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#みんはいアドベントカレンダー 19日ブッシュ・ド・ノエル
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いただきやす
12月19日 テーマ ブッシュドノエル
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ブッシュ・ド・ノエル(クリスマスの薪) 【972字】
ミイは暗い窓の外を眺めながら、パパの帰りを待っていました。
でももう短い針が8を過ぎたというのに、まだ帰って来ません。
ミイはまた窓を見ました。
雪が降り出しました。
「パパ、寒いんじゃないかな」
部屋の中でさえ手がかじかむほど寒いのです。暖炉には薪が数本あるばかり。でも火をつけてはいけないと言われていました。
窓の外はますます雪の勢いが強くなってきます。
短い針が9になった時、玄関の戸がガタガタと鳴りました。
「パパ!」
ミイはパパに抱きつきました。
「どうしてこんなに寒いんだ」
パパは古い手紙に火を付けて、暖炉の中に入れました。
「明日はクリスマスだから寒いのよ」
「そんなのはうちにはないんだ。クリスマスなんてのは」
「ミイ、なんにもいらないから」
パパの頭に積もった白い雪がゆっくりと溶けていきます。
「あったかくなったよ」
「ああ。おまえ、なにもいらないのか。クリスマスなのに」
「うん、なにもいらない」
「ごめんな。ケーキ買ってやるって言ったのに、全部お酒に化けちまった」
「いいよ、パパ。パパがうれしいのが一番いいの」
ミイは暖炉の前に座ったパパの横にしゃがんで、暖炉の火を見つめました。
薪がパチンと音を立てて火花を散らしました。
「パパ、暖炉キレイだね」
「ああ、キレイだな」
パパはミイの肩を抱いた時、すぐにその異変に気がつきました。
ミイが小さな薪を一本、手に取ると、それは雪のように真っ白なクリームで覆われたケーキでした。
すぐにテーブルの上に置いて、ナイフで半分に切り分けました。とっても小さい薪だったので、一人分にも満たないけれど、ちゃんとしたケーキです。
ミイがそれを口に入れると、スルリと溶けてなくなりました。
「おいしいよ、パパ」
「パパの分もお食べ」
「パパもいっしょに食べてほしいの」
パパはフォークで端っこの方を切って口に入れました。
「こいつぁとびっきりおいしいな」
「うん、おいしいね」
「あとはミイ、おまえが食べろ。パパはもう外で酒を飲んじまったから」
「ありがとう、パパ」
ミイは静かに微笑んでいます。さっきまで体の芯まで冷えていたというのに、暖炉の炎のように熱くなったミイの体は、翌日のクリスマスに目を覚ますことはありませんでした。
雪の降りしきる空の上、ミイはママに手を引かれ、神様のみもとへ行きました。
それからもミイは、いつまでもパパのしあわせを祈っています。
了
イエスは言われた。子どもたちを私のところに来させなさい。邪魔をしてはならない。天の国はこのような者たちのものである。
マルコ 10:14
ルカ 18:16
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あどけなき笑顔をつくし幼子の
無垢なるこころ芯まで燃ゆる
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