【読書感想】正欲【ネタバレなし】
総括
「正欲」読了。
ものすごく面白かった。
複数の視点を書いているのに、バトンを渡すように繋がる構成。
そして、今、語られるべき内容でありながら無自覚にさらされてきた社会を強制的に自覚させる意地の悪さ。
どうしたって他人事の位置にいることを許してくれない。
素晴らしすぎた。
勝手に理解があると自負していた自分が恥ずかしくなる程度にはくらっている。
あらすじ等
今作は朝井リョウが書いた小説。
あらすじ書けん!!
様々な年齢、職種の人物の視点を通して"正しさ"と”性”そして、社会を覗くそんな小説。多分。
感想
映画は見てないものの映画化されるほどに人気であり、ここ数年この表紙ずっとランキングにいたよね!?ということで購入。
朝井リョウは「何者」しか読んでないです。
まずこの小説はうまい。小説ウマ男。
複数人視点なのに、つなぎ方が気持ちが良すぎる。
ラップで全ての母音の韻を全部踏み切るような気持ちよさ。
これで、スイスイ読めちゃってやめどころがなくなっちゃった。
読みやすい割に、キャラクターたちは根本的にクセ強なんだけれどそのひたむきさに、懸命さに、無頓着さにどこか愛嬌を個人的には感じる。
そんなキャラクターたちを通して語られる物語は筆舌に尽くしがたい。
語れば語るほど陳腐になるのわかってるけど語るね?
”正しさ”と”性”でこんなに炙り出せるってマジィ!?
いま巷で声高に語られる"多様性"がいかにマジョリティが理解しやすいようにされてるかとか!
解らないものにウィークポイントを当てるとか!
この意地悪!
社会をどんな角度でみてたらコレを生み出せてしまうのかが、マジでわからん。
引っ張り上げて吊し上げて解るように言語化までして・・・俺は世の中知らなくてもいいこともあると思うよ?
そしてね、マイノリティって単語をより正確に解るようにすることができるとは思わなんだ。
マイノリティを解るようにしたことで、本当にこの物語で出てきた主人公以外も含めた全ての人物たちの行動や言動が解った気になれるのよ。
そして、すべての行動が解るようになってから最後に落とす。
正直読んでる中盤まで、これはどうやって終わるんだ?っておもっていたのだけれど最初から描いてきたキャラクターたちの行動と言動をもう解ってるのだからずっと序盤から説明されてきたことが起こるだけ。
綺麗に終わるというよりは綺麗に帰結した。
社会を斬る作品というよりは、社会を意地悪に覗く作品。
覗くという距離だからこそリアルではなくリアリティだし、ちゃんとフィクションとして楽しめる作品になっていました。
個人的には、自分の話をされてるというよりは言語化してなかった部分を文章として読めたことがおどろきであったり、また自身が思う”正しさ”に自信満々だったことが何故か恥ずかしくなりました。
ちょっと朝井リョウもちゃんと他の読んでみるか・・・。
コレがヒットしてるっていう現在がすごい時代になったもんだなぁと思いました。
あと東畑開人さんの解説も赤裸々ですごく良かったです。