善悪の判断とか正義とか不正とかそんなもん超越する、何か
良くも悪くも口が立つし、華がある
彼女の場合はそんじょそこらの人間とは生まれも育ちも違うので当たり前とは言え、ボケッと生きてるおバカな私は勢いとか言葉の強さとか語気などに衝撃を受けた
そんなどうでも良いような事をうっかり思い出しながら、もう少しもう少しと歩みを進める
満月の前後、こうしてお月様の姿を追って度々夜に出歩いてしまう
病んどるな
正確にはお散歩ではなく、お晩酌の主役を買いに行く行き帰り
飲食店のひしめく界隈では、団体さんなんかがお店の前では待ち合わせをしたり、場所を教えるため電話をする声が響いている
『ドラッグストア?なんて名前?あー、ちゃうちゃう、烏丸・・・・。迎えに行くわ』
『久しぶり~、昨日からこっち?』
明日が成人式で帰省してるから今日集まるのかしら?ぐらいに見える若い人が多いように見えた
成人の日の前日というだけで、思い込みかな
地下鉄入口への階段を降りるとき、大きな花束を抱えた男性とすれ違う
奥さまへのプレゼントかしら?素敵!
誰かに頼まれて会席で渡すのかもしれないし、誰かからもらったのかもしれないし、お店でご贔屓ちゃんに渡すのかもしれない
男性がお店でお花を買うだけで素敵って思っちゃうのも何だかな
どれひとつとっても私には関係ないし誰が誰にお花を渡そうがええやん
子どもの頃や若い頃から、こういう決めつけみたいな考えやレッテルを貼られるようなこと、それ知って・聞いてどうすんの?をしつこくやる人を嫌っていたはずなのに、しっかりやってんな
もう、自分の見聞きしたことやそこから私の考えの及ぶことばかりではないもので世の中は出来ていると知っているのに
電車で携帯を触らず本を読んでいる人は知的で格好よく見えるけれど、この人は仕事中ずっと携帯を触って―タイムセールのチェックやネットニュースのチェック―いるかもしれない
事実、会社の人で仕事中もずーっと携帯を触っているけれど地下鉄のホームで立ったまま本を読んでいる姿を見たことがある
会社での姿を知らなければ確かに格好いいと思うかもしれない
お花屋さんで美しい花束を、こなれた調子で作ってもらっている男性が素敵に見えても、そう素敵とも思わない理由で足繁く来ているのかもしれない
男性が日常的にお花を買い、ネイルをした男性二人が手をつないでパフェやケーキを食べに来る姿に内心ヒャッ!となっちゃうような時代ではないのに、私はいまだにこういう価値観が根強くある人間なのだ
ま、何にせよ私には関係の無いことだ
私は外を歩くとずっとこんな感じで、どうでもいいことに思いを巡らせあーでもないこーでもないと考えながら歩いたりする
そうかと思うと、あの煮込みのお店のあとはあのおしゃれ立ち飲みになるのか、あのガレージみたいな場所の焼き芋屋さんだったり立ち飲み屋さんだったところはあの人気のパン屋さんが出来るのか、あの和菓子屋さんのビルはもうすぐ完成か、市役所の側に移転したパン屋さんのあとお使い物に何度か買った高価なフルーツ大福のお店のあとは焼き菓子のお店か、みたいにキョロキョロキョロキョロ
頭を空っぽにしたいと思って歩き出してもたまにこうして雑念でまみれることとなる
そんな町のやりとりを見ながらお店でのやりとり以外会話などしていないのに、自分も色んな人と会ったような感覚でホクホクしそうになり、はっと我に返る
何だかな
お月様が綺麗な夜で、多めに歩きましたよって事です
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『優勝ですし、成人の日ですし、おすし』
『お鮨もいいね』
『そうですね』
ベランダからも見られていた
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『君も、丸々としているよ』
『嫌やわぁ、いけずばっかり』
本日の満月のお月様(書いている、14日)のお姿はこちら
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一瞬だけ東の低いところに見えたところを激写