【ショートショート】 『決闘年越しそば』
「決闘だ!」
「望むところよ」
日頃から俺が一番と争っていたスポーツ万能のクサとノケは、年の終わりに白黒つけることにした。
そばで。
喧嘩をするわけにはゆかぬ。なら年の締めくくりは年越しそばだ。わんこそばをたくさん食べたほうが勝ちだとノケが言ったのだ。
大食いには自信があったクサは承知した。
仲間が見守る中、いざ勝負となった。
ノケの食べる勢いが良いのは最初だけで、急に失速した。クサはペースを下げない。
だが勝ちきれるかと思うとノケはまた食べ始めた。油断ならぬと、クサはひたすら食う。己の食べっぷりを周囲に見せつけた。
87杯。いっぽうクサは31杯だ。
「お前から言っておいてぶざまなもんだ。文句ないな。俺の勝ちだ。うっぷ」
「そうだな」ノケは冷ややかであった。
「さて、西宮神社に向かうか」
「え? あ…」
神社の開門から本殿に真っ先についた男が今年の福男になる。
クサは重い腹を抱えながら、してやられたと思った。