学習理論備忘録(45) 就労支援事業のアサーション・トレーニングを見学してきた
ある就労支援の事業所でSST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)とアサーション・トレーニングのセミナーをやっている。今日アサーション・トレーニングのほうを見学できたので、その備忘録を書く。セミナーの中では、認知行動療法の話もしていた。
アサーション・トレーニングは学習理論と直接の関係はないが、臨床や司法の現場でも使われる実践的な技法で、SSTと似ている。私はアサーションを学んだのが先であったので、SSTに出会ったときもアサーションの観点から捉えていた。SSTで自己主張がテーマになったときは、よくアサーション・トレーニングを応用したものである。
1 アサーション・トレーニングとは
アサーション・トレーニングは、我が国では自己主張トレーニングと訳された頃があり、「アメリカのような社会では自己主張ができないと不適応になってしまうので、強く主張ができない人のためにトレーニングまでが用意されている」なんて言いかたで紹介されていたこともあった。
たしかにコミュニケーションの訓練ではある。ただ、相手に主張するといってもそれは、攻撃的になるということではない。「アサーション」とは「自分もOK、相手もOK」(OKとは大切にする、仲良くするというくらいの意味)というコミュニケーションのことである。
2 アサーティブな自己表現をするためには
アサーション・トレーニングの目的には、自分自身の理解を深めるというものもある。これは認知行動療法やアンガー・コントロールでも同様に大事にされるものである。適切な自己主張が難しい背景には、その人が自分の本当の気持ちに気づいていない、自分が傷ついていることにさえ気づいていない、ということがよくあるのである。
とくに怒りという気持ちを探索していくと、単に「ムカつく」というだけでなく、その奥深くに気づいていなかった「悲しい」「つらい」といった自分自身の感情が見つかることがある。
今回のセミナーでそれは、すぐ「ムカつく」という言葉を使うのではなく、それを別の言いかたで言うとどうなるか? ということをひとりで、安全な場所で探索することによって上手になっていく、と述べられていた。
3 認知について
認知行動療法では思考・感情・行動の探索をする際、治療者とクライエントが共同研究者となって(共同的実証主義)、まずは主に「書く」ということをする。その作業を通して、クライエントがそれらを意識できるようになるのだ。今日のセミナーではまさにこの認知行動療法そのものの作業も取り込んでいた。
また、「視点を変える」という話もなされていた。悩みは思い込みのせいで起きていることがあり、それを解決するのに視点を変えることが必要になることがある。認知行動療法ではあまりそういう言いかたはしないが、いわゆる「リフレーミング」である。
4 練習
ソーシャル・スキルズ・トレーニングもアサーション・トレーニングも、トレーニングであるからには一にも二にも練習が必要である。
ただ今回はまだ本格的な練習はなかった。3回シリーズの初回であり、自己主張のテーマは3回目になされるようだ。
改めて、やっぱりアサーション・トレーニングっていいな、と思える機会になった。
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