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インハウスデザイナーはITパスポートに挑戦すべきだと思う

10月に受験したITパスポート試験に合格した。
一度不合格してからのリベンジ戦。試験を終了させるボタンを押す瞬間は本当に、ほんとうに緊張した。
知ってる方も多いかもしれないが、この試験は試験を終えた瞬間に合格基準ラインと自分の採点結果が瞬時に表示されるCBT(Computer Based Testing)方式を採用している。
不合格となった1回目は数字の意味がわからず、しばらく呆然としていたことを覚えている。

BtoBプロダクトの開発プロジェクトに参画しているデザイナーとして、なぜこの資格が必要なのか。試験の内容や自分に不足していた知識や考え方をまとめてたいと思う。

ITパスポートとは

IPA(独立行政法人 情報処理機構)が主宰し経済産業大臣が認定する国家試験だ。

ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験
新しい技術(AI、ビッグデータ、IoT など)や新しい手法(アジャイルなど)の概要に関する知識をはじめ、経営全般(経営戦略、マーケティング、財務、法務など)の知識、IT(セキュリティ、ネットワークなど)の知識、プロジェクトマネジメントの知識など幅広い分野の総合的知識を問う試験

※ITパスポート試験サイトから抜粋

おおよそ学生30%社会人70%の受験比率で、合格ラインは総合評価の満点の60%かつ3つの各分野別評価の満点の30%以上となっている。
3つの分野というのがこちら。 

・ストラテジ系(経営全般)35問程度
・マネジメント系(IT管理)20問程度
・テクノロジ系(IT技術)45問程度

受験する学生も多く、決して難解でハードルの高い試験ではない。
またその試験範囲は広く、浅く、ITにまつわるビジネススキルを学ぶ前提で設定された、まさに総合的知識を測るひとつの指針である。

最近はその国家試験としての信頼性もあってか製薬会社などでもデジタル人材を育成する目的で資格取得を推奨している。

必要性を感じたきっかけ

私は美術系大学を卒業後、デザイン制作会社で10年、ウェブサービス会社で5年、そして今のSlerでシステム開発に従事するデザイナーである。これまでの経験の中で、ソフトウェアライフサイクルと呼ばれるシステムの開発方針には触れたことがなく、要件定義の前に要求定義があることすら知らなかった。
また恥ずかしながら外部設計と内部設計の違いも皆無であり、テスト設計にまで至るとなぜ必要なのか理解にかなり時間がかった。
UIデザインとUX戦略を生業とする側、デザイン思考で感性的なアプローチには知見があったものの、物事を全体的&体系的に捉え構造化していくシステム思考の考え方に手を焼いた。チームのエンジニアや設計担当者の会話についていくことができず、初めて聞く単語をメモってはあとで調べ直していくばかり。似た単語の定義を確かめ、見直すことにとても苦労した。
そんな中、チームの皆が若い時に取得したというITパスポートの話を聞き、ある程度基本的なIT知識と開発技術を学べそうと思ったのがきっかけである。

試験勉強での対策と苦労

コロナ禍の影響で巣篭もりしていたこともあり、ちょうどシステム設計とテスト設計についても学んでもいたので、一緒にITパスポートの試験勉強も進めて資格とってやろうと考えていた。
そう、試験を完全に舐めていた。学生でも合格できるレベルならついでに受けて受かるだろうと。
話を聞いていたチームメンバーからもアレは若い時にとりあえず取ったものだからと言われ、甘く見ていたのだ。数年前に買った「よくわかるマスター」を開きとりあえずノートに書きまとめることからスタートした。

悪い癖というべきか、ノートは見た目をきれいにまとめたくなってしまう。意味の違いを図解にして装飾した表現に凝ってしまう。今思うとただの自己満足な時間だった。
また歳を取ったのか元からなのか、記憶力にいささか問題がある。
SCM、MRP、RPA、FMS、RFP、RAD、SOA、WPA2、MTBF…
頭文字だけで言葉の意味を覚えるのがこんなにも大変だったとは。。できるだけ文章に分解しシーンをイメージしながら繰り返すので時間がかかる。この勉強法も非効率だったと思う。けれどただ資格取得だけではなく、本当に言葉や仕組みを理解していかないと仕事に支障がでる。
通常の仕事も疎かにすることができず、いつの間にか時間はすぎて過去問をほとんど手を付けることなく本番当日を迎えた。

そして見事に不合格となる。

再チャレンジと学習方法見直し

この試験そのものは、2週間あれば合格できるとよく記事を見る。
実際IT未経験者でもそれは可能な気がする。暗記と過去問を何度も繰り返し、問題のパターンを理解すれば、語句の意味が分からずとも答えが見えてくる仕組みだからだ。
学習方法はこちらのブログが非常に参考になる。合格ラインの低さと一般常識に近い問題は8時間で合格できるらしい。心から尊敬する。

私も不合格してから2ヶ月後の試験で合格したが、まず入念なノート書き取りはやめて、過去問がオンラインで試せるありがたいこちらのサイトでひたすら問題に答えた。

情けない話だが、他の試験勉強に目線がいっていたため、新しい参考書も買わずにいた。合格率の高いというレビューが多い一冊を購入。令和2年度という字面でなんだか感動する。​

この参考書にある必修過去問と、重要キーワードをすばやく目を通す。あくまで流す。この時ほとんどノート書きはしてなかった。意味のわからないワードだけ調べてメモるレベル。あとは過去問の解説を読み込む勉強法に切り替えた。
前回の試験でテクノロジ系が弱いことがわかっていたので、それを重点的に繰り返した。計算問題は本当に苦手だったのでほぼ捨てた。
あとはとにかくITパスポート試験ドットコムでひたすら過去問を繰り返す。
10月の履歴は多いのか少ないのか判断できないがこのような結果だった。

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資格取得以上に得た可能性

冒頭でも述べたように、この資格は情報処理技術者からしたらマリオのステージ1-1。H2だと飛竜西高戦。ちゃんとやれば勝てるレベル。
けれど畑が違うと話が変わってくる。会社のデザイナー数人に聞いてみるとITサポート自体を知らず、もちろん取得もしていない。
過ごしてきた環境が違うというか、食べてきたものが根本的に違っている。私はシステム開発の要件定義から参画したため、その場違い感をいやというほど感じてきた。
だからこそ少しでも土壌を知り理解した上で、共に生産性を上げることに注力したい。その初手となるのがITパスポートになると思っている。

より企業活動や会社の仕組みを理解したいなら「日商簿記検定」が必要だろう。関わるプロダクトが金融や会計業務であれば尚更だ。
更にエンジニアリングに注力しセキュアな設計をデザインからアプローチしたいなら「情報セキュリティマネジメント試験」や「基本情報技術者試験」がオススメだ。
AWSやSalesforceの認定試験も、デザイナーが取得することでデザインエンジニアリングに長けた貴重な人材になれるだろう。
システム設計にどっぷりつかりテスト設計にもデザイナーとして責任を持ちたいマニアックな方はJSTQB認定テスト技術者資格に挑戦するのも面白い。
昨今、耳にしない日はないAIや深層学習。ディープラーニングに対する能力や知識を検定する「G検定」は役職に関わらずこれからのビジネスを設計する人間にとっては欠かせない領域だと感じている。


どんな業種、ビジネスにも必須の技術であり当たり前に活用していくものになると感じている。早い段階で活用しデザイン思想のアイデアに組み込めるだけの能力があるとないとでは、今後のキャリアにも影響があるのではないか。
そんな様々な可能性を記してくれたのがITパスポートであり、まさに次にチャレンジしたい国へいくためのパスポートなのだ。
自らの可能性を広げたい、また特定の領域でより専門的に開発に携わりたいと思うデザイナーには、ひとつのきっかけになるのではと考えている。

次の意欲へ

今回の試験は合格者の最年少記録を更新したらしい。小学3年生8歳が合格。
わざわざプレスまで打ってる。

小学生から80歳を超える高齢者まで幅広くチャレンジできる資格試験であり、受験者は年々増えている。これで得た知識をベースに既にあげたような次の興味分野への扉を開くきっかけになれると考えている。
専門的なクリエイティブ領域を生業としてきたデザイナーにとって、デザインにこだわり誇りを持つことは大切である。そのクラフトマンシップを基軸にしながら、柔軟にエンジニアリングの仕組みを受け入れ、マネジメント層の思考から最適な打ち手を考え、新しい技術を元にした創造的なアウトプットを生み出せることで、オリジナリティを持ったITクリエイティブ人材になれると私は信じている。

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