【コント(24)】『遠回り(21)』
(二人、同じ部屋にいる)
「どうして僕まで捕まらなきゃなんないんだよ。この、がんざわが。」
「ん? 私のことですかな?」
「あんたは俺にとってガンなんだよ。だからガン沢でいいんだよ」
「だいぶ口が悪くなりましたな。よくありませんよ。神沢さん、と呼んでください。いや、神沢様だな。とにかく、濁点はいりませんよ」
「じゃあ沢の濁点も取ってカンサワだ。癇に障るからカンサワ」
「うまいこといいましたねえ。でも里中さあん。いいんですかあ? 今の時代、あだ名を勝手につけるのはいじめ・パワハラに認定されるんですよ?」
「私はあなたに勝手に里中と呼ばれていますよ。さらに言うと、人に勝手に麻酔を打ったり、勝手に拉致したり、勝手に小芝居をするのは犯罪ですよ」
「なに! 出るとこ出てやろうじゃないか。こっちは証言してくれる仲間ならいっぱいいるんだぞ」
「あなたが変なことを言って、変なことをするから、今こんなところにいるんじゃないですか」
「ああ。王である余の城に」
「病院でしょ!」
「へ……Hey、アイアムすごーい人。ヒアイズおしーろ。くーつろーいでくれー」
「ある意味すごいと言う事は認めますけどね。なに英語でごまかしているんだが。英語になってないし。くつろいでいる場合じゃありませんよ」
「オー、リアリー?」
「神沢さん、少し楽しんでるでしょう」
「オー・ヘンリー?」
「あなたはたしかにこういうところに来たほうがいいかもしれませんけどね。私は普通の人なんですよ」
「Hey, Siri?」
「あーここを出たい。今すぐに出たい」
「すごいですな。それはすごい執着ですな」
(周囲の患者が、「ドクター」と口々に言い始める)
「あ、お医者さんが来るようですよ」
「Hey, アイアムドクター」
「あなたの治療はもうこりごりです。来るのはあなたと違って本物ですからね」
「倫太郎とか」
「コトーも来ないでしょうね」
「なにしに来るんでしょう」
「治療かなんかするかもしれませんよ」
「なんですとー! 絶体絶命。そんな困った時は(いつのまにか大きなハンマーを取り出して)地面を掘る!」
「あー! な、何やってんだ? わかる人にしかわからない即興劇関連のネタだな」
「ヘイケガニ!」
「って言いながら、床を壊す手は止めないんですね。うわっ! 床から白骨が出てきた」
「ヘイケイかね?」
「いじりにくい言葉でふざけるのはやめましょうね。うわ、さらに小判が出てきた」
「へい……」
「ネタが尽きましたね」
「ヘイキカノジョ!(ハンマーを振り回して襲いかかる)」
「やめなさいよ(なんとか神沢につかみかかり、ハンマーを奪う。反撃しようとする。そこに回診の医者が登場)」
「……あ、先生。いやこれは私がやったんじゃ……この患者さんがやったんです」
(医者が神沢を見る)
「アイキャントスピークジャパニーズ」
「外国人のふりなんか通用しませんよ。あなた日本人だってバレているでしょ。ますますおかしいと思われるだけですよ。ま、そのほうがいいか。……ってうわあ、看護師さん達が次々とやってきた」
(スタッフが次々と集まってくる)
「あ、捕まえられた。うわっ、俺が? このシーンってもしかしてカッコーの巣?」
(皆英語を喋っている)
「ヘールプミー! ヒーイズバイオレント」
(皆その言葉を信じて、襲いかかってくる)
〈続く〉