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【コント(37)】 『遠回り(34)』

(恐竜ネタが続くのは、娘が恐竜好きだから)

 (二人きりで森にいる)

 

「森ですな」

「いつまでこんなことやんなきゃいけないんだかね」

「まぁ冒険とはそういうもの」

「なんなんだか」

「おかしいな、そろそろ敵が登場していていいはずなんだが……」

「うわっ、よく見たら目の前にタルボサウルスがいるじゃないか」

「おや里中さん……間違えた、サトリッパは、恐竜に詳しいんですなぁ」

「そんな事はどうでもいいんですよっ! 戦闘ですよ、戦闘!」

「では今回の戦闘ですが」

「なんですか」

「前回の呪文は芸能人縛りでしたが、今回はスポーツ選手縛りということで」

「ああ、あんたの遊びに命がけでつきあわされるわけだ。いいですよやりますよ。他に選択肢がないんだから。えー、大谷選手!」

(チャララララララという効果音)

「あぁそれを言ってしまいましたか。そうするとですね。ベロキラプトルまで現れてしまったという」

「ど、どうしてですかー! いちばん無難そうな選手を選んだのに」

「ラプトルの意味は?」

「略奪者」

「やはりサトリッパは恐竜マニアでしたな。なら話が早い。ほら、大谷選手は略奪されていたじゃないですか」

「しょうもないネタを。じゃあ、北口選手!」

「やり投げのですか?」

「そうですって。それでどうなんですか。そういう魔法はあるんですか! ラプトルが目の前に迫っているんですよ」

(チャララララララ)

「いやお見事。その呪文により、やりが飛んでいきました」

「おお! やっと思惑通りに」

「敵に刺さりましたな」

「ダメージはどうなんです?」

「おや、攻撃が当たったのに気になると見えますな」

「油断はできませんからね。さっさと倒してなんとしても生き延びて、早く帰りたいんですよ」

「じゃあ倒さなきゃねえ。ラプトルは倒せたようです」

「そういえばさっきからあなたは何もしていないじゃありませんか」

「奈良の鹿はご存知でしょう」

「なんですか、いきなり」

「鹿せんべいを売るおじさんは鹿には狙われないんですよ」

「そうですね。あれはみんな不思議に思っていますけれど。それがなんだっていうんですか」

「私はどういうわけが恐竜には狙われないんですよねー。あれと同じで、狙われるのはサトリッパだけなんです。サトリッパと私がいっしょにいると、恐竜が食べようとするのはサトリッパのほうのようで。おいしいと思われているみたいですよ」

「ふざけるな! 盾だ、盾だ! 神沢を盾にしちゃえ(神沢を前に押し出す)」

「わわわわわわ。ちょっと、やめてくださいよ」

「今さらどうってことはあるか。ゲームをやりたいんだったらあんただけ犠牲になればいいだろ!」

「ちょっとやめなさいよ。里中さん。まじめにやってくださいよ。そもそも、何かあれば二言目には帰りたい帰りたいって。私だって帰ってビデオ見たいんですよ!」

「だったらゲームに巻き込むな! っていうかビデオに関係なく私を巻き込むな! …って言っている暇もなく次はタルボサウルスが襲ってきた。うわー、ウサイン・ボルト!」

(チャララララララ、という効果音とともに突然速く走れるようになる)

「ほお、たしかにそれは逃げ足が速くなる呪文です。ならば私も。『ベンジョンソン!』ちゃらららららららら」

「効果音を自分で言ってるじゃないですか。(後ろをちらりと見て、二度見し、立ち止まる)うわ、神沢さん!」

「(薬を自分の腕に注射しながら)ベン・ジョンソンと言えばこれでしょう(注射を打ち終わった瞬間、もっと速く逃げ出してしまう)」

「うわあああ。えーと、室伏広治!」

(チャララララララ。ハンマーが飛んでいく)

「おお、やりますなあ。じゃあ私は『名探偵コナン』!」

「スポーツ選手でさえないじゃないか!」

(ちゃらららららと言いながら神沢、転ぶ)

「スケボーで移動ですか? この前、私が光GENJIでうまくいかなかったの、忘れたんですか。あ、さっきから口で効果音を言っているということは、さては神沢さん、マジックポイントが切れましたね?」

(そう言いながら神沢の近くまで行くと、神沢がこちらを見て腕時計を構えている。プスッという音がする)

「え?  しまった、これは今まで私がさんざん使用されてきた麻酔針……」

「残念でしたな」

「く、くっそぉぉ……zzz」

 

 〈続く〉

 

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