サンタクロースの正体は、宇宙人だという噂
(見出しの写真は、M字開脚をするサンタ)
こちらの企画に参加しています。
大人がサンタクロースを信じないという時代はもう過ぎ去ったらしい。存在することは確実に信じられているのだ。だが、正しくその姿を知られていない。サンタクロースの正体は、宇宙人だと思われてしまっている。
あ、私がそのサンタクロースであるのだが。
私の格好とトナカイのイメージまではたしかに正しいのだが、現実的にはかなりズレるところが多い。しかもそのズレの部分が、普通の人間からしてみれば常識はずれで、宇宙人だと噂するというのも分からないでもないのだが…
「そういうわけでして、こんな悩みは、まあ悩みのうちには入らないのでしょうが」
「いえ結構ですよ。お続けください」
「はあ」
私はカウチに寝かされながら、白衣を着て後ろでうろつく医師に話を続けた。それにしても寝ながら相談するというのはやりづらいものだ。
「子供達に夢を与える、というのが私の役割なんでしょうが、それが宇宙人ということになると、少々おどろおどろしくありませんかね」
医者はここで考え込んだ。
「サンタさんの悩みは結構現実的ですね」
「ええ。気の持ちようで済む話ではないかと」
ふうむ、と医師は黙り込んだ。
「いわばあなたは、人とかけ離れているわけですな」
「そういうことに…なりますかね」
「ええ、なりますなります。なりすぎです。なのに『ムー』にも特集されたことがない、と」
「え?ムー?」
「あの学研のオカルト雑誌『ムー』ですよ。知りませんか。キャッチコピーは『世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン』。あの鳩山由紀夫先生も愛読者だという『ムー』です」
「先生、詳しすぎませんか」
「私はムー特派記者でもある、バリバリのムー民ですからな」
「なんですか、それは。いや、そんなことはどうでもいいです。私って、ムーで扱われるような存在なんですか?雪男とかユリ・ゲラーとかに並ぶっていうことですか?」
「本来ならばそうです。ムーに載らなくてけしからん、と思っているでしょう」
「いや、まったく」
「そもそも前から疑問でしたが、今の時代、大きな煙突もないわけで、それでも室内に入れるのはどういうわけです」
「あれは、体を極限に薄く小さくして隙間から入り込めるからです」
「一晩に何世帯プレゼントを配るんです?」
「親が子にプレゼントを与える世帯を除きますから、6億世帯くらいですね」
「尋常な速度ではありませんな」
「たしかに人の技ではないですね。音速旅客機よりは速いですし、動きも細々としているから、あれ、優雅ではないんですよ。実は」
「衝撃波が生じる問題はどうするんです?」
「あれは、私が乗ると解決できちゃうんです」
「ほら。あと、プレゼントはどうしているんです?費用は?」
「プレステやニンテンドーswitchを作るのも私の仕事でして」
「それで、商標とか、コピー品の問題は?」
「完全に同じものを作れますし、そこはうまいこと、企業利益を損なわぬような辻褄合わせまでできるんですよ」
「はい、じゃあやはり超常現象決定」
「いや、ちょっと待ってくださいよ。私はソリに乗っているんですよ?そんな宇宙人がいますか!そもそも地球生まれです」
「ああ、そうですね。たしかに。分類が間違っていました」
「でしょう?」
「超常現象であることには変わりありませんな。となると…」
「じゃあ、超能力者…いや、実は人間ではないので。私、死にませんからね。でも、もっとファンタジー寄りの、なんか…」
「妖怪です」
「へ?」
「だから妖怪ですって」
「どうしてですか!」
「そうでしょう。地球で生まれたから宇宙人ではない。人でもないから超能力者ではない。生きているから幽霊でもない。信仰の対象でもないから神や仏でもない。そうなりますと、特殊な能力を持った人ではない人格を持った存在ということになりますから、サンタさん、あなたは妖怪です。12月24日の晩になると、人家に忍び寄る、僕を引き連れた赤い男…」
「そんなおどろおどろしい口調で言わないでくださいよ!」
「柳田國男先生も、しっかり分類してくれないとなあ」
「いやあー、いやです!妖怪だけはいやです」
「いやって言われてもねえ。これは分類学上の帰結ですから、あたくしにはどうしようも」
「いえ、どうにかします。あ、宇宙人です。私、本当は宇宙人です。サンタ星から着ました。あのソリはUFOなんですぅぅぅー!!」
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