不思議な動物園ツアー　#毎週ショートショートnote

程々の客を従えた「不思議な動物園ツアー」のツアコンが「到着しました」と元気な声を上げると、どこからともなく「あー」と低い声が応じた。

「ここなんですが・・・」
ツアコンが隣にいた私にとめどなく言い訳じみた言葉を垂れ流す。

そして「集合はバスに一時間後です。次はお待ちかねのお食事です」と大きな声を出した。

まずは観覧車で園内を俯瞰してみる。
「見ろよ。確かに動物園だよ」
「動物なんて一匹もいないじゃない」連れがここに来て初めて口を開いた。だいたい私が参加しようと言った訳じゃない。
「とにかくみんな動いてる。どこもかしこも」
「そんなシャレみたいのはいらないの」
「そう怒んなって。ここの園長、なるべく動物園って言わないでほしいって言ってるそうだよ」
「ふん、代替わりでもしたんじゃない？偏屈な先代から。きっと動物園を持つのが夢だったのよ」

一時間後、すっかり元気を取り戻したツアコンによって、その予想が見事に当たっていたことが証明された。
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