むかしむかし、あるところに
おばあさんは川で選択を迫られた。当然のように山での柴刈りを選んだ。洗濯には飽き飽きしていたのだ。
翌朝、おばあさんは空の背負子を背負って意気揚々と山に出かけた。しかし行けども行けども、柴なんぞどこにも落ちていない。
お昼になり、少し開けたところでおにぎりの包みを開いた。と、すぐに猿がやってきた。
「言っとくけどね。これは鬼ヶ島に一緒に行ってくれる猿にだけ・・・」言い終らぬうちに、猿は手からおにぎりを攫っていった。
おばあさんはその日、貧弱な柴を九本しか採ることができず、山幸彦の気持ちが痛いほど理解できた。
なすべきことは桃を待つことではないはず。もうじき我が身の終焉を迎えようという今でも、それが何なのかわからない。