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09.読者を離脱させない文章を作る実務的なテクニック
前回、「読者を離脱させないためには、まずは文の構造をしっかり作ろう。構造がしっかりしている文は、各々のカタマリの冒頭に読者の思考を導く文が入っているよ」という話しをしました。で、ダイヤモンド・オンラインさんの記事「そりゃキレるわ…北海道猟友会が異例の『ヒグマ駆除要請拒否』検討、行政の迷走するクマ対策に喝!」(2024.11.15 11:30)を使って、実例を見ていこうという回でした。本当は1回で終わりにするつもりが、終わらなかったのでその続きをアップしたいと思います。
「読者の思考を導く文」は何をしているのか
読者の思考を導く文は、次の展開を予測させ、予測通りに論を展開させることで、読者を離脱させないで最後まで導く役割を果たしています。
おさらいのために、教材にした記事で登場する読者の思考を導く文と、その時の読者の気持ち(の想像)の表を再掲します。
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上記で抜き出した、読者の思考を導く文をつなげて読んでみましょう。
それだけで記事の最初から最後まで、何が書いてあるのか論旨が理解できますね。
前回も述べたように後半になると若干のガタツキは感じるものの、全体としては論旨明快な、わかりやすい文章です。
複雑な現実の問題を、このようにわかりやすく読ませてくれるのは、さすがだなあと思います。
文章を磨く時に、読者の思考を導く文をどのように使うのか
さて、読者の思考を導く文は、うまい著者であれば無意識のうちに入れています。構成に沿って文章を書いていくなかで、自然に書いている場合も多いでしょう。
自分の文章を磨く、あるいは他人が書いた文章を磨く=編集する際には、この点にもっと意識を向ける必要があります。
編集時には、意図して読者を導く文を入れていきましょう。
こういう意識が必要なのは、日本語がうまい著者ばかりではないからです。
また日本語がうまい著者であっても、最初はすっきりわかりやすく整理されていたのに、途中からガタツキが出てくるといったこともあります。まあ、例に挙げた記事も、途中、若干ガタついていますからね。そういうものです!
したがって編集時には、①構成に従って読者の思考を導く文が入っているか、②読者の思考を導く文で、最初から最後までよどみなく論旨を通すことができるのかをチェックしてみてください。
うまくつながらないところがあれば、そこが問題点であり、読者がわかりにくくなるポイント=離脱可能性の高いポイントです。問題のある場所を明らかにしたら、原因と解決策を考え、文章のガタツキを整えていきます。
なぜマインドマップや構成案だけでは足りないのか
でき上がった文を編集するのではなく、自分が文を書いたり構成案を考える際には、構成と合わせて読者の思考を導く文を一緒に考えておくのがおすすめです。
逆にいえば、読者の思考を導く文は、構成がうまくできているかどうかを判断するフィルターになります。
つまり、読者の思考を導く文で最初から最後まで文を通せるならば、それは論旨がすっきり通った構成になっていると判断できます。
少なくともこの段階で論旨が通っていない文章は、書きだしたところで最後まで論旨が通ることはありません。まあ書きながら考えてもいいので、それはそれでいいんですけどね。ただ書き直したり行ったり来たりして、時間がすごいかかると思いますが。
文の構成の作り方はさまざまです。構成案を作る人もいるでしょうし、マインドマップを作る人もいるでしょう。
ただそれだけでは、意外と文の展開がうまく作れない、書く時に苦労する、意外とつながらないといったことがあります。
それは、項目ごと、カタマリ単体では言いたいことが決まっていても、カタマリとカタマリのつながりが明確になっていないからです。
これを明らかにするのが、読者の思考を導く文です。
読者の思考を導く文で論旨を考えれば、タマリとカタマリをスムーズにつなげることができるようになります。
まとめと次回の(一応の)予告
読者の思考を導く文が適切に入っている文章は、最後までスルッと読めます。読者を離脱させずに最後まで読んでもらうためには、そもそもスルッと読めることが大前提です。
巷には、「興味を引く見出し」や「先を読ませたくなるテクニック」などがたくさん紹介されています。
これらのテクニックは、最後までストレスなく読み通せる文章ができて初めて生きるものです。
まずは文の構造をしっかり作ってそれぞれに読者の意識を導く文を入れましょう。そのうえで、より魅力的な文章にするために、これらのテクニックを使ってください。
ただ、まあ、あれですね、今回説明したことを意識するだけでも、文章はずっと読みやすくなりますよ。
意識して、ご自分の文章を見直してみてくださいね。
次回は、読者の思考を導く文の使い方について、もう少し細かい話をしていきたいと思います。それから、途中で述べた教材にした記事の接続詞が不適切な個所(と私が思うところ)について、その理由や改善案とともに説明します。
今回も、長い文章を最後まで読んでくださってありがとうございました。また次回、よろしくお願いします。