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みんなでメイキングクトゥルフ
物語を即興で作る系のカードゲームはすべて買うことにしている。その代表はファンタジーの世界の物語を作る『ワンス・アポン・ア・タイム』だろう。これは手持ちのカードを出し合って、みんなで共同して物語を作り上げていく、というルールのゲームである。一応、カードを消費しきることを競うゲームとなっている。そこにこだわると、物語の面白さは蔑ろになる。
お気に入りは怪談を作るゲームである『♾怪談』のシリーズだ。これは自分の手持ちの札を使って、自分だけで怪談を作る。互いの怪談の怖さを競うので、質の良い物語を作ること自体が目的となってよい。ただ物語作り自体には、他人との相互作用はない。言葉の書かれたカードを使った一人即興を順番にやっている、という構造となる。
共同作業と、物語作り重視。この両方の良いところを取り入れたゲームが2021年に発売された。しかもクトゥルフ神話体系を元にしている。『みんなでメイキングクトゥルフ』である。
システムを見ると一目瞭然であるが、TRPGの『クトゥルフの呼び声』をかなり意識した内容になっている。というか、クトゥルフ神話体系自体がもはやあのTRPGから切り離せないものになってしまっているのだろう。
特に似ている、と思われるのはTRPGのほうで発明された「正気」が失われていくという概念である。ゲームを進めていくにつれ、登場人物は不吉なものに遭遇するたびに、徐々に狂気に近づいていく。当然、ハッピーエンドはあまり望めない。そこが普通のゲームと一味違う面白さを出している。
TRPGはちょっとハードルが高い、という人にも、それっぽい雰囲気を手軽に味わえるゲームとして、『みんなでメイキングクトゥルフ』は良いのではないだろうか。私もYouTubeの怪談のチャンネルのほうで、プレイの様子を配信させてもらった。
ただ、本家(?)TRPGのほうもそうだが、なかなかクトゥルフ神話の世界そのものが語られることは少ないようで、システムを利用した別種のホラーになってしまうことのほうが多いようだ。もちろんそれでも充分楽しめる。ただクトゥルフ神話ファンにはぜひ新たな神話を生み出してほしい。ゲームはクトゥルフ神話を息づかせつづけるための格好のアイテムとなるだろう。
そういうわけで私も、クトゥルフ神話と即興が好きな人ととっぷりとダークな世界に入り込みたいと思っている。相手が妻では無理そうだ。なら娘をそっちの道に引きずり込もうか、と思ってゲームを見せていたら・・・
妻が怒っていた。正気度マイナス10。