宇宙への手紙
そういや昔は手紙をよく書いた。今は書かない。
メールでちょいと済ませてしまう。いや、そのメールもSNSのショートメッセージやテレビ電話で済ませてしまう。人との距離が近くなった、とまでは言わないが、連絡が取りやすくなったことは事実である。文字であれ映像であれ、光の速さで情報が伝わる。
手紙には時差があった。手紙ゆえの時間の流れはよい味を出し、奥ゆかしかった。
では伝達を遅らせれば面白いだろうか? いやいや、単に遅らせるのは面倒なことにしかなるまい。「本当は速く送る手段はあるんだよなあ」と思ってしまって、それを使わないのがストレスになる。
ならば不便な連絡方法に頼らざるを得ない状況や相手を選べば「仕方ない」と思って楽しめるか? うーん、どうすればいいんだろう? 囚人となって紙飛行機で外に手紙を出す? 孤島に取り残されボトルに手紙を入れて海に放る? スパイとなって伝書鳩を送る?
・・・だめだだめだ。監獄や孤島や山って、己のほうを遠くに持って行ってどうする。スパイも疲れそうだし、そもそも鳩を使うスパイはいない。便利を不便にしてどうするというツッコミはここでも変わらなんのである。
そこでと思う。メッセージを送るのがめちゃめちゃ大変な場所ってまだあるんじゃないか? そうだ、宇宙だ! 宇宙人と文通しよう!
パイオニア10号には、宇宙人に向けた地球からの手紙が乗っているという。なんとロマンチックだろう。これを発見した宇宙人は、きっと狂喜乱舞するに違いない。
でも待てよ? このメッセージは、宇宙人は紳士的だという前提に立っている。好奇心に満ちていて、平和的だという前提に。だがSFの世界では『暗黒森林説』が今や定番である。「宇宙人に居場所なんか知らせようものなら、たちまちに攻撃されるに決まっているではないか」と考えねばならんのである。
あかん。あかんではないか。
私としては宇宙人がいるならばそれを知りたくてならないのである。だが知ろうとすると危険が迫る。これをどう解決したらよいものであろう?
ふっふっふ。私はひらめきを得た。答えはJKにあり。
そう。出会い系でおっさんをひっかけて待ち合わせをし、ビルの2階にあるサイゼリアから眺め見てバカにするというアレである。
アルファケンタウリあたりはどうだろう。ここには地球型惑星が存在する。そこで「私たちはアルファケンタウリであなたがたを待ってーます、ウフ」みたいなメッセージを宇宙に向けて発信するのである。
数年以内にアルファケンタウリが消されるようなことがあったら、宇宙人にメッセージを送るのはやめたほうがよろしい。
どうだ? 私って天才じゃなかろうか。
え? もしアルファケンタウリが破壊されなかったら?
「あっはー、ごめんごめん。本当は太陽系で待っていたのー」
とか言ってだな…
いや、これではたとえ宇宙人がもともと紳士的であったとしても、怒らせてしまう可能性があるではないか。「あそこの星系の住人って、ちょっとふざけているよ」なんて噂が広まろうものならば、銀河系での立場はないではないか。
どうしたらいいんだ。正解が判らん。でも死ぬまでには宇宙人に会いたい。だれか文通相手のうまい見つけかたを考えてくれ。