見出し画像

【ショートショート】 『アメリカ製保健室』(どんでん返しのどんでん返し)

 20XX年、日本はTPU、環太平洋ユニオンに加盟した。ビザなし渡航可能、通貨はパシフィで統一。他にも、小学校の保健室は米国式にナース在籍をしようという気運になった。

 インスリン注射も呼吸器の管理もできる看護師が学校に必要だ、というのがTPU加盟国であるアメリカの建前であった。無論裏はある。ビザなし就労も自由化されているので、供給過剰となった米国のナースを日本に送り込みたいという大人の事情が見え隠れしていた。

 だがさらに裏があって…

「協会長。学校看護師を置く法案は通りましたが、保健室には養護教諭も残ることになりました。保健体育を強化することで生き残りをはかったようです」
「なにい!」
 看護協会長は、地団駄を踏んだ。
「これじゃあ結局『看護師さん』じゃないかっ」
 政治家を動かし、TPU加盟まで利用して学校看護師を導入させたのに。看護師が子供たちに「先生」と呼んでもらえる日はまだ来ないようであった。


#毎週ショートショートnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?