見えなかった景色が広がる
何かの拍子に、今まで見えなかった空を見て何となく思う
相変わらずの、私の暮らす、限られた場所の話
烏丸三条という場所の南東角にあった『京都銀行』は建て替えのため、お向かいの、かつて『みずほ銀行』があった場所に移転して営業されている
つい先日まで建物を覆って作業されていたので気が付かなかったし、連休中は昼間に前を通らなかったが、木曜日のお昼休みに烏丸通りの西から東へ向かって信号待ちをしているとき、ふと上を見上げて驚いた
そ、空が広い
当たり前の事だけれど、建物があった時には見ることのなかった景色が広がっていた
広がる空を見て『建物が邪魔して見えなかった』とかそういう感覚ではなく、こんなちょっとの事でこんなにも景色が変わるのかという、まあまあの驚き
その時は、ただそんなふうに感じただけだった
お昼休みを終え、仕事中はすっかり忘れていたような事なのに夕方スーパーマーケット『八百一』へのお買い物の行き道に前を通りまた少し思いが巡る
建物の工事現場を見た、たったそれだけの事なのに
あれのおかげで今がある
あれがなかったおかげで今がある
あれのせいで今、こんな事になってしまっている
あれがなかったせいで今、こんな事になってしまっている
ただ、あの景色を見た、それだけなのに
様々なことを思い出し感謝したりありがたがったり、反省したり、惨めな気持ちに苛まれたり、いや待てよ、そうでもないかと自嘲気味に思ったり、感情が揺れ動く
急な寒さのせいで、少し心細く寂しく感じるのは毎年の事だ
早くおうちに帰ろう
粕汁を作り、お洗濯を終え、テレビをつけると20時45分からのニュースには数分早かったのか何かの特集みたいなのをやっていた
不登校だった自分を励ましてくれた先生に会ってお礼が言いたい、とかそんな内容の終わりかけのタイミングだった
お礼を伝えることの出来た生徒に、先生がかけた言葉が
『過去の出来事(学校に行けなかった事)は変えられないけど、過去の出来事の意味を変えることは出来る』
というようなものだった
ふと見上げた空がいつもと違って驚いたけれど、それは私の努力や尽力で見えたのではない
そんなものとは遠くかけ離れた出来事のひとつ
その反対なのか、同じようになのか、努力や尽力だけではどうにもならない事も確実にある
そこに、その方向性とか量とか質とか効率とか加味するべき点もたくさんあるのだろう
でもその時の容量満タン、もしくは容量オーバー、つまり精一杯の思いで臨んだとしても充分に得られない─見ること・成すこと・越えること・耐えることの出来ない様々なこと─事もあれば、そんなでもなかったのに得ることが可能な事もある
タイミングとか、周囲との兼ね合いとかそういったものが良くも悪くも影響してくることもある
何が言いたいのか良くわからないけれど、その時はそれがベストだった、みたいな事
その時の決断や判断はもう変える事は出来ない
でも、その時の決断や判断に対する思いは変わったって良い
都合良くても、後付けでも
その年若い先生(彼女も不登校だった時期があるのだそう)の言葉がスルリと耳に入りストンと心に着地した気がした
過去も人(他人)も変えることはできないけれど、その意味を変えられた事で、そう出来た自分がつくる未来は悪いものばかりではないかもしれない
これもおそらく、何だかんだ言ったって平和に生きている事が出来ているからそんなふうに言えるし思えるのだろう
仕事中、息を吸うのも忘れるほどに切羽詰まった局面や追い込まれた状況のとき大好きな曲が職場のラジオから流れてくる
悶々と、ぐるぐるぐるぐる、何とはなしに考えが頭を巡る時に普段見ない特集からこうして心に響くものを目にしたり耳にしたりする
と思っていたけれど、これもちょっと何かを求めたりもがいた時にやって来て、がっついているから私のところに届いたのかもしれない
“チャンスの神様”は前髪しかないから来たと思ったらすぐ掴め!
高校の時の世界史の先生がギリシャ神話の話の時におっしゃっていたな
ご近所の工事中の建物を見て、こんなところまで飛んでいってしまう
実に、平和だ
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