【ショートショート】　「月生まれの地球人」

「ということで、２０歳を迎え日本人となられた、ユミノさんでーす！」

　私は自分が映ったテレビを見た。

　私は月で生まれた初の人類だ。だから国籍が決まっていなかった。アニメが好きだったので、血筋に関係なく日本国籍を選んだ。宇宙で生まれた人は、２０歳から日本人になること選んでも良い、っていう日本の宇宙法に従って日本人になることができたのだ。

「日本政府のものでーす。税金おねがいしまーす」

「ダマされちゃだめよ。アメリカ以外、月での収入に税金をかける国はないから」

「年金機構でーす。年金お願いしまーす」

「あれも追い返して。年金制度なんて、とっくに破綻したから」

「富士山を愛する会でーす。お金を・・・」

「いいから、帰れ！　ダメよ、ユミノちゃん。払っちゃダメよ」

　ルームシェアをしているコムちゃんが日本人なので、いろいろ教えてくれる。そうだ。月にいるのに日本にお金を払う必要はないよね。ほんと、だまされるところだった。

「ねえ、コムちゃん。またお金を払え、って来ている人がいるんだけれど、追い返していいんだよね」

「当たり前でしょ。あ、待った。念のために聞いとく。何のお金を払えって？」

「テレビのお金だって。NH・・」

「あ、それだけはホンモノだわ」