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映画『敵』を観に行く
新風館地階“アップリンク京都”にて映画鑑賞
先日観た『オークション』を含めて、この映画館で上映予定の作品で1月にもう3本は絶対観たい作品があったので会員になって本当に良かったと心から思う
生き急ぐように映画を観たり展覧会に足を運ぶわけではないけれど、年がら年中『あ~、あれ見ときたかってんな~』ばっかり口にせず過ごしていきたい、と1月の今は思っているから
お昼休みにチケットを購入して、夜に観に行く
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外国の方もすごく多い
観に来たのはこちら
『敵』
![](https://assets.st-note.com/img/1737467103-91i5ulny4rgIFvsAJd6tOMb8.jpg?width=1200)
前もって情報を入れずに観たいので、フライヤーを少し読んだだけで観に行った
軽く読むだけでも、熱心な読者・ファンの多そうな筒井康隆や吉田大八というお名前が出て来るので、少し、びびる
原作本も読んではないし、筒井康隆氏の作品も大学の授業で熱心に読んだくらいで沢山触れてきたとかでもない
こういう場合、原作も作品も誰かしらの感想や批評を聞いてしまうと私は確実にそちらに引っ張られるので真っさらな気持ちで映画館へ向かう
行ったあとでも答え合わせもしないし、批評や評判も見ないけれど
いつものごとく、何となく感じたことをあれこれ考えすぎてしまう前の新鮮な気持ちのうちに、記録として、書く
朝、目が覚めたら起き上がり、お手洗いを済ませ、顔を洗い、食事を作って食べて片付けて、歯を磨き、豆を挽いてコーヒーを淹れて飲み、仕事をし、時には人と会い、人を招き、お酒を楽しんだり、二日酔いに苦しんだり
一見すると丁寧で充実感のある、また無駄がないながら豊かにも見える、人間味溢れるそんな営みを繰り返す“先生”
そんな“先生”は、精神的・経済的・物質的にも、計算して導き出した“Xデー”へ向かう覚悟をもち終わりへ向けて準備を整然と行い淡々と、粛々と、生きているように見える
願望や欲望や感情をうちに秘めているのか、隠し持っているのか、気が付いてないのか、そんなふりをしているのか、抑圧や抑制なんかを超えたかのように、淡々と、粛々と繰り返される男の日常
夢か現か、SFか、ホラーなのか、そんな世界をぼんやり眺める
自身の意思や感情だけではなく、女や夢や幻想(潜在的な自身の意思や感情が含まれているかもしれないけれど)なのか、本当の気持ちとか弱さなのか、などよくわからない何かに脅かされる場面は、昨年観た『ドリーム・シナリオ』のいくつかの場面とやや印象が重なる
“先生”(長塚京三)の、肉体も雰囲気も何もかも素敵すぎるし、その熟成された魅力に強く惹きつけられる上に、瀧内公美の色っぽさも、何か、すごい
服装がエロいとか、そういうシーンが沢山あるとかではなくて、目尻の下がった大きな瞳で“先生”の姿を追い心の中まで覗き込むようにじっと見つめ、少し鼻にかかった声でただならぬ感情を含ませたように語りかける
その全てに色気がダダ漏れている
“先生”の、食事を作る手際の良い仕草や美しい食事の仕方、隅々へのこだわり(本人はそんなことはないと言うけれど)、仕事への情熱や向き合い方、家事をするときの丁寧な所作、整えられた身なりや清潔感をちゃんと気にする事の出来る『現役感』からも色気や色香を感じてしまう
映像に色味が無いので、見てはいけないものをずっと見てるような気分をより強くさせる
音や色が絞られている事によって感覚が敏感になり、視線や手先の動き、表情の少しの変化を見るにつけ妄想心とか想像力が暴れ出す
全然種類は違うけれど、何年も前に観た『アーティスト』、昨年観た『ロボット・ドリームズ』も同じ理由で強く心を揺らし自分の心の中の知らなかった・気が付かなかった・忘れていた場所を拓くようなそんな気持ちになる
いつも同じ感覚だけを使うのではなく、たまには違う使い方をしなくちゃとその時は思う
音楽でも芸術作品でも、作り手の思いや技巧なんかが強く出ているよりは、どこかしら何か抑え込まれた『つまらない』と紙一重くらいの壁のようなものを感じる方が欲望がかき立てられる
段々と繰り広げられる若い女性や教え子、亡くなった奥様たちとの『何だそれ』な世界で翻弄されかき乱されていく様子をその際どい壁越しに観察し、興奮する
完璧とか完全とか完成されたものを乱したい願望、そして誰かがそうされるのを見ているときに感じる興奮など、少しでも湧き上がったのならそれらを抑えることなど出来ない
『敵』とは一体何だったのか
考えれば考えるほど遠くへ離れる気がするし、誰かと分かち合いたい、とか、わかって欲しいと思うほどに興醒めしてくる
もしくは私の識り得る言葉や感情では辿り着けなくて途方に暮れてしまう
見た夢が、頭の中ではくっきりはっきりしているのに口にしようとするとボロボロこぼれ落ちてどこかへ行ってしまうようなそんな感じ
時間が経って記憶や興奮が薄れた頃、誰かの感想をこっそり読みたい
見目麗しい役者を眺めているうちに、自身を没入させスクリーンに飲み込まれる
外見の自信のなさや心の臆病のせいで押し殺し閉じたままの願望や欲望の羽を広げ、開放感を味わう
その錯覚のさなか、私の魂はまだまだ激しく燃えていることを確認し、冷たい心や体に情熱や血が駆け巡るのをいやと言うほど感じる
いやー、映画って、本当に素晴らしいですね
さよならっ
さよならっ
さよならっ