贋札 毎週ショートショートnote
新しい意匠のお札が発行されると聞き、贋次郎の胸は高鳴った。
早速サンプルを手に入れた。もちろん渋沼氏のものだ。3Dホログラムが採用され、贋札作りはより難しくなっていた。
贋次郎の血は滾った。
矢も楯もたまらず、すぐに彫刻に取りかかり、昼夜の別なく銅板に向かい、素晴らしい逸品が完成した。
昔の伝を辿って、紙面に凹凸を付ける紙漉き屋を飛騨から、錦を貼り付ける織り屋を金沢から呼び寄せた。
しかしホログラムには全く当てがない。
とりあえずホログラムなしで仕上げてみることにした。
楮と三俣で立体的に漉かれた和紙に、平板印刷で丁寧に印刷したピン札はそれはそれは見事な出来栄えだ。
それから数ヶ月を費やしてホログラムを作ってもいいという大学生を見つけた。
出来上がったピン札はちょっとホログラムがカクカク動くという新説なピン札という嫌いはあるが、まぁいい。これは手慰みだ。
計算してみるとピン札一枚になんと十万円かかった。まぁいい。ただの手慰みだ。
410字
たらはかに 様
今週の裏お題、よろしくお願いいたします。
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