見出し画像

Even if ③  sanngo trial


まちがいなか♪


あれはもう半年ほど前のこと。まだ春の風がようやく吹き始めたころだった。
近江国は蓬莱山の麓に、明月庵という庵がある。
そこを通りかかった時、中から怪人めいたお爺さんが出てきた。
「恋の悩みですか?」いきなり爺さんは言った。
私は特に恋の悩みなどない。恋愛はしてはいないし、意中の女性も特にない。
いや待て。あると言えばなくはない。
「はい」私はそれだけの間を置いて、小さな声で答えた。
「まぁよい。肩の力を抜くことじゃ」爺さんは庵の外に立てかけてあった竹箒をくるりと回す。それはおそらく落ち葉を掃き集めるためのもの。どうやら一年中そこに置いているらしい。
「やっと春がやってきましたね」
「そういう順番じゃからな」
「ああ、まぁ」
「even if、失恋の歌を歌うと恋は叶うじゃろう」
「どうしてそれを!」
「むふふふ」爺さんは不敵に笑う。「失恋、いま巷で流行っておるであろう」
「流行ってるってわけじゃ・・・」
あの爺さん、今から思えば・・・ってその時もそう思ったんだけど、仙人に違いない。
というわけで、私は今回のeven ifトライアルにこの曲を選択しました。

しかし、考えてもみたまえ。失恋の歌を歌うと恋が叶うってあまりにも短絡的過ぎはしないか?猫好きはみんないい人だ!みたいな。唾を吐くのはみんな悪人!みたいな。
爺さんはEven ifと言った。たしかにそう言った。てっきり私に課せられた課題曲のことだと思ったが、早合点だったのかもしれない。
「Even if、失恋の歌を歌うと恋は叶うじゃろう」
訳してみれば、たとえ失恋の歌を歌っても恋は叶うじゃろう
なんじゃそれ!
みなさんもエセ仙人には気を付けましょう!
そういえば庵の中から、何やら肉を煮る匂いがしていたような、しないような・・・


ぶぶづけでもどうどす?



いいなと思ったら応援しよう!