【ショートショート】 『残り物には懺悔がある』
度重なる戦、飢饉、疫病に見舞われ、国王は調査団を作り、パンドラの壺を探すことにした。
パンドラの匣とは言うが、本来は壺だ。そのありかを示す文献が見つかったのだ。
「ただ希望とは不老不死の薬のことかもしれん。ならば余が最初に手にせねばならん。よって余も調査団に加わる」
王たちは城を後にした。
やがて山奥の洞窟に壺を見つけた。なんとその後の行方が知れずにいたパンドラまでもがそこにいた。
「壺を見せる前に、災厄を入れていた壺に希望が入っていた理由がわかりますか?」
彼女によると、苦しみや罪がない世界に希望は必要ないからだという。
「希望はもう入っていません。世にあります。希望があるからあなたがたもここまで来たのでしょう?」
もっともだ。王はうなだれた。
「では中にはもうなにもないのか」
「いえ、罪なき世に必要なかったものがもうひとつ残っています」
懺悔であった。
王は自分が戦をしかけたのがすべての原因であることを告解した。