【ショートショート】 『うんこは踊る』
カルジの放った一打はグリーンの上で踊るように動き、カップインした。本人はミラクルショットだと鼻にかけてたが、当然ながら疑惑の一打である。
「ふむ、真相がわかりました」
自称探偵のハブサが言った。
「カルジさんは、このゴルフ場には生き物が多い」
「な、なんだよ。それがどうしたってんだ」
「ボールを打つ前に、ボールに草食動物のフンをつけましたね?」
「はあ? なんのことやら」
「しかも事前に、カップをフンコロガシの巣にした」
「そうか、そういうことか」
ギャラリーのワカト部長が手を叩いた。
「そうです。カルジさんは、フンコロガシを利用してボールをカップインさせたのです」
「じゃあ、反則?」
「いえ、動物がカップインさせた場合は、無罰で元あった場所にボールをドロップして打ち直すルールです」
カルジくんはため息をつきながら、従った。しかけのない一打は、グリーンから大きくそれた。
部長が意地悪そうに「ナイスシット」と言った。