【コント(25)】『遠回り(22)』
(二人、岩場の路上に座っている。たまに行き交うのははどう見ても外国の人々)
「どうしてまたこういうことになるかなあ」
「まあそうすねずに」
「あなたのせいですよ。クソザワが」
「あー、そういう言い方はよくありませんよ。こういうときは『神沢様のおかげです』はい。リピートアフターミー」
「……」
「遠慮はいりませんよ。『神沢様のおかげです』はい。リピートアフターミー(片手を耳に当てる)」
「わあ!」
「いてててて。ちょっとお! 大声出さないでくださいよお」
「もう、うんざりだあ。どうしてこんなところにいるんですか。病院を追い出されたと思ったら、言葉の通じない国だもん。どこですかここは!」
「ようこそ。我が王国へ」
「あなたのことを知っている人はひとりもいないでしょ! あなただってこの国の言葉を話せないんだし」
「Hey、アイアムすごーい人」
「それ、通じるのは日本だけでしょうね」
「オー、リアリー?」
「神沢さん、そのあとオー・ヘンリーと言うのもやめてくださいよ」
「オー……プンセサミ」
「なに言ってんだか。もうギャグはいいんですよ。ギャグは……」
(その間に後ろの岩が開く。洞窟に続いている)
「おお…」
「だからもういいって言っているでしょ。どうせ次は王貞治とか言うんでしょ。ほら、そうでしょ。私もわかるようになってきましたから(ふと振り返って)うわあ! 開いている」
「入ってみますか(と言っているそばから洞窟の中に入ってしまう)」
「ちょっと。そんな、大丈夫ですか? 閉じ込められても知りませんよ。そのまま閉じ込められりゃいいのかな。そうは言っても呪文は覚えているんだから、出てきてしまうか。だったら怒らせるようなことはしないほうがましかな……奥深くまで行っちゃったみたいだな。ちょっと。神沢さん(入っていく)」
「いやあ、うまいこといきましたなあ。岩の扉を開く方法を見つけたという」
「これ、金銀に財宝じゃないですか」
「これで一生安泰ですな。バカもいい放題ですぞ」
「あなたは経済事情に関係なくバカなことしか言わないでしょう。いや待てよ? もともとお金持ちなんでしょう? そうじゃなきゃ……」
「オーマイガッド」
(40人の盗賊が入ってくる)
「だからギャグはもういいですって。(神沢が後ろを指差している)」
「志村うしろー!」
「なに言ってんだか。そんな今時の子にはわからないギャグを。だいたい神沢さんのギャグは……」
「里中うしろー!」
「だから私は里中でもないしですねえ、(振り向く)うわあ。なにこれ、アリババと40人の盗賊? いやこれは私がやったんじゃ……この男が偶然オープンセサミって言って開けたんです」
(盗賊たちがなにやら話している)
「ああ、ここだけ彼らの言っていることがわかりましたよ。今里中さんが呪文を口にしましたよね。この財宝の隠し場所を開ける呪文を知っているやつは殺す、と言っています」
「え? いや、その、私は財宝なんかほしいわけじゃなくて」
(盗賊たちが剣で遅いかかってくる)
「あわわわわ。助けてー!」
「バルス」
(洞窟が崩れる)
〈続く〉
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