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探りだす光景と拙い言葉を映して。

求めた静寂がモノクロでもなく鮮烈な色彩を持った日常でもなかった。

雨音がやんでいる。途端に冷蔵庫やパソコンのファンの音で空間が騒がしくなった。窓の外は静寂だろうか。耳を済ませていると猫の鳴き声がどこかから聞こえてきた。誰かを呼ぶような優しいものではなく、訴えかけるような厳しさ。

横になって目を瞑ると誰かの姿が見える。陽が沈む頃、河川敷をいっしょに歩いていた。「スニーカーなんて持ってない」と口にしながら河原に向かう後ろ姿。顔をはっきりと思い出せず、降りてくる闇に笑顔が同化している。

いつの間にか浅く眠っていた。きっと2分間か3分間か。もっと短かったかな。あの人はどうしているだろう。地元に帰ったと聞いた。

写真を探せば顔は思い出せる。しかし思い出したいのは彼女の容姿ではない。短い夢にかすむ闇のその場所。彼女が声を響かせたあの時空間。もう二度と戻れない記憶の片隅。

何を求めてファインダーを覗くのか。何を求めて青空を仰ぎ、木々のささやきに耳を傾け、降りてくる夕闇に身を任すのか。写真を撮ることが目的ではないのは確かだ。僕は幼い頃より失い続けた日々を綴りたいのかもしれない。それが動機か? ファインダーの向こうに、または今こうしてモニターと向き合って、探りだす光景と拙い言葉を映して。

関連ページ https://note.mu/agi/n/n632f73f1638b

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