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【コント(34)】『遠回り(31)』
(ランタンを灯し、二人歩いている。洞窟の広く空洞となっているところの周りにある道を降りていき、底にいるストライプドラゴンの死体近くを目指している)
「洞窟は思ったより暗いし、臭いし、坂道が多くて結構体力使うし、暑かったと思ったら寒くなるし……くそっ。ゲームとは大違いじゃないですか。しかもストライプドラゴンを倒したのに、結局まだ洞窟の中だし。神沢は戦士っつってもつかえないし……」
「ちょっと、里中さん。じゃなくてなんでしたっけ」
「里中でもないですけれどね」
「あ、思い出した。サトリッパ。ちょっとサトリッパ。文句ばっかりじゃないですか」
「パラパパッパパーで食べ物出してくださいよ」
「なにを言ってるんですか。あ、でも何かほしいですね。では。パラパパッパパー。ウーロン茶!」
「元から持っていたんでしょ。ったく肝心なときには……(コォォ、という鳴き声が聞こえる)
……次のモンスターが出現しそうですけれど。ストライプドラゴンって、ラスボスじゃなかったんですかね」
「まあそれはさておき、せっかくドラゴンを倒したんですから、宝を手に入れないと。と言っている間にたどり着きましたな。ほう、これがドラゴン。大きいですなあ」
「臭い。生臭い。油でぎとぎとしている」
「で、お約束の宝箱が……ドラゴンのお腹の下にありますな」
「取りなさいよ」
「そう簡単にはぁ」
「その剣で、ドラゴンのお腹を切り刻めばいいでしょう?」
「剣は折れてしまったんですよ」
「もー、ランタンの火が消える前に外に行きましょうよー。宝なんてどうでもいいでしょう」
「何を言っているんだあなたは。この冒険のミッションを忘れたんですか」
「神沢を葬る、かな?」
「なんてことを。そうではなくて、宝をゲットする、でしょうが」
「宝より帰りたいんですよ。もう、こんなのやってられませんよ。なにがパラパパッパパーだ。なにがマギーだ」
(魔法がかかる音がして、横たわっていたドラゴンが起き上がる)
「うわっ生きていた!」
「違いますよ。今スペルを唱えたから、魔法が発動してしまったんですよ」
「大丈夫でしょうね。襲ってこないでしょうね」
「とにかく箱は開けられそうですよ。あ、魔道書がある。サトリッパ。レベル9にレベルアップしたから、使える呪文があるかもしれませんぞ。ああ、これこれ。どっちがいいですか?
A ヨガー 複雑なポーズを取ることができる。
すごいですね、サトリッパ。変身の術のようですよ」
「……もうひとつのほうは」
「B エガー もっと複雑なポーズで暴れまわることができる」
「(即答する)Aでお願いします」
「早いですね。いいんですか? Bだったらこの黒いタイツを履けるみたいですよ(箱から取り出す)」
「だからいやなんです」
「シーッ……」
「なんですか」
「シッ」
(コォォ、という鳴き声)
「あれはグリフォンですな」
「どうしてすぐにわかるんでしょうね」
「宙を飛んでいるものは私には倒せませんので、サトリッパにお願いします」
「私が使える魔法でどうしろっていうんですか。グリフォンってのは鳥みたいなもんでしたっけ? 今度は縦縞じゃないんでしょう?」
「なんか見つかっちゃったみたいなんで、なんかやっちゃってくださいよ(上を見つつ、後ろに回る)」
「うわ、でかい。襲ってくる。ええっとヨガー(直前に巨大なグリフォンが飛んでくる)ひいい(火を放つ。グリフォンが悲鳴をあげて去る)」
「そうです。ヨガーにはいくつか応用技があってですな。ヨガ、火いぃは、ヨガの力で炎を放ちます」
「それは某ゲームの技ですね。版権的な問題がありますよ」
「ええ? ヨガで火を出すだけですよ?」
「本来は火を放たないでしょう。ヨガっていうのは」
「じゃあ、腕や足を長くして攻撃するとか」
「それも例の格闘ゲームです」
「瞬間移動とか」
「それも例の格闘ゲームの技でしょう」
「って言っている間にまた攻撃してきたぁ!」
「エスパー!」
「あっ! サトリッパ。宝箱の中に体を入れちゃった。ちょっとおお。私も助けてくださいよお」
(許さぬ、という声が空から響く)
「うわわわっ、ちょっとサトリッパ。いや、サトシム。助けなさいって(宝箱を開ける)あれ? いない。さては、ヨガ瞬間移動でいなくなったなあ!」
(グリフォンにさらわれる神沢)
〈続く〉