「ホモ・サピエンス全史」を読んで考える人類の進化と菜食主義への問い（読書感想文）
こんにちは
agent-matsukuraです
最近、我が家では食べ物への感謝を子どもたちに伝える機会が増えました。特に食卓でいただくお肉や魚について、自然の恵みや命の大切さを教える時間を大切にしています。しかしある日、子どもから「どうして僕たちは肉を食べるの？」と問いかけられました。その一言に少し戸惑いながらも、やんわりと答えたものの、自分自身の考えが整理しきれていないことに気づかされました。
その後、答えを深めるためのヒントを得ようと手に取ったのが、ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・サピエンス全史』です。この本には、ホモ・サピエンスがどのように進化し、現在の私たちの食文化や価値観がどのように形成されてきたのかを考える上で、多くの示唆が詰まっています。
今回、改めて本書を読み直し、人類がいかにして「食」と向き合ってきたのかを振り返りながら、私なりの感想を少し書いてみたいと思います。
ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・サピエンス全史』は、人類史を多角的な視点で分析した革新的な一冊です。この本を通して、私たちホモ・サピエンスが地球の支配者として台頭した背景を探ることができました。特に、「認知革命」という概念が人類の進化においていかに決定的な役割を果たしたのか、そしてそれが現代社会にどのような影響を及ぼしているのかを考える良い機会となりました。また、この読書を通じて、近年注目される菜食主義（ヴィーガンやベジタリアン）というライフスタイルについても新たな視点を得ることができました。
認知革命がもたらした力
約7万年前、ホモ・サピエンスが「認知革命」を迎えたことが、本書の中心的なテーマの一つです。ハラリは、人類の進化を説明するうえで、この革命を重要視しています。この変革期に、ホモ・サピエンスは現実には存在しない「虚構」を創造し、信じる能力を獲得しました。例えば、神話や宗教、法律、貨幣、国家といった抽象的な概念は、物理的な存在ではありませんが、多くの人々がそれを共有することで、社会を統合し、大規模な協力が可能となりました。
この協力の力は、他のホモ属との競争において決定的でした。ネアンデルタール人やデニソワ人に比べ、サピエンスは数的には劣勢だったものの、虚構を基盤にした協力が集団を大きくし、他の種を圧倒したのです。そして、農業革命以降、サピエンスはさらに地球環境を支配する存在となりました。
しかし、認知革命がもたらしたのは、人類の繁栄だけではありません。本書では、虚構の力が社会の格差や戦争、環境破壊といった負の側面をも生み出したと指摘されています。私たちが信じる「お金」や「国境」は現実ではなく、人々の信念に依存していることを理解することが、これからの社会を見直す鍵となると感じました。
ヴィーガニズム（菜食主義）への問い
一方で、本書はホモ・サピエンスが他の動物たちに与えてきた影響についても多くのページを割いています。農業革命以降、人類は動物を「家畜」という形で完全に支配するようになり、その結果、多くの動物種が絶滅の危機に瀕しています。ハラリの記述は、人類がいかに動物を搾取し、自らの利益のために利用してきたかを冷徹に描いています。
これを踏まえると、菜食主義というライフスタイルは倫理的な選択肢として一定の説得力を持っています。しかし、この動きに対しては私なりの疑問もあります。人類は本質的に雑食性の生物であり、その身体構造も進化の過程で動物性タンパク質を摂取することに適応してきました。また、動物性食品は、人類の脳を大きくし、認知革命を可能にした要因の一つとも言われています。
さらに、菜食主義は環境への負荷を軽減する側面もある一方で、大規模な農業による土地の破壊や生態系への影響を無視することはできません。例えば、野菜や穀物の栽培のために森林が伐採され、多くの動物たちが生息地を失っています。人類が行う「選択」のすべてには犠牲が伴うという事実を忘れてはいけません。
感想と私たちの未来
『ホモ・サピエンス全史』を読んで改めて感じたのは、人類の歴史とは進化の連続であると同時に、選択の歴史でもあるということです。認知革命によって他の生物を圧倒する力を得た私たちですが、その力には責任が伴います。動物の命を犠牲にすることなく、かつ持続可能な未来を築くにはどうすれば良いのか。菜食主義や動物愛護の観点も重要ですが、人類としての全体的な進化の文脈を忘れずに議論することが大切だと感じました。
ハラリの冷静で深い分析は、私たちの現在を見つめ直す機会を与えてくれます。虚構を信じる力を使い、より良い未来を創造するために、私たちがこれから何を「信じ」、どのように「行動」するかが問われています。この本が提起する数多くのテーマは、読者の価値観や行動を揺さぶる力を持っています。私もまた、自分自身のライフスタイルや価値観を再考するきっかけを得ることができました。
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